会津若松、喜多方と2泊3日を掛けて楽しませてくれた会津地方ともお別れ。喜多方駅から磐越西線に乗り、一路郡山駅を目指します。
磐越西線は喜多方まで電化されているので日に数本だけ喜多方~郡山の直通列車が設定されていますが、会津若松駅構内で必ずスイッチバックする必要があるので、殆どが会津若松で乗り換えることになります。
会津若松からは郡山行き普通列車に乗り換え。快速やあいづライナーは編成が長いためそれほど混んでいる印象はありませんが、この普通列車は2両編成だったため、座席はほぼ満席。どうにかギリギリ進行方向逆向きの2人掛けを確保してひと安心。
会津若松での僅かな乗り換え時間を駆使し、本日のお昼と車窓の友を購入。僕の一番好きな日本酒のひとつである榮川を迷わず選択。会津地方を去る列車で飲むに相応しいお酒です。
生憎、会津若松の駅弁はほとんど売り切れ。残っていたのはこのソースかつ弁のみとなっていました。普段ならまず買わないタイプのお弁当。きっと、先入観無しに何でも食べてみなさい!との思し召しなのでしょう。
蓋を開けてみると、想像以上に立派なカツがドン!と載っています。後は煮物と漬物、うぐいす豆のみ。その潔さに思わず笑みがこぼれます。
あらかじめカツにはソースが掛けられていますが、添付の「ブルドッグ胡麻ソース」を好みで掛けて頂くスタイル。これなら味の濃い薄いを好みで調整できるのでいいですね。
カツを一口噛むと、予想外に油っぽくなく、結構美味しい。敷かれた茹でキャベツが、カツとご飯の橋渡しをしてくれています。これだけ大きいのに、意外と飽きずに食べ進められてしまう。
やっぱり、これは食わず嫌いはせずに色々食べて見なさい、との教えだったのでしょう。さすがはウェルネス伯養軒。僕が東北に行くたびに必ず買ってしまうお弁当の調製元だけのことはあります。
若松発祥の美酒榮川と、一見ミスマッチのように見えるソースかつの組み合わせ。ですが、ソースカツ丼は会津若松の名物で、様々な説はありますが、元祖ソースカツ丼の街のひとつとして名乗りを上げています。
そんな会津名物コンビを楽しみながら眺める車窓。列車は会津盆地の縁を成す山に挑み始め、僕の好きな会津が遥か下のほうへと遠ざかって行きます。
磐越西線の挑む道のりは、勾配こそ急ではありますが、景色としては山がちで閉鎖的なものではなく、山すそに広がる高原を左右にカーブしながらぐんぐん登ります。
それに連れて標高も上がり、紅葉が刻一刻と鮮やかに変化してゆく車窓は、いつまで見ても飽きることはありません。
山あり、谷あり、湖ありの変化に飛んだ車窓も、次第に幾重にも重なった山並みが支配し始めました。らくだのコブのように穏やかに波打つ山々。そのひとつひとつが紅葉に彩られ、雲の落とす陰と共に無数のグラデーションを生み出しています。
会津盆地の縁を成す山並みがいよいよ近付き、まもなく会津地方とのしばしの別れが訪れようとしています。
会津若松を出てから一度もトンネルをくぐらなかった列車が、轟音と共に数本の闇をやり過ごしたとき、僕はすでに中通りの人となっていることでしょう。
ありがとう、会津。まだ知らぬ魅力を求め、再びこの地を踏むことを心に誓い、列車の揺れに身を任せるのでした。
会津若松から1時間と少し、列車は無事に郡山駅に到着。ここで東北本線下りに乗り換え、今夜の宿のある二本松駅を目指します。
郡山の市街地を抜けて視界が広がると、青空の下に裾野を延ばす、大らかな姿が印象的な安達太良山が。その姿は、車窓からでも紅葉に包まれていることが窺え、その麓で過ごすこれからの数日間に、弥が上にも期待が膨らみます。
会津から中通りへ。福島はとても広く、気候風土がそれぞれ違うため3つの地方に分けられていますが、僕にとって中通りは、今まであまり訪れる機会の無かった場所。
会津以上に未知なる魅力と出会いそうな予感に胸を弾ませ、到着を今か今かと待ちわびるのでした。
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