今日も存分にそのあおさで満たしてくれたコンドイビーチ。潮の引いたときにのみ現れる、時限の島。その地上の楽園で出逢えた幻想的な世界観を胸にしまい込み、ビーチを離れることに。
八重山の火照りを、肌のみならず心にも宿して歩く帰り道。とめどなく溢れる夏空に呼応するかのように、集落を彩る緑や花々も力強く輝きます。
目を見開いていることが難しいほど、集落を満たす太陽の力強さ。それは眩しさだけでは説明できない、眼で肌で心で感じるからこその質量を伴う満開の夏。
珊瑚の石垣に茂るピィヤーシと赤瓦といった竹富らしい情景を眺めていると、奥にひっそりと佇む茅葺屋根が。竹富島の象徴でもある赤瓦が使用され始めたのは明治期に入ってからで、それまではすべて茅葺の建物だったそう。
新旧それぞれの色合いに染まる、珊瑚の石垣と赤瓦。住みながら少しづつ手直しされ、大切に残されてきた貴重な集落。そんな街並みを通る道路には、まだ真新しい白砂が。
2019年に販売が開始された、うつぐみチケット。この制度が導入されてから、道路やビーチがきれいになってきている気がする。島の人々の生活圏にお邪魔する身、微力ながら僕らの買ったチケットも役立ってくれているといいな。
サイクリングを楽しむ人々が行き交うなごみの塔の前の道から逸れ、静かな雰囲気に包まれた集落内の道へ。石垣を覆う草花や、大きな葉を茂らすバナナの木。人の営みと自然の織り成す独特の距離感の近さこそが、竹富島の大きな魅力のひとつに違いない。
この島での暮らしに思いを馳せていると、遠くからゆっくりと近づく水牛車。車に乗せた大勢の観光客の活気を背に、一歩一歩ゆっくりと進みます。
あのひっそりとした竹富島での記憶は、一生に一度ともいえる僕にとって大切な宝物。でもこうして自転車や水牛が行き交う様を見ていると、何となくやっぱりほっとしてしまう。
4年ぶりに戻ってきた竹富の夏。その悦びを一層掻き立てる今年の好天。今日も心身の隅々まで竹富のあおさに満たされ、愛するこの島を離れることに。
『八重山観光フェリー』のあやぱにに揺られ、約10分で石垣港に到着。今日はすぐに宿へは戻らず、離島ターミナル内の『七人本舗』でおやつをゲット。
「このあと車運転しますか?」「底からよ~く混ぜて飲んでくださいね」と、お決まりのフレーズとともに手渡されるマリヤシェイクの泡盛味。原液の泡盛とシェイクをしっかりとかき混ぜひと口吸えば、口中に広がるミルク感と泡盛の麹の風味の好相性。ほんとこれ、中毒性があるんだよな。
海疲れにシェイク昼酒も手伝い、ホテルでシャワーを浴びたらごろりとうたた寝。あぁ、こんな日がいつまでも続いてくれたら。そう思えるような穏やかな時の流れも、決して止まることなく進んでしまう。夕刻の良き時間となり、今宵も街へと繰り出します。
今夜はお店の予約をしていなかったため、滞在中に一度は来たいお気に入りのお店である『島人居酒屋8番地』にお邪魔することに。
あぁ、今年も帰ってきた。冷たいオリオンで乾杯しお通しのさっぱりとしたもずく酢を味わっていると、初めに注文したイカキムチが運ばれてきます。
もっちり、ねっとりとした食感と、甘味が特徴のセーイカ。個性の強いキムチと合わせてもセーイカの良さは負けることなく、ピリリとした辛味と魚介をまとめるちょどよい塩梅のマヨのまろやかさがまた堪らない。これだけでいくらでも泡盛いけるやつ。
続いては、島豆腐のあつあげを。角が立つほど表面バリッバリに揚げられた島豆腐は、熱が入り柔らかくなった食感と濃さを増す豆の風味が絶品。熱さと固さに灼けた唇を攻撃されつつも、その香ばしさにまた次が食べたくなる。
もう一品と頼んだのは、おすすめに書いてあった三枚肉のちゃんぷるー。厚く切られた豚バラは、見た感じ結構な脂身の割合。ですが脂っぽさはなく、「脂身」ではなく「白身」と表現したくなる旨味の詰まったおいしいお肉。
豊かな甘さを包含する三枚肉に合わせられるのは、しゃっきしゃきの島野菜。食感や風味を残す絶妙な火の通し加減とシンプルな味付けにより、素材そのものを味わえていることが嬉しくなるひと皿。
今年もやっぱり旨かった。おいしい手作りの味と泡盛を味わい、ほろ酔い加減で歩く帰り道。時刻はもうすぐ20時。それなのに、まだこんなにも陽の名残りがあるなんて。
初めて石垣島を訪れて以来、何度味わっても新鮮な衝撃を受けるこの時間軸。自分の暮らす街よりも、確実に緯度の低いことを思い知る。それなのに、新鮮でありつつも全く違和感を感じない。
もうここに来て5日目か。すっかり馴染んでしまったな。いつかはこの島で暮らせたら。旅の折り返し地点を迎える夜に、そんな自分の中で消えることのないいつもの願いを浮かべるのでした。
コメント