青に抱かれ見果てぬ夢を。~ブルートレインで北へ 1日目~ | 旅は未知連れ酔わな酒

青に抱かれ見果てぬ夢を。~ブルートレインで北へ 1日目~

東京駅北の玄関口上野駅 旅グルメ

上野。これまで数え切れないほどの人々を迎え、そして送り出してきた、東京の北の玄関口。そんな旅立ちの聖地ともいえるこの場所が、今回の旅の出発点。

上野駅というと、どうしても感じてしまう哀愁。長い歴史の中で蓄積された人々の想いがこの駅に詰まっているようで、東京駅や新宿駅といった他の東京のターミナルにはない独特な雰囲気が立ち込めています。

今日は僕もそんな駅から旅立つ旅人のひとり。この駅からの旅立ちには、他には代えがたい情緒が溢れています。

引退間近の651系スーパーひたち

京浜東北線から地上ホームへ降りると、引退間近となってしまったスーパーひたちの車両が発車を待っていました。

僕がまだ小学校低学年の頃、JR民営化後初の新型特急として華々しくデビューしたこの車両。タキシードボディーと呼ばれる明るい色調と斬新な形の車両が130km/hという速さで疾走する姿には、新時代の到来を感じさせるものがありました。

そんなこの車両もまもなく引退。そりゃ僕もおじさんになるよな・・・。そんなことをしみじみ実感してしまう。最近やたらとそんな瞬間が増えてきたように感じます。

上野駅改札内そばいろり庵

乗車予定の列車の入線はまだまだ先。まずは改札近くに位置する『いろり庵』で晩酌することに。

前回あけぼのに乗ったときにも立ち寄った『いろり庵』。おそばのほかにおつまみメニューも充実し、地酒も東日本エリアの数々のものが揃っており、のんべぇ旅行者にはうってつけのお店。

ここでわさび菜のお浸しや白菜の麹漬けをつまみに、ちびりちびり。その時間が楽しくもあり、じれったくもある。それほどまでに心はすでに旅模様で一杯になっているのでした。

上野駅13番線あけぼの号青森行き表示

じっくり、のんびりお酒を楽しんでいるといよいよいい時間に。数々の東北方面の列車を発着させてきた上野駅の歴史あるホーム、13番線へと向かいます。

ホームの表示には、すでにあけぼの青森行きの文字が。かつて当たり前だっただろう青森という行先も、今はこのあけぼの号が細々と掲げるのみ。時代の流れとはいかに速く無常なものか。改めてそう思わされます。

上野駅あけぼの号入線

程なくしてあけぼの号がゆっくりと入線。夜行列車の入線には、新幹線やただの特急には醸し出せない「旅情」そのものが詰まっています。

こんな旅情を味わえるのも、もう僅かかもしれません。その瞬間が来ても後悔しないよう、ここは旅情にどっぷりと浸かってやることにします。

寝台特急あけぼの号牽引EF64

あけぼの号は入線から発車まで時間に余裕があるため、夜行列車の勇姿をじっくり楽しむことができます。

まずは先頭の機関車。国鉄譲りの無骨な機関車に掲げられた重厚なヘッドマーク。特急列車の幕やLEDには出せない威厳が漂います。北斗星やカシオペアの機関車が新型になった今、国鉄をぷんぷん匂わせるこの光景を見ることが出来るのも、このあけぼの号のみ。

国鉄型客車24系25型あけぼの号青森行き方向幕

古いながらも手入れされ、鈍く輝くボディーに光る青森の文字。はくつる、ゆうづると、東北路を彩った夜行列車の主役たちが逝ってしまった今、その伝統を受け継ぐかのように、あけぼの号は誇らしげにその行先を掲げます。

国鉄型客車24系25形の輝くボディー

ホームの灯りを柔らかく映す紺碧のボディー。寝台特急日本海が臨時化されてしまった現在、純粋なブルートレインと呼べるのはこのあけぼのと北斗星だけとなってしまいました。

僕の中で夜行列車、寝台特急といったらやっぱりこの色。夜の帳とも、夜明け前の空とも感じられる深いこの青色に、今宵の夢を重ねてひとり心を躍らせるのでした。

寝台特急あけぼの号ゴロンとシートステッカー

北海道へ行く際によく使っていたフリーきっぷは廃止されてしまったため、今回は周遊きっぷを使うことに(廃止)。札幌・道南ゾーン券は今年の大幅削減を逃れた、残り少ない周遊きっぷのひとつ。

