短くも濃厚であった、僕の青森での夏休み。熱い、熱い3日間が、間もなく終わろうとしています。
駅と八甲田丸は目と鼻の先。近くのA-FACTORYで地元の名産品やお土産を見て、列車までの時間を船のそばで過ごすことに。
どれだけ見ても飽きることのない、青函連絡船。荒波の津軽海峡に耐え抜く力強さを持ちつつも、曲線で構成されたファンネルやブリッジ、船首の美しさ。
国鉄が生み出したこの船は、まさに海峡の女王と呼ぶに相応しい、唯一無二の存在。その姿を、心ゆくまで目と胸に刻み込みます。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもの。もう青森を発たなければならない時刻に。
青森から新青森まで一駅、奥羽本線に乗車。今回は青い森鉄道の車両がやってきました。JRから第3セクターへ分離される際に譲り受けたこの車両。青い森鉄道のキャラクターであるモーリーと、そのカラーがラッピングされています。
新青森で駅弁とワンカップを仕入れ、ホームで新幹線を待ちます。間もなく入線してきた、E5系はやて。西日を受けてグリーンのボディーを輝かせ、颯爽とホームへと滑り込みます。
東北新幹線新青森開業からもうすぐ2年。在来線ならではの旅情が減ってしまうのは悲しいことですが、こうして便利になったからこそ、思い付きで青森へ遊びに来ることができるようになりました。
車窓には青々とした田んぼが広がり、その流れるスピードが段々と速くなります。青森ともしばしの別れ。6月に訪れて以来、すっかりこの地に魅了されてしまいました。
暮れ始めの車窓を眺めつつ、ちびちび飲むワンカップ。今回は、弘前は丸竹酒造店の白神ロマンの宴をチョイス。辛口ですっきりとした中にも旨味を感じる、僕好みのお酒。
東北路を駆ける車内で最後の青森グルメを。今回選んだのは、弘前の秋田屋が調製する、津軽マッコ弁当。マッコとは馬のことで、桜肉を思わせるピンクの掛け紙が目を引きます。
津軽で丹精込められて飼育された馬肉、温泉熱を利用して醸造された津軽味噌、津軽の大地が育んだお米まっしぐらと、津軽尽くしのお弁当。
この駅弁、とにかく旨い!の一言。あまりこの手のお弁当は買わない僕ですが、以前食べた母が美味しいとしきりに言っていたので、思い切って購入。その気持ちが分かりました。
適度な厚さに切り落とされた馬肉は、食べ応えがありつつ丁度よい柔らかさ。クセや臭みは全くないが、ほんのりと香る桜肉の風味。コクのある甘辛な味噌だれがしっかりと絡み、肉の脂の旨さを引き立てます。
馬肉とたれの織り成す旨さがもちもちのご飯に程よく浸みており、ひと口、またひと口と食べ進んでしまいます。玉ねぎやパプリカが食感のアクセントとなり、飽きずにペロッとあっという間に平らげてしまいました。大げさでなくもう一つ食べたいくらい。
桜肉のほんのりとした余韻を楽しみつつ、この旅最後の日本酒を。鰺ヶ沢は尾崎酒造の、山廃純米白神山地の橅。先ほどのワンカップ同様、青森での列車旅のお供として何度か飲んでいる美味しいお酒。
間もなく日が暮れ、車窓は闇一色に。3日間で体験したこと、味わったものを思い出し、お酒と共に胸へと落としていく。この作業が旅の締めくくりには欠かせない。
ひたすら熱かった、夏の津軽での3日間。ねぷたで、海で、旨いものでと、消えることのない炎のような熱い思い出を僕の胸に焼き付けてくれた津軽。
一度この夏を体験してしまうともう戻れない。来年もまたねぷたやねぶたを見に来ると強く胸に誓い、そっと目を閉じて耳に残る「やぁーやどぉー」の火照りを噛み締めるのでした。
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