祭りのあと・・・。そんな若干の感傷を胸に抱きつつ迎える、弘前での最後の朝。窓から外を見てみれば、今日も姿を見せてくれている津軽富士。通い続けて8年目。今年は一番きれいだった。この2日間で触れた岩木山の優美な姿は、僕にとっての大事な宝物。
今朝は少々早めの出発。チェックアウトを済ませて外へと出ると、昨夜の賑わいは嘘のように商店街は朝の静けさに包まれています。また、来年ね。僕はもう疑わない。絶対にまた来られる。次回への想いを託し、静かな商店街を歩きます。
ホテルからのんびり歩くこと15分、次なる街への出発点となる弘前駅に到着。7年前、今は亡き寝台特急あけぼの号でこの駅に初めて降り立ったときのことを忘れない。あの旅がなければ、きっとねぷたには出会えていなかった。訪れて、自分の五感で経験してみる。旅という行動の持つ大切な意味を、今一度強く実感します。
今日も朝ごはんは、弘前駅の入口に位置する『そば処こぎん』でとることに。今年最後のあの魅惑の食感を舌に焼き付け、弘前を離れることとします。
今朝は天玉そばを注文。無駄な甘さのないすっきりとした潔さを感じさせる旨いだし、それに優しく旨味とコクを添えるかき揚げと卵。そばは津軽ならではのほろりと崩れる食感で、柔らかいのに伸びているのとはまた違った魅惑のくちどけ。あぁ、旨い。津軽のそばは、唯一無二。初めてこの麺を口にした時の衝撃は、伊勢うどんに通ずるものがあります。
そばはコシがあるもの!なんていう自分の常識の狭さを思い知らされる津軽の味をお腹にしまい込み、いよいよこの地に別れを告げる時間に。入線してきた奥羽本線の普通列車に乗り込み、一路秋田県を目指します。
列車は弘前駅を定刻に出発し、羽後の国へと向け南下します。その前に、もう一度だけ津軽の夏にお別れを。秋の実りに備え全身に夏を浴びる稲の葉に、再訪の誓いを託します。
碇ヶ関を過ぎれば、車窓は一気に山がちに。津軽と羽後を隔てる山塊に、2両編成の小さなローカル線は挑みます。
それにしても、本当に夏だなぁ。旅先での楽しみもさることながら、こんな何気ない車窓を味わうのも僕にとっての旅の醍醐味。目的地を繋ぐ移動も含めて愉しんでこそ、本当の旅。旅情を大切にする僕にとっての、小さなこだわり。
列車は無事に峠を越え、あきたこまちを育てる里へと駆け下ります。そんな車窓に秋田杉の美林が見えれば、この列車の終点はもうすぐ。この旅の第三幕が開いたことを実感します。
弘前からローカル線に揺られること約2時間半、乗り継ぎ地点である秋田駅に到着。お昼を食べるために、ここで一旦途中下車。コンコースでは、巨大な竿灯がお出迎え。宿さえ取れれば、竿灯も見たいなぁ。ねぶたと竿灯は、僕にとっての長年の宿題です。
なぐごはいねが~!わるいごはいねが~!そんな声が聞こえてきそうな巨大ななまはげもコンコースに鎮座。男鹿の出身でなくてよかった。僕だったらきっと死ぬほど泣いてたと思う。なんてちょっと思ったのは内緒です。
対照的に、そのお隣でかわいい表情を浮かべる秋田犬の大きなぬいぐるみ。鼻ぺちゃが大好きな僕ですが、和犬も実は大好き。寒さに耐えるモフモフの毛並みに、つぶらな瞳。秋田犬、大好き!!
コンコースで一通り秋田の顔に触れたところで、駅前の西武百貨店内にある『佐藤養助秋田店』へと向かいます。ちなみに後から知ったのですが、今年駅ビルのトピコにもお店ができたのだそう。乗り継ぎにあまり余裕がない場合は、そちらも便利そうです。
このお店に来るのは2回目。前回とは違うものをと意気込んで入店したものの、結局納豆つけうどんを頼んでしまいました。だって、納豆、好きなんだもん。
まず目を引くのは、つやっつやに輝く美しいうどん。絹のように滑らかでありつつも、強く強く感じるコシ。この独特の食感は稲庭うどんならでは。つるりと啜りしっかり噛めば、小麦の風味や甘さがどんどんと引き出されます。
丁度良い塩梅のうどんつゆに風味と食感を与えてくれるのが、大粒の存在感ある納豆。見た目の通りしっかりとした食感があり、いい意味で豆々しくて納豆臭い。瑞々しいうどんと豆の歯ごたえが、口の中で楽しく踊ります。
いやぁ、旨かった。あっという間に秋田名物を平らげてしまった。他のも食べてみたいけど、また次回もこれかなぁ。納豆好きの麺喰いの心をぎゅっと鷲掴みにされ、大満足で駅へと戻るのでした。
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