濃厚チカラ湯、ほくほく泉。~秋のはじまり松之山 1日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

濃厚チカラ湯、ほくほく泉。~秋のはじまり松之山 1日目 ③~

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣で迎える夕暮れ 旅の宿

静かなる力を秘めた松之山のお湯と、古き良き木造建築の放つ重厚な趣。早くも凌雲閣の世界観に心酔していると、いつしか夜へと向かい色を失いゆく初秋の山里。楽しい時間は早く過ぎるもの。あっという間に夕食の時間を迎えます。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣1泊目夕食
新館にある食堂へ向かうと、食卓にはおいしそうな山の幸がずらりと並びます。これはもう、新潟の酒が進むこと間違いなし。

まずは色々な味を少しずつ楽しめる前菜5点盛りから。しっかりとした風味が香ばしいクルミ豆腐に、松之山の温泉でじっくりと加熱され旨味が凝縮された湯治豚。きゅうりの上にはコクと旨味の深い発酵豆腐が載せられ、これまた呑兵衛には堪らない逸品ぞろい。

続いては、山の恵みを様々な形で味わわせてくれる小鉢たち。鮮やかな紫が美しい黄色の小鉢は、新潟名産の食用菊である柿の素のお浸し。しゃっきりとした食感と、広がる花の香りが季節を感じさせます。その左下は、梨の白和え。ほんのり上品な甘さの白和えに、梨のしゃりっとした食感が印象的。

中央の小鉢は、松之山産のなめこおろし。甘酢仕立てのおろしがつるんと口触りの良いなめこに絡み、地酒で火照った口に涼しさを連れてきます。そのお隣は、茄子のお浸し。丁寧に皮をむかれた柔らかい茄子からは、旨味の詰まったジュースがじゅわっと広がります。

お造りにはカンパチに甘海老、そして岩魚とその卵。こりっとした身に滋味深さを宿す岩魚、豊かな旨味を小さな粒に抱く黄金のイクラ。その味わいに、山の湯宿へと来たという実感が一層掻き立てられるよう。

焼物は、ほっくりとした凝縮感がおいしい目鯛の柚庵焼き。その右隣のズイキの酢漬けは、しゃきしゃきとした独特な食感が美味。左側の玉子豆腐には天然きのこがたっぷりと加えられ、優しい味わいの中で主張する山の香りが堪りません。

お鍋は、つなんポークときのこの寄せ鍋。身質の柔らかいつなんポークがきのこのエキスが溶け出ただしをまとい、優しい味付けながらしっかりとした旨味が沁み入ります。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣1泊目夕食天ぷらとけんちん汁
続いて運ばれてきた天ぷらは、揚げたて熱々サクサク。けんちん汁には根菜や山菜がたっぷりと加えられ、細かく切ってあるからこその一体感が印象的。これまでごろごろ野菜のけんちんに慣れ親しんできたので、新体験のこのおいしさはちょっとばかり衝撃的。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣1泊目夕食新米の松之山産コシヒカリと鯉こく
そして〆にと運ばれてきたのは、この時期だからこその松之山産コシヒカリの新米。艶々で見るからにふっくらとしたご飯を頬張れば、途端に広がるお米の旨味と香り。

先月食べた東北の粒だったお米が白身のお造りだとすれば、新潟のもっちりと甘味の広がるお米は言わばトロ。甲乙つけがたい、全く別物の旨さ。同じ穀物とは思えぬほどそれぞれのもつ豊かな個性に、日本に生まれて良かったと改めて実感。

