新緑溢れる6月、そして光の洪水に包まれる8月。その2つの顔しか知らなかった僕に、また新しい一面を教えてくれた弘前の街。次会うときは、ヤーヤドー、かな。必ずの再訪を固く胸に誓い、僕の想いをねぷたへと託します。
ホームへ向かうと、僕の好きなキハ40が停車中。あぁ、五能線かぁ。なんてのんきに眺めていると、実はこれが乗るはずの青森行き。まさか奥羽本線の普通列車でキハ40に乗れるとは思っていなかったので、思わずひとりにやけてしまいます。
ガラガラとアイドリングの音が響く車内で、ぼんやりと発車を待つひととき。懐かしいなぁ。僕と弘前との出会いは、あの1番線から始まった。8年前、あけぼの号から降りた朝。見送ったブルートレインの記憶を辿っていると、遠くから津軽三味線の音色が耳へと届きます。
弘前らしい発車メロディーに見送られ、列車はのそりのそりと構内を滑り出します。非力なエンジンに、重たい鋼鉄の車体。このじんわりと伝わる重みこそが、キハ40の醍醐味。そんな昭和の列車旅に身を任せていると、いつしか街を抜け車窓には雪積もるりんご畑が広がるように。
ボックスシートに、二段窓。国鉄時代から連綿と続く旅情に酔いしれていると、冬の旅情を一層駆り立てる渋い光景が。丸太と茅で作られた、線路を雪から守る仮設の防雪柵。長大な路線を誇る東北の鉄路。冬が来る前に設置し田植え前までに撤去することを考えると、通年運行がいかに大変なことかが分かります。
思いがけない冬の気動車旅を噛みしめること50分足らず、次なる目的地の玄関口となる青森駅に到着。コンコースではいつものねぶたがお出迎え。いつかはねぷたとねぶたのはしご、してみたい。
半年ぶりに訪れる青森。あれ?でも気温と空模様が違うだけで、あるはずの白さがない。青森の雪深さを知っているだけに、この光景には唖然としてしまいました。でも地元で暮らす方には、このほうがいいのだろうなぁ。
時刻は丁度お昼どき。何を食べようか列車を降りる直前まで悩んでいましたが、半年前にまろやかで黄色い罪な奴を啜ったので、今回は『長尾中華そば』青森駅前店にお邪魔することに。
サービスのライスを準備して待つことしばし、1年半ぶりとなるこく煮干しラーメンと再会。今回も手打ち麺を選びました。
まずは待望のスープをひと口。色々溶け込んでいそうな色合い、そしてきらきらと浮く煮干しの気配。一見すると濃厚そうですが、意外や意外、すっとお腹に沁みるような穏やかな旨さ。旨味が濃いのに、クドくない。いい意味でのギャップに、二度目の体験ながら驚きます。
続いて麺を。とてもしなやかで、みずみずしさを感じるもっちりとした口当たり。中華麺とうどんのいいとこどりをしたような独特な麺は、スープを適量絡めとり煮干しの旨味との相性も抜群。
まずはそのまま、続いてコショーを入れて。そして試してもらいたいのが、その隣に用意された一味唐辛子。僕は味噌ラーメン以外に一味や七味を使わないのですが、これは途中で絶対入れたほうがいい。潔い辛味が煮干しのスープをグッと引き締めてくれます。
こんな見た目なのに、まさに中華そば。煮干しが主役なのに、魚臭さはゼロ。こんな煮干しラーメン、本当にあっていいのでしょうか。〆のご飯とスープのループも名残惜しく、あっという間に完食してしまいました。
あぁ、旨かった!絶妙なバランスで、煮干しの良いところだけを味わわせてくれる。また青森に来る日まで、この感動はお預けだ。口に広がる煮干しの余韻に、大盛にしておけばよかったと思うのでした。
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