宮古島で迎える初めての朝。カーテンから漏れる明るさに目が覚め外を見てみれば、雲は多いながらこの青さ。この島は、これから一体どんな色彩を魅せてくれるのだろう。そう考えるだけで、ビーチでの時間が待ち遠しくなってくる。

今回は、お財布と相談して素泊まりプランを予約。ちなみに前回7泊した石垣と今回の宮古4泊、栄一さん一人分くらいしか変わらない。6月と10月という時期の差もあるかもしれませんが、宮古島の需要ってすごいんだな。
ということで、昨晩のうちに近くのファミリーマートで買った品で朝ごはん。石垣でも見かけていたポーク玉子おむすびを初購入。いろいろな具があるなかで、今回はオーソドックスな油みそを食べてみることに。ふんわり玉子にポークの塩気、コクのある油みそが一体となり食べ応えのあるおいしさ。
そして驚いたのが、カップに入った朝すば。麺とスープの上に小ねぎと紅しょうががちょんと添えられ、お湯を注いで混ぜるだけで完成。ゼラチンで固めたスープが使われているからか、ひと口含むと思わずおぉっと声が漏れるような本格派。
つづいて麺を啜れば、しっかりと小麦を感じる平打ち縮れ。チルドで賞味期限が長めですがのびたような感じもなく、想像をはるかに超える完成された一杯に唸ってしまう。

コンビニとは思えない沖縄感満点の朝食に満たされ、屋上に設けられたテラスへ風を浴びにゆくことに。

それにしても、こうして眺めてみると本当に平たい。於茂登やバンナ、前勢といった山が並ぶ石垣島に慣れているからか、この山のなさには驚いてしまう。

視界を西方向へと移せば、かつては港から船で渡っていた離島の伊良部島。2015年に海上に架かる伊良部大橋が開通し、現在は車で簡単に行き来できるように。

その伊良部島航路が発着していた平良港。現在も多良間島航路のほか、島への物資を運ぶ貨物船やクルーズ船が就航する宮古島の海の玄関口としての役割を担っています。

屋上テラスから宮古島をぐるりと展望したところで、そろそろレンタカー屋さんのお迎えの時間。島内のバスは路線が少なく本数もあまりないため、今回は最終日まで車で移動することに。

さとうきび畑が延々とつづく車窓にこれが宮古島かと感嘆の声を漏らしつつ、この旅最初の目的地である与那覇前浜へ。ナビの設定がいまいち分からず、たどり着いたのは岸壁。あれ?と疑問に思いつつ、そんなことより網膜を灼く宮古ブルーに眼もこころも釘付けに。

後から調べてみると、ここは橋が架かる前まで対岸の来間島への航路が発着していた港だそう。左手には鮮烈な青い海に架かる来間大橋、右手には東洋一と称される与那覇前浜。意図せず訪れたここ来間前浜港が、僕にとって初めての宮古ブルーとの出逢いの地に。

人工物と、天然の青さの鮮烈な対比。宮古ブルーの非日常感を一層引きたてる情景にこころ奪われ、逸る気持ちを抑えつつ西側にあるビーチの駐車場へ。シャツを脱ぎ荷物を持って浜へと向かえば、慣れ親しんだ八重山とは雰囲気を異にする絶景が。

45年生きてきて、初めて目にする種類の青。これが、人々を魅了する宮古ブルーというものなのか。あまりの質量をもって押し寄せる鮮烈さに、この青さに出逢えただけでも宮古まで来てよかったと思えてくる。

宮古には河川がないからとは聞いていたが、この透明度には度肝を抜かれる。これまで写真や映像で見てきたものなんて、所詮レンズを通した光の記録。こうして肉眼で対峙してみて、みんなの言っている本当の意味がはじめて解る。

僕が八重山の海を表現するとき、敢えて平仮名のあおを使うようにしている。それは青、碧、蒼とさまざまなグラデーションにより成り立っているから。
言うならば、八重山はエメラルドが溶け込んだような温かいあおさ。それに対し、宮古は鮮烈さにあふれる青の層。この違いを体感できただけでも、この旅を決行した甲斐があった。

この鮮やかな青さをつくるのは、抜群の透明度を誇る海とこの白い砂。これまで経験したことのないきめの細かさで、島ぞうりを脱ぎ捨て裸足で歩きたいと思える感触にこれまた驚き。

からっとした涼しい風、適度に肌を灼く太陽の心地よさ。旅立ち直前まで、ころころ変わる天気予報に一喜一憂。でもまさか、こんな全力の青さで迎えてくれるなんて。今年も残すところ2ヶ月ちょっとだというのに、肌もこころも夏へと逆戻り。

敢えてこの時期を選んだというのに、季節外れの台風30号。無事に来ることができて、本当によかった。そんな幸運を噛みしめつつ、着陸する飛行機を見送ります。

海は思ったよりも冷たくなく、風は涼しいものの太陽を浴びれば寒くもない。10月下旬でも、天候に恵まれれば十分に夏だな。いや、夏本番より過ごしやすいからある意味危険。はやくも変化をはじめた肌色にふと我に返り、名残惜しくもそろそろビーチを去ることに。

