北海道での最後の朝。この日も清々しく目覚めることができました。起床後早速1階の大浴場へ。朝日を受けて黄金に煌めく津軽海峡が眩しい、まさに最後の朝に相応しい眺め。
誰にも気兼ねなく楽しめる専用露天風呂もいいですが、足を伸ばしてはいる開放感たっぷりの大浴場も、やっぱり捨てがたい。今回の旅で、またひとつお風呂の楽しみが分かったような気がします。
朝風呂ですっきり汗を流した後は朝食会場へ。津軽海峡を眺めながらのバイキングです。
お腹一杯朝ごはんを食べて部屋に戻り、この旅最後の一浴を楽しみます。今回チェックアウトが11時だったので、朝食後ものんびり過ごすことができました。
今回、湯の川プリンスホテル渚亭のお陰で本当にいい時間を過ごさせてもらいました。最近は秘湯ばかり狙って訪れ、大型ホテルは避けて通ってきましたが、このお値段でこの設備と食事。これには納得どころか大満足です。湯の川に来たらまた泊まりたい、そんな宿を見つけました。
ホテルをチェックアウトし、市電で函館駅前へ。上野へと向けて出発するまでの約半日、この函館を満喫することにします。
函館といえば、やっぱりこの朝市。手前の食堂街は新しい建物に収まってしまい、随分と小奇麗な印象になっています。僕個人としては、古い味のある函館駅舎と、狭い通路の両側にお店がひしめく朝市といった、古きよき、雑多な感じが好きでした。
それももうすでに過去のもの。僕が初めて函館を訪れてから、かれこれ20年近く経とうとしています。観光地が観光地であり続ける以上、この進化は必然であり、必要なのでしょう。そうと判っていても、やっぱり前の函館駅前は味がありました。懐かしい。
表の顔は変わっても、奥へ進めば朝市の雰囲気は残されたまま。よくテレビにも映るこの通りには、両側にカニや裂きイカなどの海産物が所狭しと並んでいます。もう見ているだけでも楽しくなってしまう。朝市は海鮮好きにはたまらない楽園です。
この日はあいにく雨の平日だったためあまり見られませんでしたが、焼きウニや焼きつぶ、茹でカニなどもたくさん売っており、食べ歩きも楽しめます。勇気のある方なら、数々のお声のかかる試食チャンスも楽しめます。
朝市といえば海産物のイメージが強いのですが、もともとの発祥は農産物の立ち売りからだそう。駅から少し奥へ入ったところには大きなドーム型の古い市場があり、中には山海の幸や北海道土産が目移りするほど並んでいます。
うにに鰊に、ごっこに新巻。その日のうちに帰れるなら買って帰りたいものが目白押し。でも今夜は北斗星で夜を明かすので、それも叶わぬ夢。指を咥えて眺めるだけにします。
それでもこれだけの北海道の恵みが並べば、何か買って帰りたくなるもの。そんなときにインチキ料理人のアンテナに引っかかったのが昆布屋さん。
粘りが強烈な函館名産のがごめ昆布のとろろ昆布や、各地域産の昆布で取った出汁を味見させてもらい、出汁用日高昆布とがごめとろろ昆布をお土産に購入。
後日日高昆布を使ってみたところ、驚くほどの美味しさ。食用にも適している日高昆布は、出汁を取ったあと煮込んでも臭みが出ず、肉厚の柔らかい身には旨味がぎっしり詰まっています。
東京でこのレベルの昆布を買うと・・・、と考えると、破格の安さでした。思わず、どうしてもっと買ってこなかったんだろう、と後悔してしまいました。
市場を出て函館山方向へ歩くと、まさに映画の世界から飛び出してきたような、北の港町のイメージピッタリの路地が。
表はきれいになっても、函館朝市の歴史を物語るような風情が残っていることは、本当に嬉しい限り。食べ物が安くて美味しい、たくさん揃うだけでなく、函館朝市の魅力は、こんなところにあるような気がしてなりません。
朝市を抜けて函館山方向へ歩くと、すぐに赤レンガの並ぶベイエリアに到着。赤レンガ散策はひとまず後でゆっくり楽しむことにして、まずはお昼の腹ごしらえ。
本当は朝市でうに丼を食べてやろう!と意気込んでいたのですが、ウニだけにそこそこのお値段を出すのなら、同じくらいの金額でもっとたくさんの北海の幸を楽しみたい!と欲張った結果、クチコミで評判の良さそうだった回転寿司のお店に行ってみることにしました。
今回訪れた『まるかつ水産』は、地元の水産業者が運営する回転寿司。市内に数店舗あるようで、ネットで軽く調べてみたところ、地元の人からの評判が良かったので、思い切って入ってみました。
席に着くと、まず目に付くのがメニュー。定番物の他に、北海道各地で獲れた様々な魚介の名前がずらりと並んでおり、どれをどう頼んでいいものか、思わず嬉しい悲鳴を上げてしまいそう。
なのでここはひとまず、北海道のお酒、千歳鶴の純米冷酒をちびりちびりと楽しみながら、じっくりとメニューとにらめっこしていきます。
悩んだ挙句の僕のベストメンバー。トップバッターは、油子。あぶらっこは僕の思い出の魚で、以前じいちゃん達と数回堤防釣りに行ったときによく釣れた魚。一番大きいので、25cm位のを釣ったでしょうか。
そんなあぶらっこが、東京では高級魚だと知ったのは後の話。あいなめと呼び名が変わり、値段も変身。確かに型は小さかったけれど、糸を垂らせば釣れるあぶらっこが貴重なものだとは、その当時は思ってもみませんでした。
小さいあぶらっこは、ばあちゃんが唐揚げや煮つけにしてくれました。なので、あいなめを生で食べたのは東京が初めて。そのときも確かに美味しいとは思いましたが、この油子は全然違う!
