初夏の爽やかさの中、良く歩いた今日一日。心地よい空腹を感じた頃、丁度夕飯の時間に。信州のお酒大雪渓を注文し、今宵の呑兵衛タイムの始まり始まり♪
まずは好物の鯉のあらいから。ここ最近、旅先で鯉のあらいを食べる機会に恵まれていますが、いつ食べても鯉は本当に美味しいお魚。このように上手く調理すれば、下手な海の魚なんて及ばないほどの臭みの無さと旨味の濃さ。
奥にはこれまた好物の岩魚の塩焼きもあり、ホクホクとした身をつまめば、大雪渓が進まない訳がありません。そばの実なめこやそば豆腐といった小鉢も、お酒の途中の箸休めにピッタリ。
そして手前のお皿は、豆腐の長芋焼き。ふわっと焼かれた長芋の生地の中には、ふるふるの豆腐が入っており、少しだけ甘辛いだしが豆腐と長芋に絡みとっても美味。素朴な一皿だけれども、何だか記憶に残る力のある旨さ。僕好みの味に、一層大雪渓が止まりません。
こちらにはお通しの馬刺しや、茹でたてのお蕎麦。お鍋はしし肉の陶板焼きで、さっぱりとしたたれで頂きます。このしし肉、一見脂身が多そうですが、食べてみると脂っぽさは無く、赤身の味と適度な歯ごたえを味わえます。
そしてここにも、会心の一撃の一皿が。真ん中の鯉の甘露煮です。適度な甘辛さに煮付けられた鯉。身のほろほろ加減や脂の旨さ、皮のとろっとした食感もさることながら、一番おいしい部分が、中心に詰まった鯉の内臓。
以前にも鯉こくで内臓を食べたことはありましたが、甘露煮にするとそのコクや凝縮された旨味、そしてほんのり、極ほんのり漂うほろ苦さが引き立ち、もう格別の味わいに。身よりも内臓の方が好きという人も多いそうで、僕も一瞬のうちにそちら側に行ってしまいました。
最初は内臓ごと筒切りで?と思いましたが、臭みの無い鯉は絶対内臓ごと食べる方が旨い。この一皿で、鯉に対する印象がより一層飛躍的に高まりました。
続いてサービスの「うとぶき」のお浸しが運ばれてきました。初めて食べる、うとぶきという山菜。まずはそのままで、そしてお好みでマヨネーズを付けてと言われるまま、その順番通りに食してみます。
何これ!めちゃくちゃ美味しいんですけど!!クセは強くない控えめな山菜ですが、噛むとしっかりとしたしゃきしゃき感の奥から、ほんのりとした苦みと甘味、そして独特の香りが染みだしてきます。そのどれもが強くないけれど、それらがまとまるとすごく美味しくなる、という印象。本当にこのままで美味しい。そしてたまにマヨを挟むと、なお旨い。
昨日に引き続き、このお宿も大当たり。お湯の良さも必須ですが、ご飯が美味しいと旅の楽しさがより大きなものになります。
旨い信濃の味と酒にお腹はもう満足。そこにダメ押しするのが、鯉こくとご飯。ほんのりと鯉の脂が浮いた、すっきりとした中にもコクのある鯉こく。風味付けに山椒が少しだけ振ってあり、これと野沢菜だけでご飯がどれほど食べられてしまうのか。苦しいお腹を気にしつつも、結局美味しくておひつのご飯を残さず平らげてしまいました。
朝から晩まで、信州の恵みにどっぷりと浸かる、今日一日。長野は何度来ても裏切らない。東北に並び僕の心の拠りどころのひとつ。
そんな信濃での夜も今晩が最後。そんな夜のお供に選んだのは、松電上高地線の沿線にある亀田屋酒造店の、「秀峰アルプス正宗純米吟醸中汲み」。
これまで何度か飲んだアルプス正宗ですが、この中汲みは味も香りもしっかりとしていて、お酒だけでのんびり愉しむのにぴったり。でもそこは信州のお酒、水の良さがすっきり感に表れ、いやな後味の残らないどんどんと飲んでしまう、美味しいお酒。
四方を山に囲まれる中、そこにぽつんとひと塊だけ存在している、白骨温泉。そんな立地を表すかのように、夜の露天は静寂と心地よい涼しさの空気に包まれます。しっとりと感じる夜の風情と、白骨の穏やかな湯。言うこと無し、この上なし。
涼しい夜風に当たり、のんびり過ごす露天での時間。そして十分夜の空気を味わったところで、今度は内湯へ。そこにあるのは、地の奥から湧き出る湯が造り出した、時を感じさせる独特な造形の湯船。
アルプスを染める朝日に起こされ、地上の楽園と呼ぶに相応しい上高地の新緑に照らされ、そして今こうして白骨の白い湯に包まれる。
旅が好きで年に数度行っていても、こんなに一日圧倒されっぱなし、自分の思い通り、いや、それ以上の充実した日はそうは無い。幸せすぎるほどの幸せに包まれ、信州に包まれた夜は過ぎるのでした。
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