はじめての宮古の海を体感させてくれた与那覇前浜ビーチに別れを告げ、対岸の来間島へと行ってみることに。

1995年に開通した来間大橋。北側にはうつくしい与那覇前浜、南側には濃淡の青さを湛える大海原。こんなロケーションを車で渡るという、非日常。人生初の体験に、年甲斐もなくはしゃいでしまう。

橋上からでも海底が透けて見えるほどの透明な海に感動しきり、いよいよ来間島に初上陸。船で渡る八重山に慣れているせいか、地続きというこの感覚はなんとも不思議。

海原に架かる1,690mの橋を渡り切り島へと入ると、道はぐいっと登り坂。そのまま集落へと進んでゆき、ビーチからも見えていた竜宮城展望台に到着。

階段で2階にのぼれば、目に飛び込むこの光景。コンクリートで切り取られた、目の覚めるような宮古ブルー。陰と陽、額装されたような鮮烈な対比に思わず息を呑む。

さらにひとつ上の最上階からは、遮るもののないこの展望。いま渡ってきた来間大橋に、さきほどまで波と戯れていた与那覇前浜のうつくしいビーチ。こうして俯瞰すると、その青さがより一層感じられる。

それにしても、対岸に横たわる宮古島の平たさよ。同じく珊瑚礁が隆起してできた八重山とは、まったく違う表情をしている。これは地表に川がないというのも頷ける。

さらに北側に目をやれば、ありえない色彩の海に浮かぶ伊良部島。これが、みんなの言う宮古ブルーなのか。この鮮やかさを目の当たりにすれば、それは忘れることなどできなくなるな。

海岸線は崖に囲まれ、平らな頂上に集落や畑がひろがる来間島。すぐ隣の宮古とはまったく異なる雰囲気に、橋でつながっているとはいえやはり別の島なのだと実感。

周囲9㎞のこの島には、現在は150人ほどが暮らしているそう。こうしてぐるりと眺めてみると、この集落に民家が密集しそれ以外は畑が広がっていることがわかります。

爽快な海風と眺望を全身に浴び、その鮮烈さを眼にこころに灼きつけたところでそろそろ車に戻ることに。その前に、2階からもう一度だけ与那覇前浜の海を。砂の白さがもたらす青の数々、その豊かな色味は総天然色とは思えない。

時刻はちょうどお昼どき。海で遊んでがっつりお腹もすいたので、宮古島へと戻りお昼を食べることに。

来間大橋を渡り切ってすぐ、鋭角に右折すればお目当ての『蜃気楼』に到着。ここはどうやら、観光客というより地元の方に人気だそう。ほぼ看板もないような店構えに、自ずと期待が高まります。

メニューを見ると、ここは喫茶店のよう。それらしいソファー席に座りつつ、本格的な厨房やカウンター席にお座敷と地元感あふれる雰囲気のなか待つことしばし、お待ちかねの宮古そばが到着。
まずは、澄んだ琥珀色をしたおつゆをひと口。おぉ、これが宮古そばというものなのか。すっきりとしたかつおだし、でも内地のお吸い物とは雰囲気を異にする厚みのある味わい。しょっぱなから、慣れ親しんだ八重山そばとの違いに驚かされる。
つづいて麺を。それほど太くない平打ち麺は縮れがなく、どちらかといえば本島より八重山寄りといった見た目。興味津々で啜ってみると、つるりとした食感ながらしっかりと小麦を感じるコシと風味。本島と八重山のちょうど中間、それが僕の宮古そばの第一印象。
麺とおつゆの好相性に思わずわしわし食べたくなりますが、ここで具の三枚肉を。うわっ、なにこれ、旨っ!
一見するとラフテーのようにも見えますが、その味付けは極めて上品。必要十分の味付けが豚の赤身の旨味と白身の甘味を引きたて、皮もぷるんぷるんで堪らぬ旨さ。これなら、おだやかなだしの味も損ねない。
さらに、宮古で一般的だという波型が特徴的な平かまぼこを。ぷりんとした白身ならではの心地よい弾力、クセのないじんわりとした魚の滋味。かまぼこまでも、八重山とは違うのか。
旨い旨いと啜りつつ、途中でコーレーグースを加えてみる。するとやっぱり、まったく違う味わいへと昇華。すっきりとやさしいおだしに、ふわっと香る泡盛と島とうがらしの潔い辛味。手繰る箸はさらに速度を増し、あっという間におつゆ一滴残さず平らげます。
この一杯で、どれほどの新鮮さを浴びただろう。海を隔てて100㎞。その距離が、これほどまでに違いを生むのか。本当に、八重山そばとはまったく別の食べ物だ。これは甲乙つけがたい。琉球のそば文化の懐の深さに触れ、舌でも宮古島の解像度が一段階上がるのを実感するのでした。



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