今日は一日雨予報。いつも通り起きてすぐにベランダへと出てみると、今はまだ降りだしてはいないものの、鼻先をかすめる雨の予感。肌に感じる空気もそれを示すかのようで、今日はビーチは無理だと悟ります。
今日一日、どうしようかな。そんなことを考えつつ、朝食会場へと向かいます。豆腐チャンプルーにもずくのり、コリコリのミミガーにさっぱりもずくと、今朝も八重山の味で満たされます。
なぜか朝食会場の一画に八重山の泡盛がずらりと置いてあるホテルミヤヒラ。無料で飲み比べでき、お刺身やミミガー、おでんと合わせれば朝からいけない酒盛りができてしまう。
これまでは後の予定も考え断腸の思いで横目で見つつ我慢していたのですが、今朝ついに禁断の園に手を出してしまうことに。すっかりお気に入りとなったブルーシールの黒糖味に、個性の強い白百合を垂らしてみます。
いやこれ、食べる前から絶対旨いでしょ。そう確信しつつひと口。うわぁ、ヤヴェェ。ミルクのコクに黒糖のほんのりとした香ばしさ、そこへ麹と土感のある白百合のガツンとしたアルコール感が合わされば、そりゃぁもうダメなやつ。危ない危ない、これ1個にしておこう。
まだ雨は降っていないかな。確認のため、ホテルの玄関から出てすぐ目の前に位置する美崎公園へ。港の前を往来するときにちらりと見ていた、カンムリワシの銅像。こうして近くで見てみると、思った以上の大きさと迫力。
この美崎公園は、石垣港の竣工を記念して造られたもの。大型の船が接岸できるよう港を掘り下げ、出た土砂を使用し今の美崎町が埋め立てられ。その工事が完成したのが1967年、まだこの地が米国であったころから大鷲はこの街を見守り続けています。
美崎町の発展の歴史に触れていると、ぽつりぽつりと降りだす雨。部屋に戻り空模様と雨雲レーダーを見比べていると、どうやらだらだらと降り続きそう。
これまでは雨予報とは言っても、降っては止み降っては止みを繰り返すイメージのあったこの時期の石垣島。さあどうしようと考えてみるも、無理せず島での日常に身を置いてみることに。
東バスで真栄里方面に向かい、本場の沖スロを打ってみたりサンエーやマックスバリュで買い忘れがないか眺めてみたり。そんな何気ないことをしていると、明日も明後日もこの島での日々が続いていくような錯覚が。
明日帰るというのに、またもや危険な行為をしてしまった。敢えて予定を詰め込まず、空模様に合わせてときにはこんな過ごし方も愉しんでみる。きっとこれはこれまで重ねた逢瀬の実績と、これからも石垣は待っていてくれると思える心の余裕があるからこそ。
いつしか雨も止み、帰りは歩いて戻ることに。切れ間を感じさせない分厚い雲、夏だというのに若干の肌寒さすら感じさせる風。7度目にして知る、また新たな石垣島。こうして段々と、僕の中での石垣が蓄積され厚みを持ってゆく。
まだ歩いたこのとない道を行こうと、海に沿って進んでゆくことに。高い堤防に登ってみると、海に浮かべられたいくつもの生け簀。ここでは、ミーバイと呼ばれるハタなどの魚を養殖しているそう。
途中いい感じの物件を見つけ、いくらくらいするんだろうと話しつつ歩く石垣の街。やっぱり、いつかは・・・。そんな妄想に耽っていると、耳へと届く空を切る音。見上げてみれば、曇天の下旋回し上昇する飛行機。明日は僕らも、機上の人か。
曇天と飛び立つ旅客機にほんの少しばかりの切なさを感じつつ、ゆっくり歩いてホテルに帰還。真栄里から歩いてきたというのに、全く汗を掻いていない。また新たな石垣の表情を肌に感じ、この体験もこの夏の新鮮な想い出に。
ホテルでのんびりとした時間を過ごし、頃合いをみて夕飯を食べに出ることに。石垣での最後の晩餐にと選んだのは、『石垣牛MARU』。こちらのお店も予約必須、相方さんが頑張って取ってくれました。
まずは冷たいオリオンで乾杯し、お肉が来るまでカクテキつまみにグイっと。生すぎず浸かりすぎずのちょうど良い塩梅の大根。しっかりと絡む辛味と旨味が、食欲を刺激します。
程なくして、お待ちかねのお肉が到着。本日の赤身として供されていたランプは、見ての通りの見事なサシ。さっと焼いて口へと運べば、するりとほどける柔らかさ。その過程で赤身の旨味と脂の甘味がぶわっと広がり、上品でいながら濃い旨さはさすが石垣牛のひと言。
厚めに切られたハラミは凝縮感がものすごく、より強く感じる肉の旨味が印象的。本当においしいハラミって、ある意味カルビやロースといった王道の部位を越えてくる。
続いて注文したツラミは味噌だれで。石垣島で出逢い、すっかりお気に入りの部位となったほほ肉。噛み応えはありますが薄く切られているため気にならず、良く動かす部分のためギュッと詰まった濃い旨味を味わえます。
そして印象的だったのが、独特の味噌だれ。少々甘めに調えられた濃い味噌だれは、焼けば香ばしさをまとい絶妙なおいしさに。案の定、ビールをおかわりしてしまいます。
この旨い味噌だれで食べたい!と頼んだテッチャンとミノ。豊かな甘さの脂をたっぷりと抱いたテッチャン。含んだ瞬間すっと溶けてしまう上品さは、石垣牛だからなせる技。ミノは豪州産ですが、サクッとした心地よい歯触りとじんわりとした旨味が美味。
その下のお肉は、サービスでいただいたアゴタン。タン下とも呼ばれる部位は、タンよりもしっかりとした歯ごたえ。よく噛めば肉の味わいとタンらしい脂の甘さが広がり、お肉とタンのハイブリッドといった感覚。
石垣牛の上品な旨味と甘めの味噌だれに誘われ、ビールのお替りを止めてご飯に切り替え。最後に頼んだモモも柔らかく、より強い赤身の旨味がご飯との相性バッチリ。最近のお腹事情に鑑み我慢しましたが、大ライスいきたかった・・・。
開店と同時の17時に予約していたため、たっぷり焼肉を味わってもまだまだ18時台。このままホテルへと戻るには少し寂しい最後の夜、ユーグレナモールでお土産屋さんを見て回ります。
滞在中幾度となく通ったこの道も、こうして食後の余韻に浸りつつ歩けるのは今宵が最後。8泊9日、あっという間だったな・・・。そう思えてしまうこと自体が、この島での時間が豊かであったという揺るぎない証。
ホテルへと戻り、与那国片手に過ごす夕刻。今日一日ずっと空を覆っていた雲にも切れ間が見え、その隙間からは得も言われぬ美しい色に染まる夕暮れの空が。
滞在中、何度も眺めたこの景色。明日も明後日も、夜の街の賑わいは変わらずに続いていく。そこからぽつんと、ただ僕らが居なくなるだけ。
今年はいつも以上に長く居た分、すっかりここでの時間に溶かされてしまった。明日には愛するこの地を離れることが、寂しいを通り越して嘘のように感じられてくる。この島で過ごせる最後の夜を、夜風の運ぶ賑やかな声に耳を傾けじっくりと深く噛みしめるのでした。
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