ホテルに荷物を下ろし、やってきました、『けん太居酒屋』。ここに来ておけばまず間違いなく青森の旨いもの、旨い酒が楽しめるので、今年もちゃっかりお邪魔してしまいます。
まず始めはさっぱり目のものから。夏に嬉しい冷奴は、地元で美味しいと評判の、黒石市は奥瀬豆腐店の絹豆腐。
ひと口含めば、滑らかな舌触りながら、クリームやペーストのような印象を感じさせる、とても濃いお豆腐。豆の味が濃いので、しょう油に負けるどころかしょう油が豆の甘味の引き立て役に。
そして毎年必ず頼んでしまうほや。つい数年前までほやが食べられなかったなんて嘘のよう。現地で本当に新鮮なものを食べないと、ほやの美味しさは分かりませんね。
いつもは誘惑に負けてお刺身を頼むのですが、今回やっと、初めてほやの水物を注文することができました。昆布だしに漬けられて冷やされたほやは、ほんのりとした塩分と昆布の香り、旨味を纏い、しょう油で食べるお刺身とは一線を画す味わい。こちらの方がほやの持つ風味がより味わえます。
一緒に添えられているのは、こちらも僕の大好物である、山菜のみず。青森の地酒、いくらあっても足りません。
続いては、弘前の郷土料理であるいがメンチのアレンジ版である、焼いたいがメンチ。いかの弾力や風味が程よく残る丁度良い粗さのミンチで、和風ハンバーグ風のしょうがの効いたソースが良く合います。添えられた大根おろしやマヨネーズがまたピッタリ。
こちらはいかの塩辛。色からしてまろやかクリーミーそうなこの塩辛は、塩分は適度にありつつ、嫌な磯臭さの無い優しい味わい。少しを口に含みいかわたの風味が広がったところで地酒を煽れば、幸せになること間違いなし。
今年もまた美味しいおつまみのオンパレードで、気を付けないとねぷたが始まる前に撃沈してしまいそう。そこで最後の〆にと、津軽そばサラダを注文。大豆をつなぎに使い、ほろほろと崩れる不思議な食感が特徴の津軽そば。その麺を使い、オリーブオイルベースのサラダに仕上げています。
コシの強い麺だと、サラダというよりしっかりと麺料理になってしまいがち。ところがブチブチと切れやすい津軽そばを使うと、ドレッシングや敷かれた野菜、載せられた納豆やとんぶりと口の中で良く合わさり、本当にサラダのような感覚。そばの風味も主張しないので、新しい美味しさを体験できます。
今年も美味しいお酒と料理で、弘前に来たことを強く実感させてくれたけん太。ねぷたが控えていなければ、ガッツリいっちゃうんだけどなぁ。わざわざねぷたを見に来ているのに頭をよぎる、悪い誘惑です。
それでもそこは毎年首を長~くして楽しみにしているねぷた。程よきところで居酒屋を出て、暮れゆく弘前の街をホテル目指して歩きます。
そして今年は、初めてのスタイルでねぷた鑑賞。津軽塗下駄を扱う『ゑびすや履物店』にお邪魔をし、憧れの津軽塗の下駄をついに手に入れてしまいました。
僕は、春から秋まで、出勤以外の日には基本的には下駄を履いています。通気性の良さ、背筋が伸びる感覚、そして歩きやすさ。小さい頃から下駄が好きでしたが、一度下駄の使い勝手に馴れてしまうと、やめられなくなるのです。
これまで履いていた下駄がちびってしまい、東京で買おうか延々悩んでいたいたこの夏。この旅の道中で津軽塗の下駄を買うことを思い付き、調べてこちらのお店にお邪魔しました。
津軽塗はお箸でも結構なお値段。今回は見るだけでもいいやと思い店内に入ってみると、意外にも手の届く金額で買えることが発覚。そうとなれば心が買う方向へ行ってしまうのが、僕の性。
男性用の台は、黒、緑、そしてこの青の三色の在庫がありました。写真では伝わりにくいのですが、この青がとてつもなく良い色なのです。言うなれば、夏の津軽海峡のような、温かくも深く、奥底に冷たさを湛える青。津軽海峡のような色の津軽塗、一目惚れでした。
鼻緒も好きなものを選ばせて頂き、目の前ですげてもらいすっかり上機嫌。よし、今夜はこの下駄を履いて、ねぷたを見よう!裸足に感じる弘前の夜風とねぷたの熱気。それを想像しただけで、胸の昂りは最高潮を目指して加速してゆくのでした。
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