のんびり過ごした大沢温泉とも別れの時間。4泊寝泊まりしたこの部屋ともお別れ。2回目の湯治ともなると、その寂しさもひとしお。
旅先なのに馴染みを感じる。この独特な雰囲気は湯治をした者だけが味わう特別な感覚。またここへ帰ってこなければ。旅館であるのに里心がついてしまう。そんな魅力が、ここにはあります。
紅葉に守られ佇む大沢温泉自炊部。江戸時代から続くその渋い佇まいを今一度目に焼き付け、再訪を誓いこの地を去ります。
意を決してバス停へ続く坂を登るも、やはり後ろ髪を引かれ振り向いてしまいます。
そこには色づいた岩手の穏やかな山と、小さくなった大沢温泉。山里の湯、その言葉を体現したかのような姿に別れを告げ、再び歩き始めます。
この日は出発が早かったため、送迎バスではなく『岩手県交通』の路線バスで花巻駅へ。このバスに乗ってしまえば、この南花巻温泉峡ともお別れ。
6泊7日を過ごした彼の地への感謝を乗せてバスは走ります。最後の朝も、朝霧に煙る車窓。8泊9日という長期旅の最終日。北上で眺めたときとは違う感情が胸を締め付けます。
バスは次第に市街地へと入り、朝霧も姿を消したところで駅に到着。
花巻駅。何度目の訪問、そして何度目の別れになるのでしょうか。きっとまたここへやってくるに違いない。確信ともいえる願いを胸に、見慣れた駅舎を眺めます。
この旅最後の朝食は、花巻駅の駅そばで食べるかき揚げ月見そば。しょう油をしっかり感じるつゆを吸ったボリュームのあるかき揚げが旨く、一気に平らげました。
北上から花巻へ。この狭いエリアで過ごした9日間ももうすぐ終わり。帰京までの間、もう少しだけ岩手を愉しみ、東京へ「行く」ことにします。
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