青に抱かれ見果てぬ夢を。~ブルートレインで北へ 6日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

青に抱かれ見果てぬ夢を。~ブルートレインで北へ 6日目 ③~

札幌北海道庁赤れんが庁舎 旅行記

札幌滞在も残りわずか。北海道の土を踏めるのも少しの時間を残すのみとなりました。大通公園から駅へと向かう途中、やはり札幌へ来たら外せない赤レンガ庁舎に立ち寄ることに。

緻密に積まれた重厚な色彩の赤レンガと、窓上に輝く赤い五陵星が印象的な、明治生まれの北海道の顔。写真を撮る修学旅行生の姿は、まるで15年前の僕そのもの。

初めての札幌、そして初めて目にする赤レンガ庁舎。瞳を輝かせシャッターを切ったあの日が昨日のよう。そんな僕も含め、長きに渡り道民を始め様々な人々に愛され続けてきた歴史が、その渋い中にも気品を感じさせるスタイルから滲み出てきます。

札幌赤れんが庁舎美しい階段ホール

重たい扉を開けて中へと入ると、外観同様アーチの多用された美しい階段ホールがお出迎え。時刻はちょうど西日の時間、窓から射し込む日差しがより一層その重厚さを強いものとします。

札幌赤レンガ庁舎重厚な内装

壁から天井、手すりに至るまで、細部に渡り装飾が施された内装。この時代の建物は、外見の立派さだけではなく、中身の美しさにまでこだわり、手を掛けて造られている。

現代では失われ、再び手にすることは不可能となってしまった美意識が、近代以前の建物には詰まっています。

札幌赤煉瓦庁舎木目の美しい重厚な木のドア

美しく鈍い輝きを映す木の扉。木が生まれ持った自身の木目自体が装飾であるかのように、自然の美しさをそのままに表しています。

合板や化粧版が当たり前になった今、これほど立派な木材で扉を作るなどできるのでしょうか。この贅沢な造りに思わず息を呑みます。

西日に輝く札幌赤れんが庁舎

西日のまぶしい光が溢れる赤レンガ庁舎内。展示物や美しい内装を思うまま堪能し、再び駅方向へ向かうこととします。

去り際にもう一度振り返る、北海道庁旧本庁舎。後ろに控える大きな現庁舎に決して負けることなく、放つ存在感はむしろそれ以上。赤れんが庁舎は、こうしていつまでも札幌へ来る人を迎え続けることでしょう。

北海道、ありがとう。必ずまた来ます。幾度となく繰り返してきたこの約束を、赤れんがに向かい心の奥で唱えるのでした。

白亜の壁がきれいな札幌時計台

札幌を発つまで1時間を切り、最後の北海道の顔へと向かいます。駅からほど近いビル群の間に建つ、札幌時計台。白亜の壁には、北海道のシンボル五陵星が誇らしげに輝きます。

札幌時計台演舞場内部

時計台といえば、日本三大がっかり、と嬉しくない表現をされることもしばしば。確かに、初めて修学旅行で訪れた時には僕もそう思ったものです。が、今回初めて館内を見学し、その印象はガラッと変わりました。

明治初期に札幌農学校の演舞場として建てられたこの時計台。周辺一帯は農学校の施設が点在していたようで、この建物は体育館や講堂として現北大の場所に学校が移転するまで活用されていたそう。

館内にはその当時の写真がたくさん展示されており、その姿を見ても今の札幌駅周辺を想像することは全くできません。

それほど街が生まれ変わり続ける中で、この時計台といい、赤れんが庁舎といい、古い建物が大切に守られ続けている。特に時計台は元の場所から移転してまで使い続けられている。

今や日本有数の大都市となった札幌は、開拓以来の札幌らしさを捨てずに守り続けている。だからこそ、北の都として唯一無二の存在感と魅力を放ち、われらの心を掴み続けるのでしょう。

午後の光に包まれた静かな講堂に響く、時計の刻むリズム。ここだけは時が止まっているようでもあり、延々と続くこのリズムが札幌の街を育ててきたようでもある。

高いビルに囲まれてもなお、止まることなく生き続けるその姿に、僕は敬意を表したい。時計台が小さいのではなく、札幌の街が成長した。ただ、それだけのこと。もう三大がっかりとは言わせません。

初夏の札幌駅

道南の限られたエリアに縁があった僕にとって、札幌は高校になってから訪れ始めた街。まだまだ知らない魅力がたくさん詰まっているだろうこの街に未練を残しつつ、もう駅に戻らなければならない時間に。

札幌駅寝台特急北斗星上野行きの行先表示

構内のお土産屋さんで最後の買い物を済ませて改札へ向かうと、既に寝台特急北斗星上野行きの文字が。

上野駅。旅先で見るこの文字に何度寂しさを覚えたことでしょう。僕の安息の地、東北・北海道から僕を連れ戻す、東京の北の玄関口。最近では、ここが本当に自分の帰るべき場所なのか?そんなことまで頭をよぎるように。

と、恒例になった帰り際の憂鬱をいつまでも引きずっているわけにはいきません。今回は一世一代の大チャンス!あこがれ続けて約四半世紀。あの北斗星の花形に、とうとう乗車する機会が。

大げさではなく、これが最初で最後となるであろう幸せな時間を目前にし、胸の鼓動は次第に高鳴るのでした。

青に抱かれ見果てぬ夢を~ブルートレインで北へ~
寝台特急北斗星ワイン片手にロイヤルで過ごす贅沢なひととき
2012.6 青森/北海道
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