空と谷、二つの誘湧。~初夏の奥羽 山の湯旅 2日目 ③~

岩手県交通厳美渓行き

中尊寺、わんこそば、毛越寺と、平泉を満喫し、地上の極楽浄土を離れる時間に。

もともとは平泉駅から電車とバスで宿まで移動する予定でしたが、『岩手県交通』のホームページを調べてみると、毛越寺から厳美渓までのバスが出ている模様。そして一ノ関から宿まで乗る予定だったバスも、厳美渓経由。

乗り継ぎを見てみると、電車利用よりも毛越寺出発が遅く、厳美渓での滞在時間もバッチリ。ということで、毛越寺駐車場上にあるバス停から、渓泉閣行きのバスに乗車。この路線の大半は春から秋の季節限定運行なので、利用前はHPで要チェックです。

初夏の新緑厳美渓

バスは岩手の田園風景の中をのんびりと走ります。途中には、史跡達谷窟(たっこくのいわや)があり、車窓から垣間見えただけでもインパクトのある姿。絶対に行ってみたい、これは次回の宿題です。

毛越寺からのんびり揺られること約15分、岩手の誇る名勝、厳美渓に到着。ここを訪れるのは2度目ですが、やはりこの最初の出会いは衝撃的。端から眺めれば、自然の力を嫌という程思い知らされます。

妖しい美しさを持つ厳美渓

前回も思ったのですが、ここの眺めはただ単にああ綺麗だ、というものではないのです。怖美しいとでもいいましょうか、自然の力に対する畏れ、そんな人間の本能をくすぐるような妖しい美しさなのです。

大きな岩盤の上には池があり、多くの人々が憩い。でもすぐその横手には深い渓谷が勢いよく流れ、その境界線は余りにも曖昧。細く頼りないロープ一本で区切られているだけ。

今回も食いそびれた厳美渓名物空飛ぶ団子かっこう団子

荒々しくも美しい全景を満喫したところで、僕も人々の集まる場所へと急ぎます。そこにかかるは手動の籠ロープウェー。厳美渓の象徴とも言える、かっこうだんごです。

3年半前に訪れた時は、さあ買おうと思った矢先に売り切れに。その時の反省を活かし、景色を見る前に並びましたよ、お財布まで用意して。

前のカップルのお団子とお茶がするすると滑り降りて来て、さあ次は僕の番!!とそこで軒下に掲げられた黄色い旗。嘘でしょ!?今回も!?またまた売り切れ、かっこうだんごにありつけませんでした。僕は生きているうちにかっこうだんごを食べることができるのだろうか・・・。無念。

自然への恐れを呼び起こす厳美渓の荒々しい美しさ

かっこー、かっこー。僕の頭に響くかっこうの鳴き声。次回こそリベンジしてやる。そう気持ちを切り替え、再び深い厳美渓の姿を楽しむことに。

磐井川が気の遠くなるような年月を掛けて刻み続けてきた厳美渓。両岸は岩盤でできており、その渓谷だけ地面が割れてできたような姿をしています。

その様子を展望するこの場所も、やはり岩盤。長年の風雨で削られ、角も丸く、表面も滑らかに。それが妙に居心地の悪さを演出し、頼りないロープの見た目も相俟って、背中がぞわぞわとする感覚に襲われます。

磐井川が長い年月をかけて岩を穿ち造り上げた厳美渓

展望台の先端へと進み、川の流れをより間近に望みます。無数の亀裂が走る無機質な岩肌と、その底を流れる深く青い磐井川。強い自然の力を目の当たりにすると、無意識のうちに畏怖の念を抱いてしまう。くどいようですが、僕の中にある本能に、何かが訴えかけてくるのです。やはり、怖美しい。

岩手県交通須川高原温泉行き

3年半前のリベンジに!と意気込んできた厳美渓。かっこうだんごを食すという課題を残しつつ、『岩手県交通』の須川温泉行きに乗車し厳美渓を後にします。

3年半前は、ここが旅の終着地でした。でも今回は違う。これからが、心待ちにしていた秘湯との再会。バスの行く先が示すあの地。8年前に立ち寄り忘れえぬあの露天との再会まで、あと少しです。

空と谷、二つの誘湧。~初夏の奥羽 山の湯旅~
登山道から眺める大日岩と須川高原温泉
2016.6 岩手/宮城
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