盛夏万緑、みちのくへ。~ヤーヤドーに逢いたくて 9日目 ④~

夏の東北夕日に染まる仙台駅

8日間を掛け、今年も辿った東北の夏。祭りの熱さ、いで湯の温もり、そして自然の織り成す美しさ。この旅も、本当に濃厚だった。それが今、終わりを迎える。充足感、達成感に紛れる、ちょっとした感傷。そのスパイスに心を焦がされつつ、夕日に染まる仙台駅へと吸い込まれます。

E2系やまびこ号東京行き
仙台七夕の熱気に包まれる駅構内で最後の買い物を終え、新幹線のホームへ。放送が鳴りしばらくすると、僕を東京へと連れて帰るやまびこ号が入線。これまで何度も、東北旅へと誘ってくれたE2系。愛する地とのしばしの別れに覚悟を決め、慣れ親しんだ車両へと乗り込みます。

E2系やまびこ号東京行き車窓から見送る仙台の電波塔の建つ山と沈む夕日
程なくして、新幹線は東京へと向け定刻通りに出発。仙台の街に別れを告げようと車窓を見れば、電波塔の建つ山に沈む美しい夕日。旅の想い出を照らすように輝くその姿を、目を細めて見つめます。

E2系やまびこ号車内のお供に阿部勘酒造於茂多加男山特別純米酒
カーブを抜け、加速を始める新幹線。遠くなりゆく東北の地での体験を想い出に変えるべく、車内での大切な供を開けることに。塩竈の阿部勘酒造店が作る、於茂多加男山特別純米酒。すっきりさらっと飲みやすい中に、しっかりとお酒らしい風味を感じる美味しいお酒。

E2系やまびこ号車窓から眺める夕暮れの田んぼ
ふと目を外へとやれば、この旅で幾度も目にした真夏の田んぼ。僕の中で、東北の夏とは即ち豊かな田園。心すくような海や山の深さも好きだけれど、勢いある緑溢れる田んぼが一番心に沁みてくる。この贅沢な車窓とも、来年までしばしのお別れ。

E2系やまびこ号車窓から望む奥羽山脈に沈む陽の名残り
暮れゆく空の下疾走するやまびこ号。空は刻一刻と色味を変え、大地はゆっくりと色を消してゆく。その移ろいを飽きもせず見つめていると、胸に宿る夏の熱さも少しずつ醒めてゆく。それは現実に戻されるのではなく、この旅の記憶を刻み心へと積み重ねるための大切な時間。

E2系やまびこ号旅のお供に蒼天伝純米酒
水墨画のように横たわる、幾重にも連なる奥羽の山脈。流れるその姿をぼんやりと眺めているといつしか空は藍に染まり、夜闇の予感が車窓を支配するように。そうなれば、あとは酒と記憶に酔うだけの時間。そのお供にと開けるのは、気仙沼は男山本店の蒼天伝純米酒。程よい酸味と甘みを感じる、すっきり辛口の美味しいお酒。

NRE東北福興弁当
お腹も程よくすいた頃、この旅最後の東北の味を楽しむことに。今回は、NREの調製する東北福興弁当を選んでみました。掛け紙に描かれる祭りの数々、中に詰まる東北各県の味に期待が膨らみます。

NRE東北福興弁当中身
蓋を開ければ、ぎっちりと詰め込まれた東北の幸。このお弁当には中小機構東北という機関が協力しているようで、掛け紙の裏にはお品書きと共に食材を提供した業者の連絡先の一覧が。またひとつ知った新しい応援の仕方に、僕の大好きな東北が一層元気になってくれることを願わずにはいられません。

県ごとに仕切られたマスの数々。まずは左上の青森県から。キャベツ炒めには清水森ナンバを用いた味噌が使われ、コクある味噌の旨味の中にピリリと感じる南蛮の刺激が食欲をそそります。青森といえばのほたては生姜味噌煮にされ、ぎゅっと詰まった旨味がご飯にもお酒にもピッタリ。

続いて下の秋田県へ。ジューシーなふろふき大根には県産のほおずきジャムを使用した田楽味噌が掛けられ、ほんのりとした優しい甘酸っぱさが大根の風味を引き立てます。

その斜め上は、岩手県。鮭は岩手の大豆からできた味噌に漬けられ、纏う香ばしさと凝縮された旨味がほろっと口へと広がります。その奥には、玉ねぎと三陸産わかめのかき揚げが。甘味とほんのりとした磯の香りが、優しい衣に相性バッチリ。

続いては、その下の宮城県。揚げかまぼこの遊里揚はすり身の弾力と旨味が美味しく、牛タン入りのしそ巻きはお肉の旨味が加わりよりご飯に合う味わいに。そして驚いたのが、小女子とギバサの和え物。硬い小女子、ぬるぬるとしたギバサ。一見馴染まなそうな取り合わせですが、食べてみると意外や意外、とっても美味しい。

右上へと移り、福島県へ。鶏肉は地元醸造所の甘酒に漬け込まれ、味噌漬けでも粕漬けでもない優しく穏やかな凝縮感が初体験の旨さ。揚げなすにはいわき遠野産トマトを使ったソースが掛けられ、濃い甘酸っぱさがいいアクセントに。甘露煮にされた若桃も爽やかで、お酒で火照った口に清涼感を連れてきます。

最後は右下、山形県。芋煮風の炊き合わせにはあみえび魚醤が味付けとして使用され、薄めの色ながらしっかりと旨味の詰まった塩梅に。そして主役は、生芋で作った玉こんにゃく。魚醤や具材のだしが染み、ぶりぶりとした食感が旨いのひと言。玉こん、好きだなぁ。

そしてご飯は、南北東北の対抗戦。左の南東北チームには宮城県産のひとめぼれが使われ、爽やかな会津の高田梅漬けとシャキッとした山形産ヤーコン粕漬けが白いご飯を一層美味しくしてくれます。

一方右の北東北チームは、茶飯風の炊き込みご飯。味付けには青森のさめだしと秋田の鮭しょっつるが使われ、薄味ながらもなんとも言えぬ滋味深い味わいが広がります。岩手の佐助豚はねぎみそ焼きにされ、ぎゅっと詰まった豚の甘味がご飯に合わないはずがありません。

最後に青森のりんご甘煮で締め、もう大満足。おかずを一品食べるごとに、東北各地に思いを馳せられる。ぐるりと4県巡ったこの旅の最高の〆に、思い残すことなどあるはずがない。

E2系やまびこ号車体に輝くエンブレム
八戸から始まり、津軽、出羽、宮城と辿った夏。そこで感じた盛夏の熱さは、目まぐるしいほどの濃さだった。

芽吹きの若さや錦に染まる秋、白銀の冬もさることながら、東北はやっぱり夏がいい。短いからこそ、凝縮される大地と人の熱さ。そこに詰まった濃密な夏を感じたいからこそ、こうして毎年通ってしまう。そのきっかけをくれるねぷたの熱さを胸に宿し、来夏に逢えるそのときまで自分の中の灯も大切に守ってゆこうと強く心に誓うのでした。