出雲、松江と街歩きし、程よく疲れたところで今夜の宿にチェックイン。今回お世話になるのは、大橋川沿いにある『野津旅館』。松江駅からも程近く、夕飯の食べられるお店も回りにたくさんあるという便利な立地。
そして驚くべきは、その安さ。もともと安い旅館では無いようですが、じゃらんのプランで破格の一人3000円台。安いからと少し不安になっていましたが、お部屋もきれいでトイレつき。1階眺望なし、6畳、素泊まりではありますが、こんなに安く泊まっていいのかな?と思ってしまうほど。
もともと松江は素泊まりで、と考えていたので、ビジネスホテルに泊まるつもりでした。が、この旅館に決めたのは、安さと和室、そしてこのお風呂。
露天風呂からは大橋川が眺められ、開放的な雰囲気。お湯は松江しんじ湖温泉から汲み湯しているそうで、無色透明ですが温まるお湯。
宍道湖に輝きを落とす西日を眺めながらの入浴は、気持ち良さも一入。このお値段で大浴場付き。ビジネスホテルになんか泊まらなくて正解と思えるお宿でした。
お風呂で汗を流し、一息ついて夜の松江の街へ。ある程度お店を絞っては行きましたが、ブラブラ歩きながらお店を物色することに。
そして結局入ったのは、旅館の真隣にある、『てまひま料理 根っこや』。立派な木の内装の店内には、大橋川を眺められるカウンター席も。落ち着いた、おしゃれな空間が広がっています。
宍道湖に来たからには、やはりしじみ。ということで、まずは特大大和しじみの酒蒸しを注文。
しじみといえば、身を食べようにも上手く行かないような小さなものをよく目にしますが、特大と言うだけあり結構な大きさ。
しじみの美味しいだしがギュッと出た汁は説明不要の美味しさ。身も、その大きさからプリッとした食感がきちんとあり、しっかり貝を食べていると実感できるもの。海水に住む貝とはまた違った、しじみ独特の上品でありながら濃厚な旨味を楽しめる一品。
続いて、山陰の海の幸を堪能しようと注文した刺身の盛り合わせ。
この日は鯖、めだい、いさき、さわら、ぶり、しろうお、たこ、いくらの、なんと8種盛り。それを添えられた生わさびを自分でおろしながらいただきます。
鯖は新鮮でなければ食べられない、〆ていない生の鯖。鯖とは思えないほど臭みが無く、それでいて脂ののりはバッチリ。生鯖こそ、海沿いへ行かないと食べられない贅沢品。
めだい、いさき、ぶりも東京で食べるのとはまるで別物。比べること自体が失礼だと思ってしまうほど。新鮮さが命のお刺身は、どう頑張っても産地には勝てません。
さわらは、イメージしたものよりも更に歯ごたえが良く、これまた美味。しろうおは獲れたてなのかピンとしており、噛めば見た目に似合わないちょっとした歯ごたえと共に甘味が広がります。
少しはお肉も食べたいと思い、注文したのはイノシシの炭火焼。炭火でこんがりと香ばしく焼かれたイノシシを、塩コショーといったシンプルな味付けでいただきます。
僕の好物、イノシシ。こうやって食べるとやっぱり美味しい。豚とは全く違う力強さがあります。といっても、決して獣臭い訳ではなく、赤身はしっかりとした肉の旨さが、脂身には独特の甘さがぎっしり詰まっている、というもの。
霜降り肉が主流となりつつある中で、これぞ肉!という野性味溢れるイノシシを食べれば、何だか力が湧いてくるような気がします。
松江の夜を彩る美味しいものたち。そんな強豪を抑えての、今晩の第一位はこちら。十六島(うっぷるい)海苔のおにぎりです。
1個420円のおにぎり。ちょっと高めかなぁ、と思いつつ一口頬張れば、目の前には波打ち際が広がっているかと思うほどの磯の香り。しょう油で湿っているにもかかわらず、水分に負けない海苔のコシ。
普通のしょう油むすびに海苔を巻いただけのものなのに、尋常じゃないほどの美味しさ。この海苔の美味しさに、今夜一番の感動を覚えてしまいました。
この海苔があまりに美味しかったので、翌日松江駅のお土産屋さんでチェックすると、板海苔が5枚入りでなんと3000円オーバー。それを考えると、このおにぎりのお値段は意外と安いのかも。
ちなみに、家に帰って調べてみると、十六島海苔は12月~1月の短い間に、荒い波が押し寄せる厳冬の日本海の岩場で採取されるとのこと。その大変さを思うと、高いのも当然なのでしょう。
しじみ、お刺身、イノシシ、海苔と、美味しい物尽くしの幸せな夕食。お店でもそれなりに飲んではいましたが、せっかくの初島根泊、これで寝てしまうのはもったいないというもの。
ということで、部屋で二次会と行きましょう。今夜のお供に選んだのは、地元松江の米田酒造、豊の秋純米酒。ほんのり香ばしさを感じさせるような香りをもつお酒は、口に含めばとろりとし、まろやかな甘味、旨味を感じます。
出雲のお酒もそうでしたが、ここのお酒も今まであまり飲んだことの無いタイプ。山陰地方、またひとつ、僕の好みの酒どころが増えそうな予感。
そんな美味しい地酒のアテには、山陰名物あご野焼きを。飛魚を使ったちくわなのですが、出かける前から相方が野焼き野焼きうるさかったので、正直まったくなじみの無い僕にとっては何がそんなに違うのか想像が付いていませんでした。
パッケージを開けると、全面がしっかり焼かれたちくわが登場。その見た目通り、魚が焼かれた香ばしさを全身に纏い、食欲をそそることこの上なし。
かじって食べるのかと思いきや、ちぎりながら食べるのだそう。言われたとおりちぎって口に運べば、しっかりと味付けされた中に感じる、濃い魚の旨味。
でも練り物をちぎったら手が臭くなるなぁ・・・。とちょと嫌になって指を嗅いでみるとビックリ!生臭さは全くなし。その残り香だけで日本酒のアテになるかのような、何とも香ばしく、いつまでも嗅いでいたい香り。
飛魚って、青魚なはず。でも、その飛魚をたっぷり使ったはずのこの野焼き、全く臭みが無い。そうとう水に晒しているのか?とも思いましたが、それにしては魚の旨味、風味がギュッと凝縮されている。これはこれは不思議な食べ物。東京ではお目に掛かれない、まさに山陰の味です。
今日一日、初めての山陰で初めての味覚を思う存分堪能しました。明日は憧れの名湯、三朝温泉へ。そこでいよいよ、タグの付いた赤いヤツとご対面です。
コメント