大自然の造り上げたここでしか見られない光景を目に焼き付け、今宵の宿のある金浦温泉を目指します。予約時にお願いすれば象潟駅から送迎して頂けるのですが、九十九島から駅へと戻るのとそう変わらない距離だったためそのまま歩いてゆくことに。
いやぁ、それにしても暑いなぁ。なんてご機嫌で歩いていたのも最初の内だけ。最後の最後で長い登りが続き、到着する頃には全身汗でびしょびしょに。このままチェックインするのはなぁ、と思ってしまうほど。
ねむの丘から島めぐりをしつつのんびり歩くこと約1時間半、ようやく今夜の宿である『金浦温泉学校の栖』に到着。昭和55年まであった小学校の跡地に建っているというのが、その名の由来のようです。
フロントの方に象潟から歩いてきたんですか!?なんて驚かれつつチェックインし、早速お部屋へ。部屋番号は学校の教室をイメージし、何年何組と書かれています。
お部屋はゆったりとした8畳の和室。早速荷物を下ろし、汗だくの服を着替えて大浴場へ。日帰り利用もできるため、日中は地元のお客さんで大賑わい。お風呂の詳しいご紹介は、また後ほどに。
なんでこんなところにこんな温泉が湧くの?というような濃い硫黄泉を満喫し、部屋へと戻り冷たいビールを。肌から香る硫黄の残り香を噛みしめつつ味わう、心地よい苦み。あぁ、たまらん。これがあるから、温泉旅はやめられない。
畳の感触に歩き疲れた体を癒し、再び湯浴みを楽しんだところで夕食の時間に。さすがは漁港の近い宿、のどぐろの塩焼きや甘鯛の蒸し物、お刺身に牡蠣飯など海の幸がたくさん並びます。
それぞれシンプルに味付けされた魚介と地酒を味わっていると、お鍋がぐつぐつと煮え上がります。こちらにもたっぷりと海鮮が入り、ちょうどよい塩梅のおだしに魚介の旨味が溶け出ています。
おさかな尽くしの夕食に舌鼓を打ち、お腹を落ち着けたところで今夜のお供を。まず開けたのは、由利本荘市は天寿酒造の鳥海山純米吟醸酒。嫌な癖のない、すっきりと飲みやすい美味しいお酒。
ぼんやりと地酒を味わい、気が向いたら浴場へ。こちらの源泉は、単純硫黄冷鉱泉。大きな浴槽にはそれを適温に温めたものが掛け流され、いわゆる山の温泉にも引けを取らない濃厚な濁り湯を味わえます。
左奥の浴槽には玉川温泉で有名な北投石を使った人工温泉が満たされ、その隣の小さな浴槽には硫黄泉が加温されずそのまま掛け流されています。その冷鉱泉がまた絶妙。入るときは冷たく感じるのに、じっとしているとじんわり温まってくる。この感覚は癖になりそう。
湯上りぽかぽか、肌すべすべの余韻に浸りつつ、次なるお酒を開けることに。能代市の喜久水酒造、特別純米喜一郎の酒を選んでみました。というのもこのお酒、旧奥羽本線の廃トンネルで貯蔵したものだそう。口当たりなめらかで、すいすいと進んでしまう飲みやすく旨い酒。
まさか海の近くにこんな濁り湯があるなんて。火山にありがちな酸性泉にはない、刺激はないが肌へとみっちり吸着、浸透するような独特な浴感。体から漂う硫黄の香りに、お酒以上に心酔してしまうのでした。
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