溢れんばかりの総天然色に満ちたシュガーロードを抜け、小浜島の中心に位置する本集落へ。鉄筋コンクリートの建物と珊瑚の石垣や赤瓦が混在する家並みは、これまで訪れた島の集落とはまた違った雰囲気。
起伏のある地形にギュッと凝縮された集落の風情を感じつつ、暑い暑いと汗を流し歩く道。艶やかなハイビスカスに誘われ木蔭へと身を寄せれば、肌を撫でゆく心地よい島の風。
集落を抜けると、あたり一面緑の世界に。その一画には水田が設けられ、刈り取りを待つ稲の穂先には黄金に染まる豊かな実りが揺れています。
そんな長閑な景色の先には、こんもりとした小高い山。この大岳(うふだき)は、小浜島の最高峰。山頂には展望台があるそうなので、暑さに負けず頑張って目指すことに。
それにしても、今日は本当に気持ちのよい澄んだ青空。夏真っ盛りの色彩を体現したかのような空の下には、ずらりと連なる干された稲。夏と秋、それぞれの風物詩が共存するこの光景に、改めて自分が住む街と流れる季節が違うことを嚙みしめます。
豊かな緑のなか進む、静かな道。通る人もなく、聴こえるのは風と蝉、そして草の葉擦れの声だけ。そんな長閑さに揺蕩いつつ歩いていると、静かに佇む一頭の馬を発見。
そのすぐそばには、大きな石碑に寄り添うようにして立つ立派な馬。この石碑には、小浜島の情景を詠った山の子守唄という童謡の歌詞が刻まれています。
青く染まるトゥマールビーチ、胸のすくような展望を愉しめるシュガーロード。新旧の家並みがギュッと詰まった集落に、緑に染まる田園風景。上陸してからまだ数時間。歩いて回れる範囲なのに、なんだか同じ島にいるとは思えぬような表情の豊かさ。
初めて訪れる小浜島。進むごとに未知なる景色が現れ、眼に映るもの全てがこの夏の記憶として胸に刻まれてゆく。そんな小さな探検を愉しみ、いよいよ大岳の麓に到着。
目の前に現れたのは、山頂を一気に目指す長い長い階段。おぉ、これを行くのか。そう怯む気持ちも一瞬芽生えましたが、ここまで来て行かない手はない。
このときの僕はまだ知らない、この山の頂で忘れ得ぬ一生モノのあおさと出逢えることを。
今思い出すだけでも胸がぎゅっと締め付けられるような、これまで生きてきた中で出逢ったことのない壮絶なあおさ。八重山の鮮烈さに誘われるかのように、意を決してこの登山道に挑むのでした。
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