窓から溢れる青さに起こされる、爽やかな朝。冬の終わり、春まだ浅く。そんな表情をしていた昨日の鉛色の海とは対照的に、今朝の日本海は鮮やかな青さ。そのうつくしい色に居ても立っても居られず、海辺の露天風呂で爽快な朝風呂を味わいます。
朝から海風と波の音を浴びつつの朝風呂に揺蕩い、体中に鉄の香りをまとったところでお待ちかねの朝ごはん。バイキング会場には、ご飯に合いそうな品々がずらりと並びます。
そんな中で選んだのは、この品々。日本海側らしいハタハタの三五八漬けは、淡白ながら凝縮された旨味が美味。いかの塩辛は自家製らしく、これだけで何杯もご飯をおかわりしたくなる間違いのない旨さ。
他にも茄子の揚げびたしやすじこ、たらこといった王道のおかずに、どんどんご飯が進んでしまいます。そして〆には、大好物のなっとろろご飯。青森名産の長芋とろろと納豆を合わせれば、満腹でもするすると食べられてしまう魅惑の旨さに。
朝食会場からコーヒーを持ち帰り、自室で過ごすゆったりとした食後のひととき。窓辺の椅子に腰掛け、コーヒーを啜りつつただぼんやりと海を眺める。なんだかこの感覚、久しぶりに味わう気がする。
そうだこれ、フェリーで旅した以来の感覚だ。窓一杯を染める青い海原、地球の丸さを実感することのできる水平線。窓を開ければ波の音が絶えず聞こえ、今自分が陸上に居ることを忘れさせるような海との一体感。
より一層海を身近に感じようと、海辺の露天風呂へ。みんなチェックアウトし、日帰り客もまだ来ない時間。海と湯船を独り占めとは、なんと贅沢なことなのだろう。
昨日は強い風により大きな波が叩きつける音が響いていましたが、今日は一転し穏やかな表情に。あまりにも真っ青な海原と、黄金色に染まる湯の鮮烈な対比。この色彩の競演は、今も網膜に灼きついて離れない。
湯上りにいけない午前のビールを味わい、食欲中枢が刺激されたところで昼食をとることに。海の見えるレストラン夕陽はランチ営業が行われており、深浦名物のマグロステーキ丼も食べられます。
そんな中、僕が選んだのは辛味噌ラーメン。味噌のコクにピリッとした唐辛子の辛味が広がり、しゃきしゃきの野菜もたっぷり載せられ食べごたえ十分。窓一杯に広がる海を見ながら、汗を掻きつつ一気に平らげます。
おいしいラーメンに舌鼓を打ち、あまりの陽気の良さに誘われ浴衣のままのんびり散歩へ。高い位置にある太陽に照らされ、ちりめんのようなうつくしい煌めきに彩られる海原。
宿の裏手には、木々の中佇む白亜の灯台が。そうか、この灯台が昨日夜空を照らしていたんだ。この艫作碕灯台は昭和16年に生まれて以来、80年以上もの長きに渡り行き交う船の安全を守っています。
それにしても、今日の海は青すぎる。11年前の夏、深浦を訪れたときに初めて知った日本海の青さ。でも今日は、それをも遥かに超える鮮烈さ。文字通り真っ青と表現したくなるこの強烈な色彩に、今はただ無心のまま染まっていたい。
高台からの眺望を全身に浴び、今度は海沿いへと行ってみることに。引き返そうと振り返れば、海へと飛び出すかのように延びる長閑な道。
胸のすくような眺めを味わいつつ、宿を見下ろす場所にちょっと寄り道。こうして見ると、本当に岬の突端に建っていることが分かります。
新館と本館の間を通る急坂を下り、海辺へ。奥に見えるよしずの掛けられたところが海辺の露天風呂。いかに波打ち際に位置しているか、伝わるでしょうか。
その露天風呂からの眺望は、こんな感じ。少しずれたところから撮影したため視座は違いますが、遮るものなく海原が迫り、海風と波の音がダイナミックに押し寄せるロケーションはまさに圧巻のひと言。
すぐそばに荒磯の猛々しさを感じつつ歩く、海辺の道。その突き当りには、隠されたように佇む小さな港が。何泊もできるなら、こんな場所でのんびり釣り糸を垂らしてみたい。
腹ごなしにと、あてもなくのんびり歩いた浴衣でのさんぽ。昨日の曇天とは打って変わって、眼を灼くような鮮烈な青一色に染まる黄金崎。同じ海と言っても、日本は広い。日本海の本気の色彩を全身に受け取り、忘れ得ぬ記憶として胸へと刻まれるのでした。
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