濃厚チカラ湯、ほくほく泉。~秋のはじまり松之山 3日目 ④~ | 旅は未知連れ酔わな酒

濃厚チカラ湯、ほくほく泉。~秋のはじまり松之山 3日目 ④~

10月上旬初秋の清津峡渓谷南越後観光バス越後湯沢駅行き臨時バス 旅グルメ

自然の造り上げた造形美に圧倒され、その迫力の余韻に浸りつつ清津峡を後にすることに。行きは路線バスの停留場から歩いてきましたが、帰りは駐車場の脇から発車する夏・秋限定の臨時直通バスに乗車します。

10月上旬初秋の越後湯沢静かな温泉街
清津峡渓谷からノンストップで走ること30分、再び越後湯沢駅に到着。居酒屋さんが開くまではもう少し。ここからのんびりと温泉街を歩き、ひと風呂浴びに行くことに。

10月上旬初秋の越後湯沢湯元共同浴場山の湯
静かな温泉街を抜けスキー場を横目にさらに歩くこと約20分、最後の急坂と階段にハアハア言いつつ『山の湯』へと到着。上がった息を整え中へと入ります。

玄関を入るとすぐ右手に券売機があり、そこで入湯券を購入。外観と同じく中も木のぬくもりを感じる造りで、小さいながらもベンチや小上がりといった湯上りに小休止できるスペースも。

さっそく浴場へと向かうと、地元の方々で大賑わい。浴槽の周りにはそのサイズと比べ広めのスペースがあり、浸かっては休み、浸かっては休みといった感じで皆さんお湯を楽しんでいる模様。

見た感じ、観光客は僕ひとり。地元の共同浴場にお邪魔するというちょっとした緊張感を久しぶりに味わいつつ、掛け湯をしていざ入湯。

小さめの浴槽にドバドバと掛け流されるのは、無色透明の単純硫黄温泉。熱めながらさらりと肌あたりが柔らかく、クセのない優しい浴感。ですがよく温まるお湯なので、長湯は禁物。地元の方に倣い、入っては休みを何度か繰り返します。

10月上旬初秋の越後湯沢山の湯の湯上りに望む夕暮れの情景
ほんのりと湯の香漂う優しい湯に芯から温まり、身も心もほくほくしたところで外へと出ます。そこに広がるのは、色を失い始めた夕刻の世界。上越国境の険しい山並みはその稜線をより一層際立たせ、夜へと沈みゆく町を見守るかのようにぼんやりと浮かぶ月。

10月上旬初秋の越後湯沢夕暮れ時のシーズン前のスキー場
秋の黄昏時、涼しい風を感じつつ歩く湯上りの道。もうこの旅も、終わりだな。賑わうシーズンを前に枯れゆくゲレンデをぼんやり眺め、そんな旅の終わりの感傷に身を委ねてみる。

10月上旬初秋の越後湯沢呑みすぎ謙信
それでもまだまだ、旅は終わらない。最後の越後の味と酒を愉しむべく、温泉街に位置する『呑みすぎ謙信』へとお邪魔します。

10月上旬初秋の越後湯沢吞みすぎ謙信お通しの肉味噌ときゅうり
生ビールで湯上りの渇きを癒していると、お通しの肉味噌きゅうりが運ばれてきます。もうこの肉味噌自体が、酒の肴。お肉の旨味を抱き込んだ味噌の深いコクに、すぐさま地酒に切り替えます。

10月上旬初秋の越後湯沢吞みすぎ謙信越後味噌を使ったすじ子みそ漬け
まず最初に頼んだのは、すじ子のみそ漬け。越後味噌に漬けた筋子は、塩やしょう油漬けとはまた違った凝縮感。よりねっとり、そしてより濃厚な印象に、これだけで二、三合はいけてしまう。お酒もいいですが、白いご飯と合わせたら食欲が爆発してしまう危険な旨さ。

10月上旬初秋の越後湯沢吞みすぎ謙信新潟納豆の海鮮爆弾きりざい風
続いては、新潟納豆の海鮮爆弾。納豆やとろろ、海鮮とともに刻まれた沢庵と野沢菜が入れられており、郷土料理のきりざい風に仕立てられています。

もうこれは、食べる前から旨いやつ。全体をしっかりとよく混ぜ、海苔に巻いてひと口パリッと。納豆好きでよかった。日本酒好きでよかった。そして、吞兵衛でよかった。シンプルにそう思える素朴な旨さが広がります。

