雪に抱かれ、湯に溶かされ。~春の奥湯沢で過ごす時間 3日目~

春の残雪貝掛温泉で迎える朝

濃密ながらもあっという間の2泊3日の旅。ついに最後の朝を迎えてしまいました。目を覚まして目に入るこの雪景色。今シーズンはもう見納めかもしれないと、いつも以上にその白さを味わいます。

奥湯沢目の湯貝掛温泉2日目朝食

白い雪と清らかな朝の空気に包まれつつ湯浴みを愉しみ、美味しい朝ごはんを味わいます。

今朝も食卓には、塩鮭や玉子焼き、とろろにお浸しなど、これぞ日本の旅館の朝食という品々が並びます。奇をてらわないおかずがきちんと美味しい。お湯と自然と時間に癒されに来た者にとって、これこそが一番の贅沢であり、ご馳走なのかもしれません。

そして今日の主役も、春の雪を思わせる白さと輝きを持つ、こしひかり。よくご飯だけで美味しいと言いますが、このお米はまさにそう。でも、ご飯だけでも美味しいのですが、おかずと合わせても邪魔をしない、それでいてしっかり個々を感じる存在感。本当に好きな味です。

そしてそんな美味しいご飯を引き立てる、具だくさんのお味噌汁。朝食のお味噌汁にはたくさんの根菜類がごろごろと入り、これが一番のおかずになります。だしと野菜の旨味が浸みたおつゆを、お米と一緒にひと口含めば、心から日本に生まれて良かったと思える瞬間が。小さい頃からご飯はお味噌汁と一緒に食べるのが好きな僕にとって、堪らないご馳走です。

奥湯沢目の湯貝掛温泉朝食後のまどろみタイム

美味しい貝掛の朝ごはんをたらふく食べ、お湯に別れを告げに行く前に小休止。朝食後のこの怠惰なひととき。日常では決して味わえない幸福感に包まれます。今夜も明日も、明後日も。こんな日が続けば良いのに。そんな妄想すら、緩い眠気にかき消されてゆきます。

春の雪解け貝掛温泉

最後の最後にもう一度貝掛のお湯を味わい、身も心も、眼も清めてこの地を去ります。

泊まりたいと思い始めて早数年。やっと訪れることが叶った、貝掛温泉。思う時間が長いほど、期待という名のハードルは高くなるもの。ですが、この宿、このお湯は、僕のそんな小さなハードルを軽々と飛び越えてくれました。

東京から2時間で来ることができる、山の宿。文字通り四季折々を愉しんでみたい。またひとつ、僕の嬉しい悩みが増えそうです。

雪解けの貝掛温泉からの一本道

行きは送迎をお願いしましたが、帰りは歩いてバス停へと向かいます。靄がかかり、水墨画のように色彩を失った雪景色の中歩く道。自分を包むのは、雪解けの心地よい肌寒さと静けさのみ。

雪解けの季節の清津川

溶け始めの雪解け水を集めて流れる清津川。その音を聞きながらこの橋を渡れば、国道はもうすぐ。

あぁ、本当に貝掛温泉から帰ってきてしまったんだ。川音に混じって聞こえ始める、タイヤがアスファルトを噛む音。その音を聞くと、この川が夢と現実の世界を隔てているかのような感覚に襲われます。

南越後観光バス浅貝西武クリスタル行き

最後に急坂を駆け昇り、数多くの車が往来する国道へと2日ぶりに復帰。ここから再び、『南越後観光バス』の浅貝行きに乗車します。そう、そのまま東京へ帰る訳には行かないのです。湯沢駅とは反対方面に乗車し、個性的なお湯を目指します。

苗場温泉雪ささの湯

バスはどんどんと山を登り、急に開けたと思えば、ビルやカラフルな看板が立ち並ぶ苗場エリアへと足を踏み入れます。

その瞬間、僕の脳内ではZOOに広瀬香美、そして愛するglobeがガンガンに流れ始めます。今の子たちにはわからないんだろうなぁ。あのCMでどれほど雪山に憧れたか。あぁ、スキーしたい・・・。

そんな景色に圧倒されつつ、「浅貝上」バス停で下車。ほど近くに位置する『雪ささの湯』で、この旅最後のお湯を愉しみます。

苗場温泉雪ささの湯大浴場

早速入館券を買い、大浴場へと向かいます。そこで目にしたのは、思いっきり茶褐色に濁る、見るからにこってりと濃そうな温泉。むわっと香る鉄と土っぽい香りに包まれた内湯を抜け、まずは露天風呂を目指します。

苗場温泉雪ささの湯黄金色のお湯が満たされた雪見露天風呂

内湯を抜けると、真っ白な雪との対比が美しい、黄金色の湯が満たされた露天風呂。縁も柱も岩も、お湯の成分でまっ茶っ茶。

期待を込めつつ浸かってみると、体中にお湯の圧力のようなものを感じます。これは相当成分が濃いのでしょう。単なるスキー場近くの日帰り温泉と侮ってはいけません。肩まで浸かるとすぐに暑くなってくるので、雪とバブルの想い出を彷彿とさせるタワーの景色を眺めながら、出たり入ったりを繰り返します。

そして湯上りの温まりも長時間持続。お姉さんが休憩スペースのヒーターを点けますと言ってくれましたが、大丈夫です!と言いたくなる温まり方。本来ならば、何泊かして短時間の入浴を繰り返したい、そんな力強さのある温泉です。

夕暮れ前の湯沢の街並み

朝食をお腹一杯食べたこともあり、ビールを昼食代わりにして何度か入浴した僕。それが仇となり、珍しく湯あたりしてしまいました。入った瞬間、直感的に濃いっ!と感じる温泉は、ほどほどにするのが鉄則ですね。バカだったぁ。

なので、今回は最後の居酒屋飲みは断念。下調べしていったのに残念で堪りません。でも、それはそれでまた一興。

麓には清らかで優しい貝掛のお湯が湧き、山の上にはまったり力強い温泉がある。バブルとスキーのイメージであった湯沢が、僕の中で魅力的な湯の町に変わりました。

東京から新幹線でたったの1時間ちょっと。ありえないほど近いのに、こんなに豊かな時間が過ごせるなんて。そう言えば、ここには雪のある時期にしか来たことが無かったんだ。ならば、芽吹きの春も、緑あふれる夏も、そして燃えるような紅葉も見てみたい。

勤務の合間を縫って訪れることができる、別世界。またひとつイケナイ宿に出会ってしまった。近いことをいいことに、今宵の借りを返しに来てやる。再訪の口実を手に入れた僕は、夕暮れの湯沢の街に別れを告げ、新幹線で東京へあっという間に帰ったのでした。

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雪に抱かれ、湯に溶かされ。~春の奥湯沢で過ごす時間~

奥湯沢目の湯貝掛温泉清らかな源泉で眼を洗う
2015.3 新潟

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