僕の湯めぐり発祥の地ともいえる花巻。いで湯と昭和の味で今回も楽しませてくれたこの街ともお別れのとき。いつもの701系で、一路南を目指します。
当初は普通列車を乗り継いで次の目的地を目指す予定でしたが、マルカンビル大食堂に立ち寄る時間を捻出するため、途中新幹線でショートカット。一ノ関でやまびこ号に乗り換えます。
静かに一ノ関を発つ新幹線。E5系の滑らかな加速に、実りの色に彩られた岩手の田園が流れてゆきます。
古川で新幹線を下車し、陸羽東線に乗り換え。ちなみに北上ではなく一ノ関から新幹線に乗ったのは、特急料金がかなりお得になるから。近距離で自由席利用の場合は特定の料金が適用される区間があり、この区間の場合は980円でショートカットできてしまいます。
秋色に染まる田園のなか、唸りを上げつつのんびりと走るディーゼルカー。お気に入りのキハ110の大きな窓は山吹色と秋の空に染めあげられ、一幅の絵を眺めているかのよう。
エンジンの響きとゆったりとした揺れに身を任せつつ、秋色を眺めるひととき。車輪の音が一段と響いたと思えば、列車は江合川を渡る鉄橋へ。この景色が見えれば目的地はもうすぐそこ。3年前の夏の記憶が鮮やかに蘇ります。
古川からのんびり気動車に揺られること40分、鳴子御殿湯駅に到着。個性豊かな湯が揃う東鳴子温泉の玄関口です。
目指すは3年前に立ち寄り、その強い個性に魅せられたあの湯宿。濃い湯と濃い湯治場の雰囲気との再会を前に、弥が上にも胸が高鳴ります。
その道中、しなやかに首を垂れる稲穂の姿が。あの夏のときは力強い緑に覆われていた田んぼも、この季節は目を見張るほどの美しい山吹色に包まれます。
秋色に抱かれ歩く道。その先には渋い宿の姿が見え隠れ。これから始まる濃厚な湯遊びの予感に、足取りも自ずと速まるのでした。
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