夜の彼方へ ~あけぼの号で行く紅葉と温泉の旅 3日目 ②~ | 旅は未知連れ酔わな酒

夜の彼方へ ~あけぼの号で行く紅葉と温泉の旅 3日目 ②~

秋田駅弁あきたの宿おかみ弁当 旅行記

古き良き特別急行列車の旅を終え、秋田駅に到着。秋田駅でお昼を購入し、秋田新幹線こまち号に乗り換えます。このフリーキップ(廃止)はこまち号も立席なら乗車することができ、とても便利でお得。このエリアの周遊きっぷもこまち号への乗車が可能なので、角館や田沢湖までの移動も楽々です。

秋田駅の指定席券売機で空席をチェック。結構混んでいたので、まだ発売されていない席へ直行しました。席を確保し(といっても、今後この席が売れてしまえばどかなければなりませんが)、お昼ご飯である駅弁を広げます。

今回購入したのは、地元調製元である関根屋の、あきたの宿おかみ弁当。着物風の柄の包み紙が女将を連想させるお弁当です。

秋田駅弁あきたの宿おかみ弁当お品書きとナプキン

包みを開けると、お手もとやお品書きと共に、ピンクのナプキンが添えられていました。今まで女将さん監修のお弁当はいくつか食べましたが、これは今までに無い配慮。このような細かな配慮・演出がさりげなくされているところ、さすがは女将さんです。

秋田駅弁あきたの宿おかみ弁当中身

蓋を開けると、2種類のご飯に多彩なおかずたち。酒飲みの僕は、どうしてもガッツリご飯系の駅弁より、このようなアラカルト的なお弁当を選んでしまいます。最近の駅弁屋さんの手にまんまと引っかかりっぱなし。

食材や味付けなど、秋田らしさにこだわったというこのお弁当には、秋田県産の食材がたくさん詰まっています。お品書きを見ると楽しいこと。ほぼ全てのメニューに秋田県産と名が付いています。

お弁当には珍しいじゅんさいの酢の物は、酢や甘味の加減も丁度良く、前菜としてぴったり。これからの食への期待感を煽ってくれます。とんぶり入りの揚げ蒲鉾や芋のこ蒟蒻の味噌田楽といった渋い副菜も、秋田らしい素朴な旨味をたたえ、お酒にピッタリ。

ぜんまい、人参、ふきの煮物は家庭的でありながら旅館の女将らしく上品に仕上げられており、ホッと和むこと間違いなし。豚肉のアスパラ巻きは豚の旨味が強く、アスパラの食感や豚のジューシーさを失わず、冷めていても美味しい一品。

北国で美味しい魚、鮭のマヨネーズ焼きも身がふっくらと焼き上げられ、適度なマヨネーズにより、和の献立の中でいいアクセントとなっています。そして秋田らしいハタハタの甘露煮といぶりがっこ。間違いありません。

こんなおかずに合わせるのは、やはり美味しい美味しいあきたこまち。白いご飯の方には秋田名産であるちょろぎと、味噌南蛮が添えられており、これまたご飯のお供に相応しい。

炊き込みご飯は比内地鶏のガラスープで炊き上げたもので、鶏の柔らかでありながら濃い風味をしっかり吸っています。上に載った竹の子やみずといった山菜も、山宿で出てくる秋田らしい食材。

これほどたくさんの秋田の美味が詰まっている以上、やはり欠かせないのが日本酒。有名な美酒爛漫の純米ふなおろしを合わせました。

ふなおろしというだけあり、日本酒の強い香りがガツンと鼻に抜ける、飲み応えのあるお酒。それでいて嫌味が無く口当たりの良い、おかずだけでなくご飯とも一緒に楽しめる、まさに列車旅にピッタリなお酒です。

田沢湖線秋田新幹線車窓より眺める山並み

お弁当を食べながらのひとりプチ宴会でほろ酔い気分になっていると、車窓には山がだんだんと近くなってきました。先に見えるV字に切れ込んだ狭い谷間を、鉄道と国道が絡み合うようにして、分け合いながら進んでいきます。

生活の全てをだたっ広い関東平野で完結させている僕にとって、この山へと舵を切る瞬間がたまらない。なぜなら、山の向こうには必ず、非日常が待っているから。

秋田新幹線こまち号車窓から見える杉の貯木場

国道沿いには、いくつもの大きな貯木場が並んでいました。林業が全盛期を過ぎ下火になってしまった今でも、ここ秋田ではたくさんの良質な秋田杉が出荷されています。

昔は日本全国に林鉄が張り巡らされ、こんな光景は当たり前に広がっていたのでしょう。この光景を見ると、モノクロ写真でしか見たことの無い小さな機関車が、今にも満載の木材を引っ張り、山から降りてきそうな錯覚を起こします。