10月上旬初秋の越後湯沢吞みすぎ謙信天恵菇の酔いどれ焼き
お次は本日のおすすめに書いてあった、天恵菇の酔いどれ焼きを。魚沼名産のブランド椎茸である天恵菇をお酒に浸して焼いたという、素材そのものを味わう調理法。噛めば程よい歯ごたえの後、じゅんわりと溢れる椎茸のエキスとほんのり香るお酒の風味が堪りません。

10月上旬初秋の越後湯沢吞みすぎ謙信もつ煮うますぎちゃん
〆はすじ子のみそ漬けを残しておいてご飯かな。そう思いつつ、もつ煮ができあがったというので結局酒のつまみを選んでしまう吞兵衛の悲しい性。

うますぎちゃん!!と、なかなか注文するのにハードルが高い名前とは裏腹に、越後味噌や名物かんずりで煮込んだもつ煮は優しいおいしさ。もつとともにたっぷり加えられた新潟の野菜から染み出た滋味が、コク深い味噌のスープにしっかりと宿っています。

10月上旬初秋の越後湯沢ほろ酔い気分で歩く越後湯沢の温泉街
いやぁ、思わずがっつり飲んでしまった。どれもお酒にピッタリ合うおいしさに、あれよあれよという間に進んでしまった越後の酒。ほろ酔い気分で歩く湯の街に、もう一泊したいと叶わぬ願いを浮かべてしまう。

10月上旬初秋の越後湯沢駅
静かな街の中、溢れんばかりの光を放ち夜闇に浮かぶ駅舎。ぽつんと輝くその姿は、どことなく異世界への入口であるかのよう。

10月上旬初秋の越後湯沢駅E7系とき号東京行き
誘われるかのように吸い込まれる、眩く輝く改札口。その入口は、異世界へと通ずるものではなく、僕の日常へと繋がる門だった。E7系に乗り込めばすぐさま上越国境を貫く闇に呑み込まれ、気づいたときにはもういつもの関東の人に。

10月上旬初秋のE7系とき号東京行き帰京のお供に鶴齢ワンカップ雪男
そんな道中を彩ってくれる、この旅最後の越後の酒。鶴齢のきれいな旨さを現したかのような雪男の描かれるワンカップに、これから来るであろう銀世界へと思いを馳せてみる。

10月上旬初秋の東京駅E7系とき号車体側面に描かれたエンブレム
旅って、本当に奥深い。同じ時期に旅しても、行先が違うだけで同じ季節とは思えぬような広さを感じる。それでいて、同じ土地を何度も訪れても、季節が違えば新たに出逢える未知なる魅力。

はたちになったばかりの僕は、二十年後にそんなことに気づけるような人生を歩んでいるなんて、これっぽっちも想像がつかなかった。その礎を築いた旅の目的地である金沢へと誘ってくれたのが、上越新幹線とほくほく線だった。

二十歳のときと同じく上越新幹線に乗り、越後湯沢を経由してほくほく線へ。想い出のはくたか号はもうないけれど、若い希望に満ちたあの日に通り過ぎた駅の先には、今だからこそ深く味わえる世界が広がっていた。

社会人になって、初めて本格的なひとり旅となった金沢旅行。そこで出逢えたものが基礎となり、その後会社の先輩から秘湯の良さを教えてもらい。そしてこの趣味が、これほどまでに飽きもせずさらに深くなりゆくとは。

あの頃の若い僕は、その後色々あることをまだ知らない。でもあの日ここから旅立ったからこそ、その先に今の自分がある。あの日あの思い付きがなければ、金沢へと旅していなければ、きっとまた違った道を歩んでいたに違いない。

旅すること、それはすなわち僕にとっては生きること。生き甲斐とも言えるそんな大切な趣味へと繋がる一歩を踏み出した、あの日の自分に感謝したい。そしてその倍生きてみた今、この瞬間の一歩が次の自分を創るということを身をもって知っている。

図らずも、自分の原点を辿るような行程となった今回の旅。ふと旅の欲求が昂り、重厚な建築と個性的だという湯に惹かれ。そんな動機から導かれるように旅した地で逢えたのは、まだ見ぬ地への欲求と、若かりし頃のあの日の想い出たち。そんな新たな熱と懐かしい温かさを胸へと宿し、ほくほく線の旅は静かに幕を下ろすのでした。

濃厚チカラ湯、ほくほく泉。~秋のはじまり松之山~
10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣力漲る濃厚な湯
2022.10 新潟
旅行記へ
●1日目(東京⇒越後湯沢⇒松之山温泉)
 //
●2日目(松之山温泉滞在)
 /
●3日目(松之山温泉⇒清津峡⇒越後湯沢⇒東京)
 ///

コメント

タイトルとURLをコピーしました