上高地での鮮烈な体験を引きずったまま、バスターミナルから『アルピコ交通』のバスに乗車。
バスは急勾配の釜トンネルを滑り下り、梓川沿いの狭い国道を駆け抜けます。そして上高地への自家用車での玄関口、さわんどエリアに到着。さわんど車庫前で下車し、乗り換えのバスを待ちます。
それにしても下界はこれほどに暑かったのか。30℃近い気温と、肌をじりじりと焼く陽射しが辛い。すっかり上高地の爽やかさに体が慣れてしまったのでしょう。
やっと来たバスに乗り換え、激狭な道を進むことしばし、今宵の宿のある白骨温泉に到着。白骨温泉にはバス停が2つありますが、今宵の宿はさわんどから見て奥のバス停、泡の湯バス停で下車。白骨温泉と泡の湯の間は距離があるので、宿の最寄を間違えないように要注意です。
バスを降りると、さわんどより涼しいことに驚きます。爽やかな中の湯浴みに期待しつつ、今宵の宿『かつらの湯 丸永旅館』に到着。
早速チェックインし、荷物を降ろします。白骨に到着した時から鼻をくすぐる湯の香りに居てもたってもいられず、慌てて浴衣に着替えてお風呂へと向かいます。
木造りの渋い脱衣所を抜け、いよいよ白骨の湯とご対面。鼻をくすぐる良い香りと共に、青白く濁るお湯がたっぷりと掛け流されているのが目に入ります。
そして僕がこちらの旅館に宿泊を決めたのが、この温泉の濃さ。木の浴槽は、その面影も無いほど、びっしりと析出物で覆われています。
この析出物の多さが、白骨温泉の名前の由来だそう。湯船がすぐに白くなるので白船、それが転じて白骨や、この析出物が骨のように見えた、などから白骨温泉となったそう。
重みのある雰囲気の内湯は後で楽しむとして、まずは露天風呂へ。日光を浴びたお湯は、その碧さを増してより印象的な色に。
足元が全く見えないほどの濃厚なにごり湯。段差に注意しながらゆっくりと入ると、すぐに感じるその柔らかさ。弱酸性のこのお湯は、にごり湯にありがちなピリピリ感は全く感じず、肌にしっとり吸い付くような感触。いつまででも入っていたくなるような、包まれるような浴感です。
それでも長湯は厳禁。白骨のお湯はとても良く温まります。露天でさっと体を温め、待望の内湯へ。ざらざらごつごつとした湯船の感触を味わいながら、白骨の湯をのんびり静かに味わいます。
飲泉可のこのお湯、湯口には枡が置かれています。早速ひと口。ほんのり卵を思わせるような味わい、僕は結構好みの味。以前白骨温泉の別の旅館に泊まった際、朝に出された温泉粥が激うまだったのを思い出します。
それにしても白骨のお湯の濃いこと。ガツンと濃いという感じでは無く、お湯の中にきめ細かなベビーパウダーが溶け込んでいるかのような感触。湯面にも非常に細かい湯の花の帯が流れるように漂っています。
肌から吸収されるような温泉を楽しみ、部屋で湯上りの至福の瞬間。濃いヱビスが、じんわりお腹へと吸い込まれてゆきます。
それにしても今日は良く歩いた。天上の別世界に見とれ、歩いているときは余り感じませんでしたが、足の疲労感は結構なもの。
白い湯に金のビール、これがこの瞬間、一番嬉しいご褒美。秘湯での静かな午後が、心地よい疲労感と湯上りの火照りを癒してくれるのでした。
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