石垣港からあおい船窓を愉しむこと30分、いよいよ小浜島に初上陸。まだ見ぬこの島には、一体どんな世界が広がっているのだろうか。そう考えるだけで、胸の高鳴りは増すばかり。
なんかこれまでとはまた違った雰囲気の島だねぇ。早くもそんな話をしながら歩く僕らを先導するかのように、ひらひらと飛んでゆく見慣れぬトンボ。べっ甲のような柄の翅をもつ、オキナワチョウトンボ。二匹が戯れつつ優雅に飛ぶ姿に、虫が苦手な僕ですら見とれてしまう。
港から集落へとのびる道の横に整備された歩道を歩きます。これがまた、ジャングル感満点といった雰囲気。
足元を見ると整備された遊歩道の面影が感じられますが、それを呑み込まんとばかりに勢いよく繁る植生。そのどれもが自分の暮らす街で見る木々とは異なり、改めて今自分が亜熱帯に居るということを強く実感します。
のっけから小浜島の空気感にワクワクしつつ足を進めていると、頭上からは聞き慣れぬ大きな鳴き声が。見上げれば、電線で休む二羽の鳥。あまりも鮮やかで美しい緑色をしたこの鳥は、チュウダイズアカアオバトという先島諸島に生息する鳩の仲間だそう。
眩い夏空、横たわる小高い丘。その麓ではのんびり牛が草を食み、それらを雲の影と風の姿が撫でてゆく。あぁ、僕この島、好きだわ。この光景に出逢った瞬間、唐突に胸へと落ちるそんな直感。
穏やかな世界観に包まれる竹富島に、ジャングルというものを体現したかのような西表島。さらには絶海の孤島を絵に描いたような波照間ともまた違う、小浜島のもつ独特の空気感。早くもこの島に流れる空気に染められつつ、ビーチ目指してサトウキビ畑の中をゆく道を進みます。
港からのんびり歩くこと約15分、お目当てのトゥマールビーチに到着。ちなみにここまで特に道しるべなどはなく、入口の目印も焼肉屋さんの近くに「小浜園地」と書かれた看板があるだけ。地図を片手に方角は合っているんだけど・・・と歩いてきただけに、到着時の嬉しさもひとしお。
深い緑の合間を抜ければ、視界の全てを占拠するこの鮮烈な夏景色。うわぁ、これはすげぇや・・・。人間なんて、いとも簡単に言葉を失くしてしまう生き物。圧倒されるような絶景に、やっとの思いでそんな感嘆の声を絞り出す。
ゆるく円弧を描く浜、寄せては返す煌めく波。静かに広がる海はみんさー色に輝き、その豊かなあおさに辛うじて浮かぶ竹富島の平たい島影。
空も青ければ海も碧く、そして島影をも染める爽快な蒼。網膜を灼くような鮮やかな無限のあおさと、珊瑚の砂浜を染める少しばかりの赤みの対比。コンドイやフサキ、そしてニシ浜とも違った美しさに、ただただ息を呑むばかり。
どこまでも穏やかに輝く海、その先に連なる石垣や竹富の島影。石西礁湖の宝のごとき碧さの上に設えられた箱庭然とした絶景に、居ても立っても居られず冷たいオリオンを乾いた喉へ。その瞬間、幸せという感覚が羽を広げて昇華してゆく。
砕けた珊瑚や貝殻でできたうつくしい砂浜。転がる石もほとんどなく、レジャーシートを押さえる重りは辛うじて見つけたヤシの実で。なんだかもう、胸を焦がすほどの強烈な南国感。
トゥマールビーチの周辺にはお店ありませんが、今日は知念商会でお昼を買っていたため心配なし。まずはビールのお供に、メンチカツをかじります。しっかり目に下味の付いたタネは、これぞメンチという王道のおいしさ。さすがは知念商会、ポテンシャル高し。
続いては、知念商会といえばのオニササを。今回はソースを掛けたササミカツとじゅーしーおにぎりを別の袋に分けて持ち運び、食べる直前にギュッと合体。
理屈上では、ササミカツをおかずにじゅーしーを食べているのと同じはず。でもギュッとひっつけることで、なんで味わいが増すんだろう。そしやっぱり今年も驚いたのは、油っぽくないこと。お店の揚げ物がみんな知念商会レベルなら、間違いなくテイクアウト増えるんだけどなぁ。
絶景を愛でつつ、ジャンキーなおいしさを満喫する贅沢な時間。浜を訪れる人も少なく、聴こえるのは風の音と砂を洗う波音だけ。そんな夢うつつの世界に揺蕩っていると次第に潮はひきはじめ、どこまでも遠浅の海はまた違ったあおさを魅せてくれるように。
八重山の太陽を溢れんばかりに肌に受け止め、焦げたと思えば清らかな海へ。温すぎず、冷たすぎず。静かに身を沈め肩まで浸かれば、体のみならず心の火照りをも鎮めてくれるよう。
僕らを全力で焦がす南国の陽射しに負けず、元気に歩くヤドカリたち。彼らはその円らな眼の先、一体どこを目指しているのだろうか。思わず童心に返り、浜を行き交う大小のヤドカリの姿を追いかけます。
ひっそりとした静かな雰囲気に包まれる美しい浜辺に、もっともっと揺蕩っていたい。でもせっかく初めて訪れた小浜島、まだ見ぬ景色が待っているはず。肌が焦げすぎる心配もあるため、名残惜しくも良きところでビーチを後にすることに。
その前に、もう一度だけこの絶景を眼に心に灼きつけよう。石垣島や竹富島の先には、こんなあおさが広がっていたなんて。初めて抱かれた小浜ブルー。またひとつ八重山の新しいあおさを知り、より一層この島々を好きになってしまうのでした。
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