のどかな漁港の雰囲気と、照りつける夏の暑さで楽しませてくれたこの深浦の街とも、もうお別れの時間。2時間ちょっとで驚くほど真っ赤に日焼け。ここで見た夏の景色は、肌だけでなく心にもしっかりと焼き付きました。
帰りのリゾートしらかみは、今回初めて乗る橅編成。白神山地を思わせる深い緑を基調にした車両です。これで、元しらかみ三兄弟は全制覇。あとは新型青池編成に乗れば完璧です。
列車はディーゼルの力強い唸りを上げ、ゆっくりと深浦駅を出発。先ほどまで見ていた海岸線の景色がどんどんと近くなり、過ぎ去ります。
たった2時間ちょっとの小旅行。敢えて何もせずのんびり散策したからこそ、この美しい景色を堪能し、心に焼き付けることができた。たまにはこんな旅の仕方もいいのかもしれない。またひとつ、新しい旅の楽しみを見つけました。
車内販売で冷たいビールとほやの燻製を購入。じりじりと暑い日差しで火照った体と喉に、嬉しい冷たさと刺激を届けてくれます。
流れる日本海の車窓をただただ眺め、飲み干すビール。何とも言えない風味が醍醐味のほやの燻製が、先ほどまでの潮の香りを彷彿とさせるかのよう。あぁ熱い。何から何まで熱い。この津軽の地で、これでもかというほどとことん夏を満喫します。
列車はしばらく走り、千畳敷駅で小休止。このリゾートしらかみ3号だけ、千畳敷でしばらく停車し景勝地散策を楽しむことができます。
簡素な駅から国道を渡れば、もうそこは千畳敷。広大なこの岩場は昔の地震で隆起してできたそうで、津軽の殿様が千畳もの畳を敷かせて宴会を開いたとされることから、この名前が付いたそう。
だだっ広い岩場の表面は大小の凹凸があり、所々に天へと伸びる奇岩が点在。中々見ることのできない光景に興味津々で歩きます。
季節は夏真っ只中ということもあり、海岸には老若男女、様々な人々がのんびりと過ごしています。こんなところで一日中日向ぼっこ、気持ちいいんだろうなぁ。
短い夏を楽しもうという人々で賑わう海の家(ドライブイン?)を発見。もしやと思い覗いてみると、予想は的中、美味しそうなものを見つけてしまいました。
ということで、想定外の車内海の家開催♪冷た~い生ビールに、海と言えばこれ!の焼きいか、プリッと美味しそうな岩がきを購入。いやぁ、どこまでも海の続く車窓を眺めながらのこのラインナップは文句の付けようがありません。
大海原をつまみに頂く海の幸。幸せいっぱい、胸いっぱい。そして美味しさいっぱいの列車旅に、心底酔ってしまいそう。
そんな贅沢な車窓も、そろそろ海とはお別れの時間。夏の津軽西海岸の空気感を、思う存分心に焼き付けます。
帰りも津軽三味線の生演奏が。たった2時間で今年一番日焼けした肌の熱さが、三味線の音色に乗って心まで沁みてきます。
反対側の車窓へと目をやれば、りんご畑の向こうに佇む岩木山。この熱くて短い津軽の夏を見守るかのように、穏やかでありながら力強く裾野を広げます。
濃厚な夏を満喫した、リゾートしらかみの旅。前回の荒れた日本海もさることながら、今回の夏真っ盛りの暑さも、僕の中での五能線の顔となりました。
充実した小旅行を楽しんだ後は、ねぷたを前に腹ごしらえ。弘前の中心地に位置する郷土料理のお店、『菊富士』で景気付けすることに。
まずは深浦産もずく酢。先ほどまで眺めていたあのきれいな海で育ったもずくは歯ごたえがよく、つるりとしたのど越しの良い粘りが火照った体に嬉しい爽やかさ。
お隣は、イカ肝だけの塩辛。ただでさえ好物である塩辛が、いかのわただけで作られているなんて・・・。僕に飲ませようとする罪な奴。
一歩間違えれば生臭くなってしまいそうなこのメニューも、青森の新鮮ないかにかかれば心配無用。濃厚でまろやか、旨味の存分に詰まった肝の塩辛を一口含めば、間髪入れず日本酒が欲しくなります。
続いて身欠鰊の醤油漬け。身欠鰊独特の凝縮された旨味と脂がしょう油に程よく漬かり、噛めば噛むほどじんわりと味が染み出るひと品。これももちろん、ポン酒でしょう。
こちらはアツアツばっけ味噌豆腐。あつあつの湯豆腐の上に、ばっけ味噌(ふき味噌)がたっぷりと載せられています。豆腐の優しい豆の旨味に、ふきのとうのほろ苦さがベストマッチ。あぁ、地酒が止まらない・・・。
ここまで、我ながらあまりにも渋いラインナップだったので、ここでちょっと揚げ物を。朝食べて美味しかったいがメンチを注文しました。こちらのいがメンチは揚げか焼きを選べるのも嬉しいところ。
出てきたのは、大きなボール状のいがメンチ3個。結構なボリュームです。一口噛めばふんわりとした食感といかの風味を楽しめ、ちょっと濃いめの味付けもまたお酒にぴったり。東京の居酒屋にもぜひ欲しいメニューです。
ここまで来たら満腹覚悟で青森の幸を食べつくしてやろう!と注文した、リンゴと帆立のグラタン。思った以上の大きさで、案の定食べすぎだよ、と思いつつひと口パクリ。
クリーミーで丁度良い濃度のホワイトソースがまず美味しく、旨味を持ったほたての身と相性バッチリ。ほたてとりんご?と思っていたりんごも、こうして食べると立派な料理の主役のひとつ。
控えめで嫌みのない甘さと酸味、焼くことで生まれる独特な食感がグラタンにピッタリ。グラタンにりんご、絶対真似してやろう!と思わずひとりうなずきます。
津軽の郷土料理から青森の恵みを使った創作料理まで、色々なメニューを楽しめるここ、菊富士。大当たりのお店に大満足し、地酒が進んだことは言うまでもありません。弘前に来たらまた来たい、そう思えるお店に出会え大満足。
美味しい料理に旨い青森の酒を堪能し、丁度よく景気が付いたところでホテルへと戻ります。ざっとシャワーを浴びて火照りを醒まし、お待ちかねのねぷたを今か今かと待ちわびるのでした。
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