道中3泊掛けて辿りついた、この旅最後にして最大の目的、弘前ねぷた。既に僕にとって夏に無くてはならない、大切な行事になっています。
今年も何とか休みとホテルを確保し、再会することができたねぷた。その幸運に喜びと感謝を噛み締め、出陣の時を今か今かと待ちわびます。
そしてついにやってきた、先導役を務める青森県警のパトカー。車体に描かれた白鳥が、今年も僕の夏を連れて来ます。
僕の本当の夏の幕開けを告げる、津軽じょっぱり大太鼓の重厚な音色。すぐ目の前から発せられるその音は、振動となり僕の心臓へと伝わってくる。その振動と共鳴するように、僕の五感の全てが奮い立つ。さあ、今年も夏が始まった!
先陣を切って歩いていた市長さん。例年以上の人出らしく、嬉しくて仕方ないと言われていました。その通り、今日は歩道も人で埋め尽くされ大賑わい。今年も座って見られる席を用意して頂いた弘前国際ホテルさんに感謝です。
ヤァーヤァドー!熱い掛け声と、涼しげでどこか寂しげな笛と鉦の競演。ただただ熱いだけではないその深さが、僕がねぷたに魅かれてしまう理由のひとつ。
津軽人の気質を表すことば、じょっぱり。その名を冠した地酒を片手に味わう弘前の夏の夕べ。その辛口の酒のように猛々しさを感じさせる鏡絵を見れば、酒の火照りがそのまま体の芯まで沁みてくるよう。
でも無駄に暑苦しいのではない、それがねぷた。過ぎ去るねぷたに描かれた見送り絵は、鏡絵の燃えるような情熱とは違う物悲しさがある。その対比に、何故か胸がざわつくような切なさを感じるのです。
次から次へと、暇なくやってくる大小のねぷた。扇ねぷたの間には迫力のある組ねぷたも混ざり、また違う勇壮さを魅せてくれます。
そして今年も逢えました、僕の大好きな金魚ねぷた。小さいものは子供に持たれたり太鼓の屋台に付けられたり。大きいものはこうして道を左右に自在に練り歩いたり。
今度は立派な石垣とたか丸くんの組ねぷたが。でもいつもとはどうも様子が違う。良く見てみると、たか丸くんはヘルメットをかぶっています。どうやら弘前城の石垣の工事を今行っているようです。
現場のお兄ちゃんスタイルの可愛いたか丸くんを見送ると、背後には「弘前城が動く」の文字。何の予備知識を持たなかった僕は、この時は頭の中はてなだらけ。
ここからは後半戦、たくさん撮った写真から、特にきれいだと思ったものをご紹介。
ひと口に扇ねぷたと言っても、描かれた絵だけではなく、大きさや形、光の具合まで様々。
武将や戦いの絵が多いねぷたですが、中にはこのような絵も。たこやかに、ひらめや鯛など、たくさんの海の幸を一網打尽に。見ていて飽きません。
こちらには睨みを利かせた大ガマが。その目力と質感が、見る者を捉えます。
大小様々なねぷたが何台も、何台も練り歩く弘前ねぷた。出陣時間は2時間以上に渡り、圧倒的な迫力と美しさで観客を魅了します。
そして今夜は、桃太郎のねぷたで終了。道路に陣取っていた人々は、皆名残惜しそうに、行くねぷたを追って歩きます。
でも焦らなくても大丈夫、僕には明日もある。皆の行く方向の逆へと進み、今年も『かくみ小路』をふらふらと。
そして今年は、新しい友がいる。馬鹿塗りと称されるほど丁寧に、頑丈に塗られた、津軽塗の桐下駄。かっ、かっ、と、小気味よい凛とした音を、足元で奏でている。
その足音に酔いしれ、そして今年もアップルブランデーに酔いしれる。弘前の夜には、アップルブランデーが良く似合う。今年も弘前に来ることができた幸せを、ねぷたの余韻と足に感じる塗りの感触が、一層深いものにしてくれるのでした。
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