もっちりねっとしとした中に心地良いコリッとした歯ごたえを感じ、淡白な中にも濃厚な白身の旨味が凝縮されています。脂も程よく、ほんのり甘く感じつつも白身の上品さを邪魔しない。しょっぱなから北海道の本気を見せ付けられました。
続いては真だら子しょう油漬け。一般的なたらこはスケトウダラの卵であり、真鱈のあの大きくてちょっとグロいたらこを生食するというイメージは全くありませんでした。それでも魚卵好きの僕としては、興味津々。注文しないわけにはいきません。
おっかなびっくり口に入れてみると、思ったとおり、それ以上の卵の存在感。高いたらこのあの粒々がもっと存在感を増した、そんな印象。
風味も濃厚で、噛めば口いっぱいに広がる粒々によって「たらこまみれ」を満喫することができます。それでいて、決して生臭くなく、大味でなく、粒々も硬いこともなく、この上なく濃くて美味しいたらこ。たらこ好きにはたまらないひと品です。
お次はこれまた大好物、厚岸産のかき。言わずと知れた厚岸のかきですが、食べるのは今回が初めて。いつも見慣れたものよりも小ぶり、というよりもギュッと身が締まっています。
噛んでみると、かきでは中々味わうことのできない、貝らしい締まりのある食感で、中から芳醇な海のエキスがじゅわっと溢れ出します。こんな美味しいかきは、そうそう食べられるものではありません。あぁ幸せ・・・。
こちらは黒ソイ。これも北海道ではよく見る魚です。あぶらっこよりもピンク掛かった身は歯ごたえが良く、独特の風味を感じます。生臭いというのではなく、あの白身特有の香りとでも言いましょうか。
身の味も濃く、こちらの方が白身白身している、という印象。白身の旨味と口に残る余韻を日本酒と合わせる。もう言うこと無し、たまりません。
そして僕の大好物、活つぶの登場。見るからに立派なつぶは、開いてもこの分厚さ。前歯をやられないように奥歯でゴリッと噛めば、その期待に応えてくれるかのような素晴らしい歯ごたえ。この歯ごたえこそが、僕の考える活つぶの真骨頂。
歯ごたえが物語る鮮度の良さは味にも現れます。嫌な臭みは全くなく、心地よい磯の香りとつぶの甘味旨味が口から鼻に抜けて行きます。北海道に来たらやっぱりこれっ!大好き!!
これまでは僕の好物を集中的に注文して来ましたが、ここで気分転換。炙り口黒マスという、あまり聞いたことの無いものを注文してみました。
軽く〆られたマスの皮目が香ばしく炙られており、頬張れば丁度良い脂と皮目の旨さが広がります。〆たマスと焼鮭のいいとこ取り、というところでしょうか。
僕は鮭、マスの類はこれまた好きなのですが、これは初めての味。いい出会いを果たすことができました。
想像以上のラインナップに、思わず頼みすぎてしまいました。もうお腹も一杯。そこで最後は生うにで締めくくります。
たっぷりとあふれそうなほど載せられたウニはトロッと甘く、ほんのちょっとしょう油をつけるだけで充分。その美味しさは説明の必要も無いでしょう。
はっきり言って、あまり期待しないで入った回転寿司屋さん。ところがその予想を大きく裏切ってくれました。シャリとネタの大きさのバランスも良く、色々な種類を楽しめる丁度いい大きさ。
ネタの鮮度も良く、魚屋さん直営というのも納得。変な小細工はせず、新鮮で美味しい魚を握って出す、それが一番のご馳走と思える直球の旨さ。
そして一番驚くのがその安さ。ウニは580円ですが、普通の倍はウニが載っています。活つぶは380円と活貝としてはかなりの安さで、それ以外はみ~んな280円。
東京でこれ程の内容が280円で食べられるでしょうか?口黒マスにいたっては180円。ありえません。僕の感覚では、もっと出しても惜しくない内容でした。
これだけ食べても、食べたいと目を付けていたものの半分以下しか食べられませんでした。今度はもっとお腹を空かせて、もっとたくさんの種類を食べてみたい、そう思いながらお店を後にしました。
北海道の海の幸を堪能し、心もお腹も大満足。重たいお腹を抱え、腹ごなしに赤レンガを散策することにします。
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