今日歩いた道はアップダウンも少なく、いつも歩くルートよりちょっとばかり近道だったかも。柔らかめの陽射しも相まって、それほど汗だくにならずにコンドイビーチに到着。
やっぱり今日は、灼けすぎた肌に優しい感じだ。昨日黒島一周でかなりダメージを負っていたので、この穏やかな空模様が今はありがたい。一昨日までとは打って変わって、コンドイビーチはパステル色に染まります。
早速海へと入ると、冷たすぎず温すぎずのちょうど良い塩梅。晴天の日はぬる湯ほどの水温になるため、今日はある意味海らしい感覚を味わえます。
陽射しは弱いものの、やはり気温はそれなりに高め。海でしっかりとクールダウンし、陸で体を温めたらこいつでプシュッと乾杯を。この旅で何度も味わったこの瞬間も、残すところあと僅か。
海に浸かり、砂浜に上がったらぼんやりあおさを眺めてビールを飲むだけ。こんな日々を繰り返していると、自分というものが溶けていってしまいそう。
そんな緩やかな怠惰に彩りを添える、港で買った素朴な弁当。揚げ物つまみにオリオンを喉へと流し、優しい味わいのジューシーおにぎりを頬張るひととき。こんな贅沢を知ってしまうと、もう後戻りなどできるはずもない。
太陽漲る鮮烈なあおさもいいけれど、今日のような柔らかなあおさもまた趣深い。いつもの眩さが網膜を通して脳にこころに強烈な力を送ってくるのだとすれば、今日の穏やかさは皮膚を通して優しく心身の芯へとあおさを届けてくれるよう。
最高潮のあおさには再会できなかったけれど、じっくりゆったり浜辺での時間に揺蕩うことのできた今日のコンドイビーチ。気温も陽射しもソフトな分、気づけばいつも以上に長い時間を過ごしていました。
まろやかな時間の流れるコンドイビーチに別れを告げ、そろそろ港へと戻ることに。道端には、たわわに実る青パパイヤ。これが普通の立木としてあるなんて、やっぱり何度味わっても薄れることのない南国感。
集落へと差し掛かる頃には雲も薄れ、爽やかな青空が覗くように。ギラギラの夏空とはまた違った優しい青さに見守られる集落は、いつもより穏やかな表情を浮かべています。
ゆるやかな空気感の流れる集落を歩いてゆくと、家並みに続くようにバナナの畑が。僕にとっては非日常でも、ここではこれが日常に違いない。
こどもの頃から、植物園の温室で見るものだと思っていたバナナの木。それが路地で当たり前のようにびっしりと実をつけている姿に、自分の暮らす街との距離を改めて強く実感せざるを得ない。
それなのに、八重山へと来ると何故か「帰ってきた」と思えてしまう。35歳、空港から出たときに襲われたあの直感。時が進み逢瀬を重ねるごとに、自分の中の南国属性は強まるばかり。
もう明後日には、帰っちゃうのか。長く居すぎるのは、ある意味危険な行為なのかもしれない。滞在7日目にして、もっともっとこの地に居たくなる。そんな後ろ髪を引かれる思いで『八重山観光フェリー』に乗り込み、石垣島へと戻ります。
港に着いたら宿へは戻らず、そのままの足でユーグレナモールへ。お土産屋さんで色々買い込み、宅配便で自宅へ発送。必要な作業ではあるものの、こうして段々と意識し始める残された時間。
いやいや、今年は過去最長の8泊も予定を組んでおいて、何を贅沢なこと言っているんだ。ちょっとばかり芽生え始めた切なさを吹き飛ばし、今宵も旨い酒を飲みに行くことに。
部屋からエレベーターを降りて目の前、ホテルミヤヒラ美崎館の1階に位置する『ひるぎ』が今宵の宴の場。じつはミヤヒラ、連泊でお掃除をスキップすると館内利用券をもらえるのです。滞在中結構溜まったので、今夜はお得な夕飯になりそう。
冷たいオリオンで喉を潤していると、マグロのしゃきしゃき山葵和えが運ばれてきます。まぐろの赤身の味わいに風味のたつ刻みわさびがよく合い、早速泡盛ロックに切り替えます。
すっかりお気に入りとなった、島魚の天ぷら。ホテル併設のレストランらしく、厚めながらサクッとした上品さを感じる衣。その中には、ホクホクのおいしい白身。そのままでもおいしいですが、ウスターソースを付ければ一層泡盛を誘う味わいに。
続いて頼んだのは、沖縄県魚であるグルクンの唐揚げ。片栗粉をまぶされカリッと揚げられた身に宿る、じんわりとした魚の旨味。ほぐしてぽん酢に付けて頬張れば、魚の唐揚げ好きには堪らない旨さが広がります。
泡盛のボトルを頼んだので、もう少しおつまみをと頼んだこの二品。島豆腐のガーリック揚はざっくりと香ばしく揚げられ、香るにんにくの風味が濃い豆の旨さを引き立てます。
そして相方さんが食べたいと頼んだ、ミックスピザ。石垣に来てピザ?と侮るなかれ、これがまた泡盛に合ってしまうのです。タバスコの代わりにコーレーグースやご当地香辛料の海山七味を掛ければ、どことなく八重山っぽくなってくるのも面白い。
たっぷり食べて飲んで、最後は清掃スキップでいただいた金券利用でお会計。なんか、すみません・・・。というほどの額だけお支払いし、エレベーターで部屋へと戻ります。
立地良し、味良しのホテルミヤヒラ。いつも泊まっていた宿よりも少しだけお値段は上がるけれど、この便利さを知ってしまうと病みつきになりそう。
そして嬉しいのが、美崎館にはベランダがあるということ。部屋で宴の続きを愉しみ、気が向いたら外へ。その刹那、体を包むむわんとした空気と、街から聞こえる賑やかな声。こんな夜がいつまでも続いてくれたら。結局やっぱり、そんな叶わぬ妄想を抱いてしまうのでした。
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