錦秋の岩代路 ~秋の福島ひとり歩き 4日目 ⑥~

在りし日の不動湯温泉夕食1

それぞれ浴感の異なる温泉を2種楽しみ、のんびり過ごす秘湯の宿でのかけがえの無い時間。そんな贅沢を楽しんでいると、夕食のお膳が運ばれてきました。もう今日一日でどれほど歩いたことか。お腹はそれに比例してペコペコです。

運ばれてきたお膳は2つ。岩魚の塩焼きは僕の大好物で、間違いない美味しさ。きのこおろしは山形で採ってきたものだそう。つるんとした心地良い口触りと豊かな風味を楽しめます。

本当ならば、福島はこの時期きのこの天国。一日も早く福島の美味しいきのこを食べられるようになって欲しいものです。そのほかに、お浸しやお漬物が並びます。

在りし日の不動湯温泉夕食2

こちらのお膳で目を引くのが鯉の洗い。育った水がいいのか、はたまた調理の仕方がいいのか。多分そのどちらもなのでしょうが、全く臭みが無く、噛めばコリコリとした歯ごたえと、淡白ながらしっかりとした旨味を感じられます。まさに山の宿を実感できる一品。

舞茸やれんこんなどの天ぷらは抹茶塩でいただきます。温かいものは温かく。お部屋出しのお食事は大変でしょうが、そんな宿の心配りがとても嬉しい。さといもと山くらげの煮物は上品な薄味で、素材の味をシンプルに楽しめます。

不動湯温泉オリジナルラベル日本酒

そんな美味しい品々が並べば、必然的に欲しくなるのがこの日本酒。不動湯温泉のオリジナルラベルが貼られたお酒です。

このアングルから眺める不動湯温泉は、文字通り山の中の一軒宿。深い山々の中央にポツンとある赤い屋根。僕は今まさに、その中で美酒美食を堪能しているのです。

あぁ、本当に幸せだ。食事を邪魔しないバランスの取れた味と共に、山のご馳走を一層豊かなものへと昇華させてくれる、そんなお酒。

在りし日の不動湯温泉きじ鍋

鍋がグツグツと良い音をたて始めました。きじ肉に姫竹、きのこ、銀杏など、山の食材が詰まっています。ダシは薄味ですが、きじからしっかりだしが出ているので旨味たっぷり。

熱々のきじ肉を頬張り日本酒を一口。合わないわけがありません。この上ない贅沢を、旨味の詰まったきじ肉と共に噛みしめます。

在りし日の不動湯温泉鯉こく

最後にご飯と共に出されたお味噌汁。中には鯉が入っており、そのプルプル、ほろほろの身は絶品。鯉から溶け出しただしとほんのりとした脂が味噌の風味と良く合い、これだけでご飯がいくらでも食べられそうなほど。大袈裟でなく、こんなに美味しい鯉を食べたのは初めてでした。

滋味溢れる山のご馳走が並ぶ夕餉。そのひとつひとつを味わいながら日本酒を楽しむ。山の宿への期待を裏切らない、それ以上の美味しいお料理を出してくれたお宿に感謝です。本当に美味しかった。

不動湯温泉夜の露天風呂

お腹一杯幸せ一杯の食後のひととき。膨れたお腹が落ち着いたところで再び温泉へと向かいます。

夜の露天風呂はすでに肌寒い空気に包まれており、お湯を楽しむのに丁度良い気温。漆黒の闇に支配された谷底で、川の音を聞きながら入る露天風呂。そっと目を閉じれば、弥が上にも心が解きほぐされてゆきます。

不動湯温泉で金水晶純米酒ひやおろし生詰め原酒

部屋へと戻り、本とお酒と静寂を楽しむことに。今夜のお供に選んだのは、福島市唯一の酒造であるという、金水晶酒造店の純米酒ひやおろし生詰原酒。僕の好きな文字がぎっしり詰まったラベルに惹かれ、土湯温泉のお土産屋さんで購入。

角が取れてまろやかながらしっかり感じるお酒の個性。辛さの中にお米の旨さがしっかりと感じられ、僕好みのお酒。美味しかったので翌日お土産に買って帰りました。

在りし日の不動湯温泉木造旅館夜の味わい

本とお酒に飽きたら温泉へ。味のある木造建築は、夜になると一層表情を豊かにします。そんな館内を楽しみながらお風呂を目指します。

不動湯温泉夜の露天へと下りる木の階段

電気に照らされ鈍く光る木の階段。山肌を伝うように作られた階段は、踊り場を曲がるたびに違う表情を見せます。

不動湯温泉古きよき味のある温泉分析書

階段を下りきると、こんな味のある温泉分析表が。この長く急な階段も、この頃にはすっかり僕のお気に入り。この階段があるからこそ、お風呂へ向かうワクワク感が増し、この宿の味わいを更に深くしているのです。

不動湯温泉夜の羽衣の湯

3種の源泉があるなかで、まだ入浴していなかった羽衣の湯へ。檜作りの湯船は2つに分けられており、手前がぬるめ、奥は熱めとなっています。

無色透明の単純泉とはいいながら、ここが一番湯の花が多かったのではないでしょうか。黒い細かい湯の花が大量に漂っています。

不動湯温泉味わい深い夜の羽衣の湯

滔々と源泉が掛け流される湯船に身を沈め、大地の恵みを独り占め。浴感は優しく、体全体を包むような心地良さ。無数に漂う湯の花の動きを眺めつつ、のんびりと楽しむお湯と鄙びた浴場の雰囲気。3箇所あるお風呂の中で、僕の一番のお気に入りとなりました。

在りし日の不動湯温泉夜闇に包まれる一軒宿

部屋に戻り再びお酒と本を。窓の外は漆黒の闇に包まれ、周りに何も無い、本当の一軒宿であることを嫌というほど実感させてくれます。

こたつに入りながら楽しむ、何も無いという贅沢。今日一日の思い出がお酒と共に心に沁みてゆくのを感じつつ、福島の深い山に抱かれた秘湯での夜は更けてゆくのでした。

錦秋の岩代路~秋の福島ひとり歩き~
燃えるような紅葉に包まれた安達太良山
2011.10 福島
旅行記へ