2泊3日、濃厚な時間を過ごさせてくれたこの地ともお別れのとき。入線してきた越後湯沢行きの普通列車に乗り込みます。
今日は一日ぐずつく予報。このあと少し歩く予定があるため雨が降らないかと心配しつつ、低い雲の垂れ込める黒い山並みを目で追います。
曇天の田園に少しばかりの秋の寂しさを感じる車窓を眺め揺られること40分ちょっと、越後湯沢駅に到着。次のバスの時間までまだまだ余裕があるので、ここでゆっくりとお昼を食べることに。
新潟へと来たら、やっぱり食べたいへぎそば。どのお店にしようかと迷いましたが、今回はまだ入ったことのない『菊新』にお邪魔することに。駅前の道を渡ったらすぐという立地の良さも嬉しいところ。
昼から新潟といえばのいけない米ジュースを味わいつつ待つことしばし、注文した石坂舞茸天ぷらそばが到着。艶々としたおそばに肉厚の舞茸天は、もう食べる前からおいしそう。
まずはおそばひと口ずるっと。つなぎにふのりを使っているだけあり、独特のコシとつるりとした口触りがとっても旨い。新潟のそば、本当に唯一無二。やっぱりおそばにして大正解だったと早くもにやけてしまいます。
続いて、大ぶりの石坂舞茸の天ぷらを。からっと揚げられた衣の中には、程よい食感の分厚い舞茸。噛めば香りと旨味を含んだ肉汁がぶわりと広がり、思わず地酒が進んでしまう。
さくっと天ぷら、つるっとおそば。その往復に地酒を挟み、あっという間に完食。大満足でお店を後にします。
ここに来て、雨がぽつりぽつり。一応傘は持ってはいるものの、次の目的地へ行こうか行くまいか。そう悩みつつ雨雲レーダーを見てみると、このあとしばらくは雨は降らななそう。文明の利器のありがたさを感じつつ、湯沢駅前より『南越後観光バス』の森宮野原駅行きに乗車します。
バスは市街地を抜け、山肌にへばりつくようにして続く国道へと挑み始めます。高鳴るエンジン音が車内に響く中、車窓には蛇の如く延々と連なるスノーシェッド。雪深い地において、通年の交通を確保することの大変さを感じる光景。
まあよくもこんなところに道を通したものだ。そう感心してしまうような山道を進むこと25分、清津峡入口バス停で下車。ここからは歩きで次なる目的地を目指します。
さらさらと流れる清津川を渡り集落の中をのんびり進んでゆくと、まるで昔話から飛び出してきたかのような古い民家が。
そのまま進んでゆくうちに人家も途切れ、空模様も相まって少しばかりの心細さを感じてしまう。ときおり風に吹かれ揺れるすすきが、そんな物寂しさを一層誘うよう。
そう思ったのも束の間、眼下に流れる清津川のあまりにも清らかな姿に目を奪われます。この天気でこれなんだから、晴れていたらもっとすごい景色が見られそう。
川に最接近した部分で見下ろせば、川底の石ひとつひとつまで見えるような清らかな流れ。古の人々はこの姿を見て、この川に名前を授けたのでしょう。
バス停から清津川に沿ってのびる道を歩くこと25分、ついにトンネル入口へと到着。清らかさの中にも鮮やかな緑を抱くその色は、見る者の心の底まですっと沁み入るよう。
これから向かうは、このV字に刻まれた渓谷の真っただ中。トンネルと渓谷美の織り成す幽玄の世界への入口を目前に、これから出逢う光景への期待は高まるのでした。
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