冬を求めて津軽路へ ~ランプのゆらぎ、千の夢。4日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

冬を求めて津軽路へ ~ランプのゆらぎ、千の夢。4日目 ①~

冬のランプの宿青荷温泉青白い明け方の空に起こされる 旅の宿

ぼんやりと明けゆく空に起こされる、静かな朝。今日という日の力はまだ弱く、部屋を穏やかに満たすランプの存在感。炎のもつ温もりに、夢と現の境すら滲んでしまうよう。

誰もいない露天風呂へと向かい、早朝の蒼白さと湯の温もりに揺蕩うひととき。朝日の気配がゆっくりと強みを増し、それに反比例するかのように滲んでゆくランプの灯り。泡沫の夢の狭間。そんな感動とも感傷ともつかぬ朝風呂を、ひとり静かに噛みしめます。

冬のランプの宿青荷温泉青荷川の谷を埋める白い雪
穏やかな朝湯を楽しんでいると、気付けば夜から朝への引継ぎは終了。部屋へと戻り気配を消したランプのゆらぎをぼんやりと眺めていれば、あっという間に朝食の時間に。晴れの予感を漂わせる青荷川を渡り、大広間へと向かいます。

冬のランプの宿青荷温泉2泊目朝食
今朝も食卓には美味しそうな品々が並びます。ホクホクの焼き鱈やひじき煮、じんわりと味の染みたぜんまいの炒め煮に、青森名物のねぶた漬け。素朴ながらしっかり旨いおかずに、白いご飯が止まらなくなります。

冬のランプの宿青荷温泉連泊で味わったランプの温もりに別れを告げる
不便を楽しむはずだった。時間を持て余してみたかった。当初抱いたその期待は、いい意味で、本当にいい意味で裏切られた。炎ひとつと寄り添い過ごした、青荷での2泊3日。電気も電波もない一軒宿には、持て余しがたいほどの濃密な時間が流れていた。

この宿の象徴でもある、灯油のランプ。今日という日にその明るさを託し、今は明るい部屋で粛々と残り火を揺らすのみ。ありがとう、本当にありがとう。見なくて良いものは見えなくし、本当に見るべきものだけ照らしてくれる。8年前とはまた違った温もりを胸に灯し、ランプに最後の別れを告げます。

冬のランプの宿青荷温泉無数のランプを手入れするランプ小屋
宿の中に、無数に散りばめられるランプたち。その多くがランプ小屋へと戻り、手入れのときを待つかのように静かに佇みます。

これら全てを、手作業で掃除する。そんな気の遠くなるような作業があるからこそ、ここでの感動を味わえる。ランプ守の方をはじめ、電気も電波もない中で働く宿の方々の大変さに思いを馳せ、静かなる再訪の誓いを胸に刻みます。

冬のランプの宿青荷温泉抜けるような青空と茅葺屋根に連なるつらら
賑わうロビーでチェックアウトを済ませ、送迎バスの時間までのんびりぶらぶら。玄関を出れば、爽快な冬晴れの空に輝くつらら。茅葺屋根に連なる冬の煌めきに、得も言われぬ晴れ晴れとした気持ちが胸へと広がるよう。

冬のランプの宿青荷温泉清流青荷川の谷を照らす冬の太陽
純白に覆われた青荷川の谷を満たす、冬の太陽。その力強い日射は肌のみならず心まで温め、あまりにも鮮やかな煌めきに思わず目を細めます。あぁ、冬に来て本当に良かった。きらきらと輝く白銀の世界に、今はただただ染まるのみ。

冬のランプの宿青荷温泉に別れを告げる
8年前、津軽と僕を繋いでくれた想い出の旅。そんなかけがえのない貴重な体験をさせてくれた宿は、今なお素晴らしいままでいてくれた。今回初めて連泊し、感じた魅力は深まるばかり。青荷温泉、また来ます。ランプの宿への再訪を強く誓い、送迎バスへと乗り込みます。

ランプの宿青荷温泉送迎バス車窓から眺める雄大な雪景色
バスは悲鳴を上げつつ急坂を登り、雪に覆われた山道を走ります。行きはよいよい、帰りは切ない。ちらほらと見え始める人工物に、幻想から現実へと静かに連れ戻されてゆく。そんな少しの感傷を消し去るかのように、雄大な雪景色は冬晴れに輝きます。

弘南バス温川線黒石行き
送迎バスに揺られること約20分、虹の湖公園に到着。ここで『弘南バス』に乗り換え、黒石駅へと向かいます。

弘南バス黒石行き車窓から望む虹の湖
バスが出発し、ずっと寄り添い続けるひたすらの雪原。この雪の下には浅瀬石川ダムの造る虹の湖が静かに眠ります。8年前訪れたときの、溢れる緑が嘘のよう。それでもあと数か月後には、確実に新緑がここまでやってくるのです。

弘南鉄道黒石駅
ダムを駆け下り温泉郷を抜け、30分ちょっとで黒石駅に到着。ここで『弘南鉄道』に乗り換え、弘前を目指します。

弘南鉄道弘南線に揺られて眺める冬の田園
豪快に車体を揺らし、雪原を走る弘南線。次に乗るときは、ねぷたの時期だろうか。早くも胸にくすぶる夏の熱さに、こうしてこの地に通えることの幸せを噛みしめます。

大好きな地で味わう、初めての冬景色。そのきっかけをくれたランプの温もりが、いまだ心にぼんやり灯る。この季節だからこその清らかさに染まる車窓を、揺れる電車に身を任せただひたすらに見送るのでした。

※2020年のねぷたは中止となりました。

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冬を求めて津軽路へ ~ランプのゆらぎ、千の夢。~
青荷温泉のロビーを彩るいくつものランプ
2020.2 青森
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●1・2日目(東京⇒弘前⇒青荷温泉)
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●3日目(青荷温泉滞在)
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●4日目(青荷温泉⇒酸ヶ湯温泉)
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5日目(酸ヶ湯温泉滞在)
●6日目(酸ヶ湯温泉⇒青森⇒東京)
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