米原ビーチでのあおい時間もあっという間に過ぎ、もう帰らなければならない時刻。バスが来るまでの少しの間、独特なテイストのオブジェが目を引く米子焼の工房へ行ってみることに。
石垣島のお土産屋さんには、必ずと言っていいほど売っている米子焼のシーサー。ここがその工房のようで、裏手には巨大な敷地に大きなオブジェたちが点在する農園も。
独特な世界観に別れを告げ、『東運輸』の米原キャンプ場線に乗り込みます。車窓に流れるのは、風を受けさらさらと葉を揺らすさとうきびと、青く横たわる雄大な海。8日間慣れ親しんだこんな光景とも、もうすぐお別れ。
バスは於茂登トンネルを抜け、空港目指して坂を下ります。その途中、車窓に現れる大きな人造湖。この底原ダムは農業用水確保のために造られ、石垣の暮らしを潤しています。
今年最後の石垣島での車窓を愉しんでいると、ついに空港の姿が。もう本当に、帰るんだなぁ。そんな実感が、バスが進むごとに心を占めてゆく。
そしてついに、バスは南ぬ島石垣空港に到着。行きはよいよい、帰りは切ない。7日前、この場所に浮足立って降り立ったことがつい昨日のことのよう。今回も、本当に良い時間を過ごさせてもらったな。
シーサー君、2年ぶりに本当の夏を味わわせてくれてありがとう。去年来ることができなかった分まで、今年は楽しませてもらいました。また、来年ね。絶対に、帰ってきます。
展望デッキへと上り、肉眼で眺める今年最後の石垣のあおさを。遠くには、二層のあおさに輝く海。こんな贅沢な場所に、8日間も居られたなんて。本当に、居るだけで幸せ。そう思える場所など、なかなか出逢えるものではない。
色を失った夏をやり過ごした去年とは打って変わって、今年は本当の夏に再会できた。青い空に、碧い海。絵に描いたような夏景色を見られるのも、今年はこれが最後。思い残すことのないようしっかりとこの眼で見据え、その輝きを胸へと納めます。
最後にお土産を買い、意を決して保安検査場を通ります。一昨年とは大違い、多くの人々で賑わう待合ロビー。前回のひっそりとした八重山も貴重な体験だったけれど、観光業が重要な産業であるこの島のことを考えると、やっぱり賑やかな方が良いに違いない。
後ろ髪を引かれつつ、羽田行きの機内へと乗り込みます。ベルトを締めて待つことしばし、飛行機はトーイングカーに押されてゆっくり転回。あぁ、離れてしまった。あとはもう、飛び立つのみ。
飛行機はゆっくりと進み、ついに滑走路の始点へと到達。機窓には海が横たわり、この島での最後の美しさを魅せてくれているかのよう。そう思ったのも束の間、エンジンは出力を増し滑走路を始動。
787型機はどんどんと速度を増し、ターミナルが見えたと思ったその瞬間ついに空へとむけて離陸。本当に、離れてしまった。飛行機越しとはいえ繋がっていたのに、大好きな石垣島と本当に離れてしまった。
機首を上げ、上昇を続ける飛行機。機体が傾いたかと思えば器用に旋回し、機窓には美しい珊瑚礁の姿が。
針路を北へととるため、そのまま大きく旋回を続ける飛行機。眼下には海原と珊瑚礁、ふたつのあおさに囲まれ佇む石垣島。6年前、この島を初めて目にしたときの感動を忘れない。この島は、珊瑚に守られた宝島。
この旅の想い出をなぞるかのように、石垣島に寄り添って飛ぶ787。この瞬間は、何度味わっても切なすぎる。先ほどまでこの足で立っていたあの島を、手の届かぬ遥か上空からただ眺めることしかできない。
そしてついに平久保崎が現れ、石垣島ともお別れのとき。切ない。この上なく切ない。あまりにも愉しく、あまりにも幸せな時間だったからこそ、この切なさを今はただ甘受するよりほかはない。
2年ぶりに出逢えた、本当の夏。訪れるごとに感動をくれる八重山は、今年も僕を迎えてくれた。
梅雨の名残りのパステルから、輝くあおさに漲る全力の夏へ。2年ぶりとなった6度目の八重山は、また新しい表情を僕へと魅せてくれた。
使い古された言葉だけれど、僕の人生観を変えてくれた八重山の地。一瞬にして自分の中の南国属性に気付いてしまった僕は、その後毎年訪れる日を首を長くして待つほどまでに。
去年は来ることができなかったからこそ、この地で過ごす時間の大切さが身に沁みる。8日間という時間の中でもらったあおさをこころに灯し、また次へと繋げるために頑張ろう。そう前向きに思わせてくれる八重山とまた逢える日を、青く染まる大空へ強く強く願うのでした。
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