恒例になった、年に二回のひとり旅。秋本番を迎えた今回、行先に選んだのは福島県は会津から中通りへの道のり。もちろん、燃えるような紅葉を期待しての選択です。
今回、福島入りに選んだのは、こちらもお馴染みになりつつある『JRバス関東』が運行する「夢街道会津号」。鉄道では少々不便な会津若松まで、乗り換え無しの一直線で連れて行ってくれるのは本当にありがたいところ。席数限定の早割りを使えば片道2500円と、破格の安さも魅力のひとつです。
ということで、今回の旅は新宿新南口(代々木)バスターミナルからスタート。バスは定刻通りに走り出しました。
バスはいつも通り羽生、阿武隈と休憩を取りながら会津若松を目指します。阿武隈PAまでくると、だいぶ木々は色づき始めていました。これから僕を迎えてくれるだろう絶景に想いを巡らせ、会津若松到着を今か今かと待ちわびます。
バスは郡山で東北道に別れを告げ、磐越自動車道へと入ります。両側には山がグッと迫り、東北へ来たことを実感させてくれる車窓が広がります。
何本ものトンネルを抜け、いよいよ会津盆地に突入。会津盆地の縁をなす山々は、遠景からでも紅葉に包まれていることが窺え、明日からの山の暮らしに一気に期待が膨らみます。
バスは無事に会津若松に到着。ここへ立つのは1年3ヶ月振りとなります。
縁もゆかりも無い土地のはずですが、何故か僕はこの街が本当に大好き。色々なところを旅する中で、ここほど同じ街を繰り返し訪れるという土地は他にはありません。ここに立つと、なんだかホッとするのです。
今回宿泊するのは、駅の目の前に建つ『駅前フジグランドホテル』。お手頃なお値段と駅へのアクセスの抜群な良さで選びました。早速チェックインして重たい荷物を降ろし、若松の町へ繰り出すこととします。
会津若松へ来たら必ず立ち寄ってしまう、『末廣酒造』。僕にとっては外せない、若松でのチェックポイントになっています。
何度見てもこの建物は渋くていい。よいお酒を造り続けてきた歴史が滲み出るかのような佇まいに、会津若松へ来たという実感がみるみるうちに湧いてきます。
ここで少しだけ試飲をし、夜のお供を購入。美味しいお酒が並ぶ中で、初日ということもありお土産にできないのが寂しいところ。好みの1本を厳選しました。
会津若松は表情の豊かな散策して楽しい街。もう少し到着が早ければ街ブラできたのですが、夕方の到着だったため鶴ヶ城にだけ行くことに。
薄暗くなりかけたお堀と色づき始めた木々が、秋のえも言われぬ寂しさを漂わせます。このちょっとした感傷も、秋という季節が持つ魅力のひとつ。
立派な石垣の間を抜けると、これまた立派なイチョウの木が。その分身である銀杏の実のような、黄緑から黄色にかけてのグラデーションがとても目に鮮やか。
暮れつつある空に聳える、白く立派な天守閣。去年行われた改修により、瓦は赤瓦に、欄干は黒くなったため、以前とは全く違った印象に。
文献や発掘調査により、これが江戸時代当時の姿であるとのこと。屋根が赤瓦になるだけで、これほどまでに印象が変わるのかと驚きました。以前のお城らしい鶴ヶ城も好きですが、独特の魅力を持つこの鶴ヶ城ももっと好き。
天守閣の向かいには、色とりどりの木々が。暮れゆく麟閣を彩るその姿は、まるで箱庭を見ているかのような美しさ。視界に入るこの映像だけでも、日本の秋を充分に満喫できるかのような光景です。
色彩を失いつつある紅葉と遠景の山々。まもなく、会津若松に夜の帳が下りようとしています。
時刻はもうすぐ17時。朝ごはんを食べてから何も食べていなかったので、少し早めの夕食にします。
すっかり日も暮れ、気分もすっかり晩酌タイム。会津の旨い酒が僕を呼んでいます。
今まで会津若松は何度も訪れていますが、市内で夕食を取るのはこれが初めて。美味しいものが目白押しの会津、いいお酒が楽しめること間違いなしと、胸を躍らせこの時を待ちわびていました。
そんな会津若松の夜の舞台にと選んだのは、市役所近く、中心部に位置する『籠太』。鶴ヶ城から駅までの帰り道にあります。
趣きある佇まいの入口をくぐると、カウンターとテーブルの落ち着いた店内。ひとりの僕はカウンターに通されました。
落ち着いた雰囲気だったので、ここでは写真は遠慮しました。お料理の様子をお伝えできないのは残念ですが、ひとりでしっぽり飲むにはいい雰囲気のお店です。
まずは会津郷土料理のにしん山椒漬けと蹴飛ばし(馬刺し)を注文。
蹴飛ばしは、所謂霜降りのお肉ではなく、きめの細かく非常にしっとりと柔らかい赤身。会津独特のニンニク味噌を付けて食べれば、馬の持つ穏やかな旨味がじんわりと広がります。
旨味を充分に堪能したところで、榮川をぐびっと。そして今度はにしんの脂と山椒の風味が爽やかな山椒漬けを一口噛みしめ、再び榮川。もうどうにでもして!!と言いたくなるほどの幸せが口いっぱい心いっぱいに広がります。
続いては納豆を乾燥させたねばを注文。市販されているドライ納豆よりも粘りも風味も濃く、酒のアテにぴったり。
そして楽しみにしていたカド(にしん)の糠漬け。へしこのようなものを想像していましたが、それよりも遥かに柔らか、ジューシーで、お腹には嬉しい白子入り。程よく締まった身と糠の香ばしさがもう堪りません。
塩分はかなり濃い目ですが、ちびちび食べながら日本酒をチビチビ飲めば、もうつまみはこれだけでもいいと思えるほど。そんな美味しいつまみを並べ、奈良萬、会津娘と共に若松の夜を思う存分満喫するのでした。
初の会津若松の夜を充分すぎるほど愉しみ、心地良い足取りでふらふらと駅を目指します。途中にはライトアップされた会津若松市役所が。その重厚な姿には、なんとなく上野駅と通ずるものを感じます。
ほろ酔いで歩く会津の夜の街並み。旅館にこもって美味しいものとお風呂を堪能するのもいいですが、夕食は外で美味しいものを食べ、昼とは違う表情を持つ街並みを愉しみながら帰る、それも旅の醍醐味のひとつです。この感じは泊まらなければ味わえません。
ホテルへ戻り、すぐ近くにある『富士の湯』でひとっ風呂浴びることに。駅前フジグランドホテルの系列のようで、宿泊すると無料で入館でき、今回のホテル選びのポイントのひとつにもなっています。
所謂スーパー銭湯でお湯も循環式で特徴のあるものではありませんが、ビジネスホテルに泊まって大きなお風呂でのんびりできるだけで充分。手足を伸ばして旅の疲れをしっかり取り、明日以降に備えます。
体の芯まで温まり、自室へと戻ります。ここからはお酒と本、ただそれだけの贅沢を味わいます。今夜のお供は、末廣酒造で仕入れた純米吟醸原酒ひやおろし。ひやおろしは夏を越して秋に出される、期間限定のお酒。
純米吟醸原酒とのことですが、夏を越して熟成されたお酒は、角が取れてまろやか、それでいてすっきりとした飲み口。末廣酒造のお酒はどれをとっても美味しいお酒ばかりです。
いよいよ明日からは秘湯名湯三昧。まずは今まで通り過ぎつつも訪れてみたかった喜多方へ。本とお酒により心地良い睡魔に襲われたところで、静かに眠りに就くのでした。
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