波打ち際をゆったりと舞うしらさぎに誘われ、辿り着いた先が今日の僕らの特等席。海は相変わらずみんさー織りを広げたかのような色彩に彩られ、そのグラデーションを一層際立たせるかのように輝く純白の砂浜。
そのすぐ隣には、八重山の陽射しを一身に受けて咲く可憐なはまゆう。強い海風に耐えつつ揺れる華奢なその姿に、一種の凛とした気位のようなものすら感じてしまう。
青くて、白くて、眩いばかり。そんな空気感を胸いっぱいに吸い込み、肌を灼く熱さを感じたところで早速海へ。遠目では美しい青さを湛えていた海も、視座を寄せればほんのりと水色の気配を漂わせるだけ。その抜群の透明度を示すかのように、砂地の白さが煌めきます。
飽きるまで波に揺蕩うという至福を味わい、陸へと上がり甲羅干し。視界の全てを染める天然色に目を細め、こんな瞬間がいつまでも続けば、なんて叶わぬ願いを描いてしまう。
そんな夢見心地を一層豊かにしてくれる、オリオンビール。喉へと流れる冷たい刺激が、この瞬間を切り取り強烈な記憶へと昇華させてくれるよう。
喉を走る苦さに刺激され、お腹もすいたところでお昼を食べることに。離島ターミナルで仕入れたポーク卵おにぎりを頬張ります。こんがり焼かれたポークの塩気を、ふんわりまとめる優しい卵。昆布やツナマヨも入っており、これひとつでお腹も味覚も満たしてくれます。
ずっしりと重量感のあるおにぎり片手に眺める、この景色。抜けるような青空と、その青さの全てを吸い込み映す海。竹富の豊かな緑の先には、青い影となり横たわる石垣島。
これを絶景と言わずして、何を絶景と呼ぶのだろうか。造られたお仕着せではない自然の色彩美は、写真や映像では決して伝わらない。海風を浴び、波の音を聞き、そして肌を灼く熱さを感じながら肉眼で見るからこその、質量を伴う美しさ。
八重山に来るたびに訪れる、コンドイビーチ。毎年毎年その青さに感動するけれど、今年の鮮烈さは格別だった。この3日間、あまりにも、あまりにも鮮やかすぎて。今年ここで目にした光景は、死ぬまで大事に持っておこう。
自分も含めた世の中全体が、ガラッと変わってしまった2020年。そんな中で、奇跡的にここでこうして感じることのできたかけがえのない実体験。その灯が心にある限り、僕はきっとまたここに戻ってくることができるはず。
何があっても、季節はまたやってくる。そのことを教えてくれるように、道しるべにぽつんととまるセミの抜け殻。そういえば、昨日まで聞こえなかった蝉の声が、少ないながらも聞こえてくる。耳に届く風物詩に、心は一層夏色に。
4年前、初めて訪れた沖縄県。夢見心地で石垣空港に降り立ち、その足で訪れた最初の地である竹富島。もしかしたら、あの日がなければ、この幸せを知らずに死んでいったかもしれない。そう思わせるほどの初見の強烈な感動を、今回は軽々と超えてきた。
一度は諦めかけた、今年の八重山旅。今感じている、目にしているもの全てが、言わば儲けもんのようなもの。だからこそ、偶然がくれた宝物を大事にしたい。そんな新たな記憶を胸に刻み、涼しい海風が吹き抜ける静かな待合所でこの島を発つ船を待つのでした。
コメント