冬を求めて津軽路へ ~ランプのゆらぎ、千の夢。1・2日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

冬を求めて津軽路へ ~ランプのゆらぎ、千の夢。1・2日目 ③~

雪のない冬の弘前駅 旅グルメ

これまで何度も訪れた弘前。例年に比べ格段に雪は少ないとはいえ、初めて味わう街の顔に心はすっかり冬色に。これまで味わった、初夏、夏、冬。あと残すのは、春と秋だな。再びこの地を踏むときを夢見て、愛する街にしばしの別れを告げます。

初めて乗る冬の弘南鉄道弘南線
半年ぶりとなる『弘南鉄道』。いつもはねぷた期間中に乗るため、祭りのために弘前へ来る人、田んぼアートを見るため田舎館に向かう人でホームは結構な賑わいに。初めて味わう、この鄙びた風情。古き良き地方私鉄を体現したかのような世界感に、自然と心になにかが沁みてくる。

初めて乗る冬の弘南鉄道弘南線薄い雪に染まる白い車窓
凛とした冬の空気と、しんとした静けさに包まれる車内。発車時刻を待つことしばし、電車はごとりとした衝動とともに唸りを上げて出発。見慣れたはずの車窓も、盛の緑と冬景色ではこうも違って目に映るものだろうか。

初めて乗る冬の弘南鉄道弘南線雪原の中のんびり走る弘南線
小さな車体を豪快に揺らしつつ、雪原の中をゆっくりと走る弘南電車。白銀に曇天、霞む山並みと、車窓にはただただモノクロームの世界が流れるのみ。東京で満員のサラリーマンを乗せ続けてきた電車は、その余生をのんびりと過ごすかのように小さな路線を往復します。

弘南鉄道黒石駅構内に残された手小荷物用のはかり
弘前から銀世界に染まる車窓を愛でること36分、黒石駅に到着。ホーム頭端には、手小荷物用かなにかの大きなはかりが。現役かどうかはわかりませんが、歴史を感じさせるこんな渋い備品が自然と残されている。だからこそ、ローカル線の旅はやめられない。

雪のない冬の黒石駅
半年ぶりに降り立つ、黒石駅。まさかこんな早くに再訪が叶うなんて。雪は少ないとは言いつつも、肌に感じる冷たい空気。四季折々に変化する、街の表情。まだ見ぬ冬の装いに心躍らせ、こみせを目指して歩き始めます。

黒石創作料理の店蔵よし
と、その前に腹ごしらえ。夜行バスで到着し、朝から何も食べずかなりの空腹に襲われていた僕。黒石といえばのつゆ焼きそばを食べる気満々ですが、どのお店に入るかはその場の気分で決めようと思っていました。そんな中、目に留まったのが『蔵よし』。そういえば前回も入ろうかと思ったお店なので、迷わずお邪魔してみることに。

黒石創作料理の店蔵よしで味わう稲村屋のもっきり酒
江戸時代の造り酒屋の土蔵を改装したというお店。和モダンな内装ながらも黒光りする立派な木材を愛でつつ、この旅最初のもっきり酒を味わうひととき。地元黒石の稲村屋が、夜行明けの心身にすっと沁みてゆきます。

黒石創作料理の店蔵よしつゆ焼きそばセット津軽
フルーティーで旨い地酒片手に待つことしばし、お待ちかねのつゆ焼きそばセット津軽が到着。まずは半年ぶりとなるつゆ焼きそばを、そのスープから。おぉ、上品。ひとくち含めば、ほんわかとした和だしの風味が広がります。

続いて麺を。黒石らしい太麺にしっかりとソースが絡み、でもやはりジャンキーさは感じさせない料理屋さんの味わい。載せられた天ぷらはカリッとサクッと揚げられ、それが次第にスープを吸ってゆくのが堪らない。

その上は、僕の大好物である嶽きみの天ぷら。カリッとした衣の下には、シャキッとプチっと、強い甘さが弾ける美味しいとうきび。時期ではないはずなのに、どう保存しているのだろう。ねぷたとともに毎年楽しみにしている夏の味わいの再現に、思わずにんまりしてしまいます。

お寿司も内陸とは思えないほどきちんとおいしく、添えられた七戸産長芋の紫蘇漬けもしゃっきりした歯ざわりと心地よいぬめりが美味。思わず地酒をおかわりするかどうか悩んでしまいます。

茶碗蒸しは津軽ならではの甘いものですが、甘さ控えめでとても丁度良い塩梅。甘い茶碗蒸しに不意打ちされると、おお、そうだ、北国へ来たんだな!と実感が湧くのです。

時間の経過とともにだしとソースが混ざりゆく、つゆ焼きそばの不思議な旨さ。味わいのグラデーションを最後の一滴まで平らげ、お腹も心も大満足。この旅初の津軽グルメに舌鼓を打ち、満たされた気持ちでお店を後にします。

雪のない冬の黒石こみせ通り鳴海醸造店
お店のすぐ近く、こみせ通りの角に建つ鳴海醸造店。思い返せば8年前、初めてきちんと津軽を旅した際にも立ち寄った思い出の造り酒屋。そのときに出会った津軽の吟や、先ほど蔵よしで味わった稲村屋といった旨い地酒を醸す酒蔵。もちろんここで、夜のお供を購入します。

雪のない冬の黒石こみせ通りしっとりと濡れたモノトーンの風情
半年前とは、打って変わって侘びた風情。夏の強烈な陽射しもさることながら、冬の冷たい雨のそぼ降るこんな日も、こみせがとてもありがたい。藩政時代から受け継がれてきたこみせが、今もなお暑さ寒さから通行人を守ります。

雪のない冬の黒石こみせ通り中村亀吉酒造
先程の鳴海醸造店とともに、こみせ通りに酒蔵を構える中村亀吉酒造。立派な杉玉がいくつも提げられ、旨い酒造りへのこだわりが感じられるよう。こちらのお酒も、すぐ近くの「津軽こみせ駅」で手に入れます。

雪のない冬の黒石こみせ通り雨の中こみせの軒下でバスを待つ
季節外れの雨の中、雨音を聴きながらこみせの軒下でバスを待つひととき。しっとりと濡れるこの風情もいいけれど、やはり今度は白銀に包まれた景色も見てみたい。そんなよからぬ妄想を抱きつつ、静かな時間を過ごします。

雪のない冬の黒石こみせ通り軒下でバスを待つひととき
そういえば、8年前も同じようにここでバスを待っていた。あの旅がなければ、僕が津軽の地へと通うことはなかったかもしれない。不思議な縁に導かれ、こうして毎年訪れるようになった青森。僕にとっては、それは偶然ではなく必然とすら思えてしまう。

雪のない冬の黒石こみせ通り雨が上がり急に明るくなる
あっという間の8年、でも色々詰まった濃厚な8年。様々な記憶を自分に起きた経験に照らし合わせていると、いつしか雨は上がり眩しい光がこみせへと差し込むように。

これから向かうは、ランプの宿。あの温もり、あのゆらぎに再び会いたくてここまで来た。8年ぶりとなる対面を控え、心の奥には早くも温かい灯りがともるのを感じるのでした。

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