いつもはスキー旅行の模様をご紹介するこの時期。ですが、来シーズンまでニセコのお気に入りの宿が改築のため休業ということで、北海道スキーはお預け。
本州スキーも考えましたが、いつもスキーばかりの冬の旅行、折角なので行ったこと無いところへ行ってみよう!と一念発起。冬=海の幸=かに!?と妄想が膨らみ、松葉がにを追い求め冬の山陰へ行くことに。未踏の地である山陰を訪れる良い機会に恵まれました。
ということで、今回の旅のスタートは東京駅東海道線ホームから。かつて幾多の九州方面寝台特急が出発した歴史あるこのホームも、今はサンライズ号を残すのみ。寂しいものです。
サンライズ号は時刻通り東京駅のホームへ滑りこんで来ました。登場以来、ずっと乗ってみたかったサンライズ号。名の通り曙を思わせるボディーが、夜の東京駅の灯りを受け輝きます。
サンライズは14両編成。前7両が高松行きのサンライズ瀬戸号、後ろ7両が僕らの乗る出雲市行き、サンライズ出雲号。出雲市という行先を目にし、未乗の列車と未踏の地への期待が一気に膨らみます。
JR初の電車寝台であるこの車両。JRとミサワホームが共同で設計したということもあり、車内はとてもきれいで落ち着いた雰囲気。いたるところに使われる木目が温かさを演出します。この廊下に入っただけでも、今夜の快適な旅が約束されたような気がします。
今回は2人旅だったのでサンライズツインを指定。この部屋は禁煙、喫煙合わせて1編成に4部屋しかないので倍率もそれなりのもの。1ヶ月前の10時打ちでしっかりGETしました。
サンライズツインのある車両は2階建て構造になっており、ツインへは廊下から階段を下り、左右にあるドアから入ります。入口にはテンキー式の鍵が付いており、荷物の多い旅行者にも安心。
ドアを開けると落ち着いた木目調の部屋とまっ白なシーツが掛けられたベッドがお出迎え。
写真でこのアングルを見ると閉鎖的な印象を受けるかもしれませんが、実際はきちんとした2階建てのため天井高もそれなりにあり、向かって左手に大きな窓があるので、狭さはあまり感じません。
枕の上には絵葉書にもなるサンライズの設備紹介のカードが用意されています。食堂車や車内販売のような設備はありませんが、ソフトドリンクの自動販売機やシャワー室、ミニロビーといった、一夜を快適に明かすことのできる設備が整っています。
ベッドは線路方向へ平行にセットされており、片側には大きな窓が、片側には荷物置き場があります。
2階建ての1階ということもあり、少々視点は低いですが、いつもとは違ったアングルから眺める車窓もまた一興。ただ、ホームからは丸見えなので着替え時や浴衣着用時にはちょっとした配慮をしたほうがいいかもしれません。
ブラインドを閉めて浴衣に着替え、荷物の整理をしているうちに出発の時刻に。この車両はカシオペア等とは違い自走する電車なので、発車時の衝動も乗りなれた電車のそれと同じもの。
電車特有のカクンとした小さな衝動と共に始まる滑らかな加速。頃合を見てブラインドを開ければ、今まさに列車は東京駅を飛び出すところ。これから約半日を掛け、僕を雲いずる国へと連れて行ってくれます。
東京脱出を祝し、乾杯を。今回はグランスタにある酒屋さんで仕入れた赤のスパークリングで祝杯をあげました。
古い客車の持つ夜行独特の雰囲気の中での日本酒もオツですが、新しくて明るく落ち着いた雰囲気のサンライズにはワインがぴったり。
流れゆく東京の夜景や京浜工業地帯の煙突を眺めつつ飲むお酒は、寝台列車ならではの醍醐味。この旅情に、相方もまんざらでは無さそう。
実は、今回の行先を決めたのも、サンライズに乗ることを決めたのも相方。出雲へ行くならサンライズありき、とまで言っていました。僕の長年にわたる洗脳の効果が現れてきたのでしょうか。どうであれ、とても良い傾向です(笑)
列車は軽快に東海道をひた走り、早くも小田原を過ぎました。まもなく、関東脱出。何度旅をしてもこの瞬間は堪りません。流れる灯りがより一層、気持ちをたかぶらせます。
根府川、真鶴と通過し、湯河原駅に停車。この駅を出ればまもなく東海地方へと入ります。関東を出る前に、東京の銘酒澤乃井でひとり乾杯。相方はすでに寝息をたてていました。
前回の北斗星と違い、それほど飲んでいないのに寝つきのいいこと。サンライズはそれだけ快適であるという証なのかもしれません。
列車はトンネルを幾つもくぐり熱海駅に到着。寝静まった熱海駅には、伊豆急行の車両である「トラン・バガテル」が留置されていました。
寝る前にトイレに行ったついでに車内探検。乗車した12号車のすぐそばにミニロビーがあったため、そこへ座ってしばしの瞑想タイム。
時折灯りの流れる車窓を、何を考えるでもなくのんびり見つめる。溜まりに溜まった心身の「凝り」を解きほぐしてくれる。夜行列車にはそんな不思議な力が宿っています。
列車はなおも夜の東海道を、軽快なリズムを刻みながら疾走します。まもなく沼津駅に停車。
初のサンライズにテンションは上がりっぱなし。でも明日はこれまた初の山陰地方入り。明日からの未知との遭遇に備え、おとなしく床に就くことに。
念願のサンライズに揺られ、落ちゆく夢の国。消えつつある夜行列車、寝台特急での至極のときを、そのリズムと共に体と心に刻みつつ、深い眠りへと誘われるのでした。
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