あけぼの号は定刻に弘前駅に到着。一晩頑張って走ったあけぼの号が津軽三味線のメロディーに送り出される姿を見届け駅を出ます。
青空の下のんびり市街地を歩き、弘前城を目指します。思っていた以上に街の規模が大きく、城下町として古くから栄えてきた歴史を感じさせます。
時刻はまだ10時前。こんな早い時間から余裕を持って観光できる。これも夜行列車の醍醐味のひとつです。
駅からのんびり歩くこと約30分、弘前城跡に到着。重厚な佇まいを見せる追手門より公園内へと入ります。
初夏の鮮やかな緑の溢れる公園内。若緑と赤い橋、抜けるような青空のコントラストが非常に爽やかで心地いい。
そして目を引くのが屋台のアイス売り。弘前アイス組合なるものがあるようで、園内に点在する屋台は全てその看板を掲げ、100円均一価格になっていました。初めて見る光景に興味津々。
弘前城といえばここ、という光景である赤い下乗橋と天守。桜の青々とした葉っぱがとても眩しく、ここに居るだけで清々しい気分にさせてくれます。
お堀沿いに延々と続く桜並木。満開の時期はまた格別なことでしょう。混雑覚悟で今度はその時期に来てみたいものです。
南北に伸びる公園内をぶらり散策し、北門より外へと出ます。その向かいには歴史のありそうな建物が。お酒やお土産などを売っているお店で、中の見学もできるそう。時間があれば寄ってみたかった。これは次回の宿題です。
弘前城跡北側の向かいに位置する、『津軽藩ねぷた村』。ねぷたの展示や生の津軽三味線、お土産や食事どころと、津軽の魅力をギュッと集めたような施設で、弘前城跡と共に楽しみにしていた目的地のひとつです。中から聞こえる笛太鼓の音に早くも心が躍ります。
暗い館内に入ると、明かりが灯された大小様々なねぷたがお出迎え。その迫力と美しさに息を呑みます。
ねぷたというとこのような人型を思い浮かべますが、それは青森のねぶたのほうがメインだとのこと。弘前のねぷたはこのタイプより扇型がメインだそう。
扇型の立派なねぷたには表裏があるそうで、表面は鏡絵といわれるこの勇ましい絵。三国志や水滸伝等をモチーフにして描かれることが多いそうで、津軽の短い夏の到来を意味するそう。今にもねぷたから飛び出してきそうなほど勢いが伝わり、まさに圧巻のひと言。
そして裏面は見送り絵と呼ばれる美人画。これは短い夏を見送る、という意味があるそう。
雪に閉ざされた長い冬を終え、短い夏の到来に一気に溢れる津軽の人々の情熱。それが静動を表裏一体に表したこの扇ねぷたに詰まっているかのようで、見る者の胸を熱くします。
実演されている太鼓や笛、鉦のお囃子と、ヤーヤドーという威勢の良い掛け声ががより一層感情を高ぶらせ、自分の持っている知らない何かが呼び起こされるかのよう。これはもう本当のお祭りに来るしかない。いつかその日が訪れることを強く願うのでした。
ひらひらと愛くるしい金魚ねぷた。津軽錦という縁起の良い金魚をモチーフに作られた小さいねぷたで、ちっちゃい子供が手に持って練り歩くのだそう。老若男女、みんなが参加するねぷた祭り。この地方の人々には欠かせない、郷土の誇りなのでしょう。
こちらが扇ねぷたの内部。木で組まれたねぷたは、中に入ってみるとより一層その大きさを実感することができます。
ビル2階分もあるような大きさのねぷた。そういえば、ここへくる途中にもねぷたを組むための作業場が作られており、何ヶ月も時間を掛けて準備をするほど、このお祭りに掛ける思いというものが伝わってくるよう。
こちらは古典ねぷた、今のスタイルになる前の古い形のねぷただそう。灯篭のようなものや鳥籠を模したようなものなど、様々な形のねぷたがあり、見ていて飽きることがありません。
こちらは子供用のねぷたで、先ほどの金魚ねぷたの他に丸や四角の小さめなねぷたが並んでいます。年齢や性別により、持つねぷたが決まっているそう。小さい頃からこんなお祭りに参加すれば、きっと無くてはならないものになるのでしょう。
ずらっと並ぶ様々な絵が描かれたねぷたたち。それぞれ違う絵師の方が描いたもので、ひとつひとつタッチや表情が全て違う。是非お祭り本番で迫力に包まれながら、色々なねぷたを見比べてみたいものです。
津軽の人々の情熱が詰まったねぷたに感動し、興奮冷めやらぬまま津軽三味線の生演奏会場へ。こちらの山絃堂では、約1時間に1回程度の頻度で津軽三味線を生で聞かせてくれます。
本当の生で津軽三味線を聴くのはこれが初めて。演奏が始まると、想像を超えるほどの弦の振動がお腹へと伝わってきます。
三味線というと弦を弾く楽器ですが、この津軽三味線はバチを打ち付けんばかりに弦を弾く力強さ。そのバチを打つ音までもが楽器のようで、魂を揺さぶる何かが三味線から溢れてきます。
僕は何故か昔から津軽三味線だけは好きで、テレビで流れると無意識のうちに聴いていました。普通の三味線のように湿っぽいのは好きではありませんが、津軽三味線は弾き方から旋律まで違う。その情熱に溢れた演奏を生で聴くことができて本当に良かった。
津軽の人は情熱家なのでしょうか。ねぷたといい、津軽三味線といい、魂を揺さぶる力強さに溢れている。その迫力に圧倒され、思わず胸が熱くなる。初めての弘前で、津軽を思う存分体感するのでした。
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