周遊きっぷは往復で違う経路を選択でき、それぞれ2割引されるのが嬉しいところ。いつもならダイレクトに北海道へ渡るところを、今回のように青森で滞在してから、という欲張りな行程も可能にしてくれます。

これまでフリーきっぷ利用で乗車できる列車や等級が限られていましたが、今回は本当に自由。ということで、往路は指定席特急券のみで乗車できるゴロンとシートを利用しお安く青森入りすることに。

国鉄型客車24系25形開放B寝台

指定席特急券のみといっても、サンライズののびのび座席のように簡素なものではなく、設備としては普通のB寝台となんら変わりありません。

違うのは、毛布や枕、浴衣といったリネンとスリッパが付いていないのみ。寝心地は全く劣ることなく、これで特急券のみでOKというのは嬉しすぎます。

人によってはリネンやスリッパが無いことが不便に思うかもしれませんが、枕は着替えを詰めた荷物を代わりにすれば良いですし、肌掛けは自分の着ている上着を掛ければ問題なし。

真冬に心配される寒さも、今まで客車寝台列車に乗車した経験上言えば、冬は暑すぎるほど暖房が効く傾向があり、それほど心配する必要もありません。真冬に北へ向かうのですからもちろんアウターを着ているはず。もし寒ければそのアウターを掛ければバッチリ。

ということで、僕はこのゴロンとシートが大好き。この安さでしっかり横になれる快適さ。寝台券が必要となると手が出にくい値段も、これなら新幹線を使うより大幅に安く青森まで移動できます。気軽に手軽に夜行列車の旅を味わいたいなら、絶対にお勧めです。

国鉄型客車24系25形開放B寝台下段

今や鍵の掛かる個室寝台がスタンダードとなった時代。そんな中でこの昔ながらの2段寝台は見劣りするかもしれませんが、カーテンを閉めてしまえばプライバシーはきっちり守られます。

そしてこのこじんまりとした程よいサイズの自分だけの空間。この場所が、今夜限りの明日へのゆりかごとなるのです。これは個室寝台では決して味わえない、古くから連綿と続く寝台列車の正しい姿。夜行列車の持つ旅情という点では、これに勝るものはありません。

寝台特急あけぼの号車内でプレミアムモルツ

線路に対して直角に配置された寝台の区画の横に通路が通っており、そこの壁には折りたたみ式の椅子が備えられています。

自席に座ってくつろぐ人、その椅子に座ってぼんやりする人。乗客一人ひとりがこれからの長い道のりを思い思いの場所で過ごす。開放式寝台にはそんな長閑で自由な空気が流れています。

そんな中、僕の開放寝台でのスタイルはこの形。カーテンの両端はフックで固定されて動かないようになっていますが、その端のフックのみを外して窓側のカーテンを開けます。そうすれば、通路から見られることなく流れ行く車窓を楽しめ、中央に備えられたテーブルも自由に使うことができます。

高校生のときに初めて下段寝台に乗ったときに編み出した(と思ってるだけ。)のこの技。外から見ると意外にもやっている人がいないので、我ながらいい方法を思いついたものだと自画自賛。

程なくし、列車は客車特有のゴトンという小気味良い衝動と共に、上野駅を音も無く滑り出します。

客車独特の静けさの中に響く、鋼の刻むリズム。それをつまみにプレミアムモルツをグイッと。流れ行く東京の夜景を眺めれば、東京に詰まった日常の全てさえ流れ去ってしまうよう。夜行列車での旅立ちでしか味わえないこの感覚を、五感をフルに使って愉しみます。

いつもならこの先も飲んだくれ写真が続くところですが、2本目に開けたビールの大半を残したまま、気が付いたらバタンキュー。もう関東脱出した後でした。

今回は弘前までのんびり時間があったので越後湯沢までは起きているつもりでしたが、体は正直。大きな青いゆりかごに揺られ、その心地よさに抗うことは出来ませんでした。

といっても、寝台特急の文字通り、寝台の良さは横になって熟睡して初めて分かるというもの。残りのビールを一気に飲み干し、夜のその先にある未知なる旅路への期待を胸に、揺られるままに眠りへの世界へと落ちてゆくのでした。

青に抱かれ見果てぬ夢を~ブルートレインで北へ~
寝台特急北斗星ワイン片手にロイヤルで過ごす贅沢なひととき
2012.6 青森/北海道
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