1年ぶりに戯れる八重山の青。その鮮烈さを体中に満たしたら、次はお腹を八重山の味で満たす番。ということで真栄里ビーチから徒歩圏内にある『ふるさと食堂』へとお邪魔します。それにしても、相変わらず漂う魅惑のチキルーム感。
冷房の効いた室内でオリオンを味わいつつ待つことしばし、お待ちかねのミニカレー丼とそばセットが到着。食べる前から、スパイシーなカレーやそばのだしの良い香りが食欲をそそります。
まずはおだしをひと口。主張しすぎず、それでいてじんわりと広がる香りと旨味。口に入れたと思ったら、すんなり体に吸収されてしまう。この穏やかで優しい佇まいこそが、八重山そばの一番の魅力なのかもしれない。
続いてそばをずるっと。黄色味がかった太い麺は、その見た目通りしっかり目の食感。とは言っても硬いのではなく、粉っぽくモサモサしているわけでもなく。このプリッとした歯ごたえと口内を占めるような存在感は、実際味わってみないと分かりません。
お隣のカレー丼も、ふるさと食堂の名の通り王道のシンプルなカレー。大ぶりの具材と黄色いルーが懐かしさを感じさせますが、その奥にはスープの旨味と程よく効いた香辛料がベースをしっかりと支えています。
旨いカレーと穏やかなそばの往復で、気づけば最後の一滴まであっという間に完食。カレーのスパイスとコーレーグースのおかげでたっぷりと汗をかき、食後は不思議な爽快感に包まれます。
あぁ、旨かった。ふるさと食堂の名に相応しい穏やかな余韻に浸りつつ、バスで離島ターミナルへと戻ります。ここで宿に戻る前に食後のデザートを。『七人本舗』でマリヤシェイクの泡盛味を購入します。
よ~く混ぜてから飲んでくださいね、と手渡されるこのシェイク。ふつうの見た目をしていますが、底には原液の泡盛がたっぷりと隠されています。なので言うことを守らずそのまま飲むと、ストローからいきなり泡盛ストレートが来るので要注意。
1年ぶりとなる泡盛シェイク。よく混ぜてひと口吸い込めば、さっと広がるさっぱりとしたミルクの風味と泡盛の麹の香り。甘すぎず、さらっとした飲み心地。その中に漂うしっかりとした酒感は、一度味わうと忘れられません。
シェイクという名のいけない昼酒を味わい、一旦宿に戻りクールダウン。シャワーでさっと汗を流し、ベッドに転がり眺める青い空。日射と熱射が厳しいため思った以上に体力を消耗するのでしょう、気づけばウトウト昼寝をしていました。
いいなぁ、こののんびり感。敢えて予定を決めず、日常の様にのんびり過ごす。旅先ではあまり選択しないこの過ごし方も、八重山でなら一番贅沢なスタイルかもしれないと思えてしまう。
昼寝ですっかり元気を取り戻し、お腹もすいたところで夕食へ。その道中、街路樹のホウオウボクに咲く見事な赤い花。その艶やかな花を照らす、西日の力強さ。もう夕方だというのにこの陽の高さ。ここが自分の住む街から遠く離れているということを、改めて強く感じます。
昨晩が石垣と本州を行ったきりメニューだったので、今宵はしっかりと地元の味に浸ることに。今回は初めてのお店である『まだんばし家』にお邪魔します。
さっそく冷たいオリオンを喉へと流し、お通しの鮭ハラスぽん酢を。酸味としょう油の効いたぽん酢が鮭の脂をさっぱり流し、ビールと共に食欲を刺激してくれます。
まずはおまかせ刺盛の2人前を注文。見るからに旨そうな艶と色合いに、食べる前から期待が膨らみます。
二種のまぐろは赤身の味わいと脂の甘味がしっかりと詰まり、もっちりとした白身やたこも旨味たっぷり。奥に隠れたかつおも新鮮で、石垣島はやっぱり刺身が旨いと再確認。
続いてはいかげそ入りのコーンバター。げそといっても沖縄らしくセーイカのものが使われており、大ぶりなのに柔らかい食感。プチプチとしたコーンと共に噛めば、食感と共にいかの旨味をしっかりと味わえます。
旨い刺身にセーイカのげそ。案の定泡盛ロックが進み、それに合うカーリー&ポテトフライを頼みます。くるくると丸まったポテトには、ちょっと濃いめのスパイスの味付け。ケチャップをちょっとばかりつければ、一層泡盛が進むこと間違いなし。
そして〆にと選んだのは、大好物であるソーメンチャンプルー。運ばれてきた途端漂う豊かなだしの香りに、具はなくねぎが散らしてあるだけという潔さ。
これはきっと旨いに違いない。そう直感的にずすっと啜れば、しっかりと食感を残したそうめんが連れてくる優しいだしの旨味。上品な味付けながら、チャンプルーならではの油のもたらすコク。絶対に、絶対に自分では再現できない八重山の味に、思わず深く頷いてしまいます。
たっぷり食べて、がっつり飲んで、大満足。今回は頼みませんでしたがイノシシやヤギのメニューもそろっているので、次回は絶対にそれを食う!と意気込みつつお店を後にします。
泡盛の酔いに心地よく誘われ歩く、夜の石垣島。闇にぼんやりと浮かぶのは、八重山最古のお寺だという桃林寺の門。珊瑚でできた重厚な石積みと赤瓦が、ほろ酔い気分の異国情緒を一層高めてくれるよう。
車も人も、あまり通らない静かな石垣の夜。これまでの賑やかな南の島とは一変、これがある意味本来の姿なのかもしれないと感じる今年の夏。
まだ5度目、されど5度目。5回目の石垣にして初めて感じた雰囲気に、一層この島が好きになる。観光客である自分が、なかなか出会うことのできない素の表情。この静かな島を壊さぬよう、観光客として思うところのある夜なのでした。
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