トゥマールビーチを満たす小浜のあおさに別れを告げ、のんびり島内を散策してみることに。島の内陸を目指すため、えっちらおっちら登る長い坂。滴る汗をぬぐおうと立ち止まれば、あまりにもうつくしいこの眺め。夏。この上なく、夏過ぎる。
海辺から続く坂を登り切れば、下り坂の先に広がるあおの世界。力強い緑の先には西表の蒼い山並みが連なり、その足元に広がるのはターコイズブルーの鮮やかな海。
小高い峠から胸のすくような展望を浴び、ここから集落へと続く一本道へ。ここはかつて朝ドラにも登場した、シュガーロードと呼ばれる道だそう。鮮やかな緑の中、勾配を刻みながら真っすぐとのびる姿が印象的。
ありえない。これがこの瞬間に出逢えたときの、僕の素直な感想。幾重ものあおさを湛える鮮烈な海へと向け、雄大な草原を風が滑りおちてゆく。さわさわと草がなびくその様子に、風の姿というものがはっきりとこの眼に映る。
緩やかな尾根の上を進むシュガーロード。右を見れば石垣島、左を見れば西表。左右に広がる青い展望に目移りし、なかなか前へと進めない。
シュガーロードの名の通り、かつては道の両側にさとうきび畑が広がっていたそう。僕は朝ドラを見ていないのでその時の景色は知りませんが、今は牧場や牧草地が大半を占めているよう。
牛が有名な黒島と違い、ここに来るまで牧場の印象のなかった小浜島。まっすぐのびる一本道、風になびく牧草地。夏空と白い雲を目指し緩やかに登る道の姿に、どことなく北の大地の雰囲気すら感じてしまう。
でもここが紛れもない南の島であることを教えてくれる、碧い海。ありえない鮮やかさに満ちた海を背景に、のんびりと流れる牧歌的時間。その対比は、僕がこれまで生きてきた中で出逢ったことのない不思議な情景。
きっとこのあたりは、「あぁ、僕ここの島、好きだわ。」と見上げたときに直感した場所。その直感の通り、上陸して数時間後にはすっかり小浜島にこころを灼いている。
農耕、牧畜、八重山のあお。それらのうつくしさが箱庭のように凝縮されたこの道。僕は朝ドラは見ていなかったけれど、何の予備知識もなしに出逢えたからこそ、この感動に素直に身を委ねられるのかもしれない。
ちょっとこれは、これまでに出逢ったことのない形の絶景だ。やっぱり八重山の島々には、それぞれ違った魅力があるんだ。島歩きの序盤から小浜のもつ魅力に圧倒され、道中ずっと感嘆の声を漏らしっぱなし。
いやぁちょっと、こりゃ本当にすげぇや。このとき胸に吹き渡った感動を言葉にしようといろいろ考えてみるものの、僕の力では到底無理みたい。
7度目となる八重山の夏休みにして、また新たに出逢うことのできた鮮烈な実体験。この島には、きっと他にもそんな魅力が潜んでいるに違いない。胸いっぱいに吸い込んだ夏色の感動を反芻し、来た道をもう一度振り返るのでした。
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