そんなおいしい地元の新米をより旨くしてくれるのが鯉こく。優しい味噌に生姜が香る鯉こくは、これまで食べたことのないタイプの味わい。穏やかなおつゆにじんわりとした鯉の旨味とほんのりとした脂が染み出し、コリコリ、さくさくとした鱗の食感がまたいいアクセントに。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣夜闇に幻想的に浮かぶ本館
あれもこれもどれも、本当に全部おいしかった。山の湯が好きで、そこで食べる山の幸も大好物の僕ですが、こんなに多種多様な山の恵みをこれほどまでに色々な食べ方で一度に味わったのは初めて。お腹も心も、そして食に対する好奇心も存分に満たされ食堂を後にします。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣透かし彫りの欄間が美しい夜の玄関
すっかり日も暮れ、夜闇の中浮かぶように佇む本館の姿。その幻想的な灯りを愛でつつ進んでゆけば、木の温もり溢れる空間が迎えてくれる。飴色に艶めく床、渋い色味に染まる格天井。玄関の欄間には繊細な梅の彫刻が施され、どの角度から眺めてもため息が漏れるばかり。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣情緒あふれる夜の廊下
決して華美ではない。それなのに、心にじんじんと伝わるこの贅沢さ。豪雪の地で長年風雪に耐えてきた戦前生まれの建物には、缶詰の様に昭和初期の美意識というものが保存されているかのよう。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣鷹の湯3合源泉を使用した貸し切りできる家族風呂
おいしい食事と木の温もりに満たされ、ごろりと寝ころび味わう怠惰。お腹もだいぶ落ち着いたところで、空いていれば無料で貸し切りできる家族風呂へと向かいます。

扉を開けると、途端に全身を包む熱気と香り。小さな湯船には温泉街でも使用される共同源泉の鷹の湯が掛け流されており、その温度は結構なもの。丹念に湯もみをし、しっかり念入りに掛け湯をしていざ浴槽へ。

すると不思議、何だかんだで入れてしまう。同じ熱い湯でもダメなものは全く入れないのに、こうして入れてしまうものがある。何度経験しても、この差がいまいち自分でも分からない。

大浴場に使われている自家源泉の鏡の湯に比べ、香りは若干穏やか。薬品臭は控えめで、その代わりこれまた文字にするには難しいもんわりとした匂いが立ちこめています。浴感も、こちらのほうが心なしかあっさりめ。その分高い湯温により、結局汗だくになっていまいます。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣夜のお供にDHC酒造悠天純米吟醸
湯上りの火照りを感じつつ、越後の旨い酒を開けることに。まずは新潟市のDHC酒造、悠天純米吟醸を。酸味や辛さが心地良い飲み口で、どことなくしゅわっとした爽やかさを感じるおいしいお酒。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣自家源泉鏡の湯が満たされる中浴場
お酒と暇を持て余し、気が向いたときに湯屋へと向かう。そんな贅沢な湯宿での夜を彩る、濃厚なお湯。大浴場と中浴場は時間により男女入れ替え制となっており、この時間は中浴場が男湯になっていました。

自家源泉である鏡の湯が満たされる中浴場。先ほどの家族風呂よりも格段に入りやすい温度ですが、やはり香りの個性と浴感の厚みがものすごい。逆上せるような湯温ではありませんが、体の芯へと確実に熱量を届けてくれるかのような感覚に身を委ねます。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣きらきらと綿壁の美しい和室
鏡の湯の包まれるような分厚い浴感もいいし、鷹の湯のきりりとしゃっきりするような浴感もいい。ひとつの宿でふたつのお湯を味わえるという贅沢に、連泊を決めて大正解だとまたまたにっこりしてしまう。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣夜のお供に玉風味華酒
綿壁のきらきらとした輝きに目を細めつつ、ゆったりと味わう湯上りのひととき。そんな夜を彩る2本目は、魚沼市は玉川酒造の玉風味華酒を開けることに。おいしい米を育む魚沼の水の良さを感じさせる、するりと飲めるきよらかなお酒。

10月上旬初秋の松之山温泉凌雲閣宮大工の美意識が宿る風情ある客室
お湯良し、部屋良し、味も良し。宿を探しているときに一目ぼれした古き良き本館、そこに湧くという個性豊かな薬湯。そのふたつに逢いに来たつもりが、たっぷりの山の幸でもお腹と心を満たされた。

またひとつ、危ない宿を見つけてしまった。東京から簡単に来ることのできる、魅惑の湯宿。そこに明日も泊まれるなんて。初めて味わう松之山での贅沢な時間に、頬はずっと緩みっぱなしになるのでした。

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