木も野菜も肉も魚も、せっかく良質なものがとれる国なのに、みんな輸入してしまう。価格を見れば仕方ないのかもしれませんが、宝の持ち腐れ、なんとももったいない。

多少高くても、日本人には日本の国土で育ったものが一番しっくりくるはず。同じ水や空気で、一緒に育ってきたのだから。

田沢湖駅ホームから眺める雪化粧をした山

海外にばかり目を向けるのではなく、日本人はもう少し日本の良さに目を向けないと・・・、なんて国内旅行大好きの僕が勝手な考えをめぐらせているうちに、田沢湖駅に到着してしまいました。

手前の木々の色づきとは対象に、奥の山にはしっかり見えるほどの雪化粧が。これから向かう場所が、一体どのような光景になっているのか、想像もつきません。だって、まだ10月なのです。

秋の田沢湖駅

思い返してみれば4年前。会社の先輩に連れられて初めて行った秘湯の旅。それまで海沿いの食べ物が美味しい大型旅館が好きだった僕にとって、こんな衝撃的なことはありませんでした。今までの温泉旅行を覆す驚きと充実感。本当の旅を、初めて教わった3泊5日。

その旅行で初めて降りた田沢湖駅も、これで3回目。こんな短期間で3回も訪れようとは、まだそのときは思いもよりませんでした。特に前回からは、まだ9ヶ月も経っていません。

「久しぶり」と「またやって来た」、この2つの想いが交錯しながら眺める田沢湖駅は、雪が無いというだけで、今までとは違う印象を与えます。

羽後交通バス乳頭温泉行き

田沢湖駅前からは、『羽後交通』のバスで終点乳頭温泉へ。駅前の風景も、雪が無いため随分すっきり、明るい雰囲気。一年の約半分しかこの景色を見ることができないのですから、雪国の方々の大変さは、遊びに行く僕らが想像することは到底できません。

すすきが広がる田沢湖高原の秋景色

この日は観光客でほぼ満席。ドラマの影響もあってか、かなりの盛況振りです。田沢湖を過ぎ、なおも混雑する車内。目的地はみな乳頭温泉郷なのでしょう。

途中車窓からは、鈍い銀に輝くすすき野原を一望することができました。秋田県内に入り、針葉樹が多くなってからは、久々に見る秋らしい風景。

うっすらと雪が積もる田沢湖高原スキー場

バスはどんどんと標高を上げ、田沢湖高原の手前へと差し掛かりました。ふと前方を見ると、なんとくっきり浮かび上がるゲレンデが。田沢湖高原スキー場です。

こりゃ、今年の春先に行った長野のスキー場よりよっぽど雪がある。まるで今からすぐにでも滑れそうな勢いです。ついついプチスキーヤーの血が騒ぎ、テンションがグッと上がってしまいました。

アルパこまくさから田沢湖を望む

安比高原の帰りに宿泊した、鶴の湯の送迎バスが迎えに来る、アルパこまくさ。前回はあたり一面雪の壁だったので全く分かりませんでしたが、雪の無い時期はこのように眼下に田沢湖を眺めることができるのですね。そういえば、お風呂からも田沢湖を一望できる、なんて書いていたような。

雪と紅葉奇跡の共演

アルパこまくさ前で鶴の湯のお客をどっさり降ろしたバスは、更に山道をグングン分け入ります。次第にあたりは白銀が支配し始め、ついには地面は雪に埋もれてしまいました。

木々にはまだオレンジや黄の葉が残っているので、辛うじて秋だと分かりますが、それ以外は冬と言っても疑いの余地がありません。季節を一気に駆け上ってきた感があります。

奇跡の光景紅葉雪景色

標高を上げるごとに雪の量は増し、もう真冬の装い。10月にしては異例の寒気がもたらしたものは、雪に映える紅葉という、日本でも極限られたところでしか見ることのできない風景。本州では普通は見られないといって間違いありません。

雪化粧の乳頭温泉バス停

田沢湖駅からバスに揺られること約45分。下界とは季節すら隔絶された感のある、乳頭温泉に到着。あたり一面の紅葉と銀世界。バスから降りると驚くほどの寒さが襲います。

ここから宿の送迎車に乗り換え。お願いすればバスに合わせて送迎してくれます。暖房の効いた車内で聞く秋田弁。10月にこれ程雪が降るのは珍しいそう。いつもは降ってもすぐ溶けてしまう程度なのだとか。

これから向かうは、乳頭温泉郷において唯一今でも冬季休業の秘湯、黒湯温泉。期待していなかった雪見風呂を目前に、逸る気持ちを抑えきれないまま、更に山の奥へと分け入ります。

夜の彼方へ ~あけぼの号で行く紅葉と温泉の旅~
国鉄型24系25型客車寝台特急あけぼの青森行き方向幕
2010.10 青森/秋田
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●3日目(秋元温泉⇒黒湯温泉)
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●4・5日目(黒湯温泉⇒角館⇒秋田⇒東京)
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