短くも美味しい秋田滞在を終え、再び駅へと戻ります。夏空の下賑わう秋田駅。奇しくも今日は竿灯まつりの初日。やっぱりいつかは、生で見てみなければ。積年の宿題を片付けられる日が来ることを願いつつ、改札内へと入ります。
ここから乗車するのは、日本海側に沿って走る羽越本線。東北ではおなじみのいつもの701系に乗り込み、一路象潟駅を目指します。
秋田駅を出発してしばらくすると、車窓一面に広がる鮮やかな青さを湛える日本海。夏の晴天の美しさもさることながら、夕刻の鮮やかな茜色もきっと素晴らしいはず。いつかはその時間に乗ってみたいと、よからぬ妄想を繰り広げます。
秋田からローカル線にのんびり揺られること1時間10分、山形との県境に位置するにかほ市は象潟駅に到着。ここは通過したことはあっても、訪れるのは初めて。まだ見ぬ景色に思いを馳せ、夏空の下海の方へと歩き始めます。
これから向かうのは、道の駅であるねむの丘。駅前からバスも出ているのですが、のんびり歩いても30分かからないため景色を楽しみながら行くことに。観光客向けではないこんな渋い町の表情を見つけられるのも、歩いてこその醍醐味。
ふと横へと視線を移せば、すぐ近くに海を感じさせる漁村の風情。風に乗せて時折流れてくる潮の香りも、自分が今非日常にいるということを一層強めてくれるよう。
駅から海の気配に触れつつ歩くこと30分足らず、『道の駅象潟ねむの丘』に到着。出店やレストランには美味しそうな魚介がたくさん並び、時間さえ合えばここでお昼もいいかもしれません。
思い切り感じる海の存在感に誘われ、まずはその輝きを全身に浴びることに。夏の日本海は、どうしてこうも青いのだろう。太平洋の深い青さとはまた違う、鮮やかで爽快な青さ。勢いよく茂る芝生の緑が、その美しさを一層引き立てるよう風になびきます。
どこまでも広がる水平線。空と海、それぞれの持つ青さの違いを区切る緩やかな円弧を眺めれば、自分の中に積もった何かが抜けてゆくよう。それにしても、青い。胸のすくような夏を、目に肌に胸にと灼き付けます。
その深さにより、様々なグラデーションを魅せる海。どこまでも続く遠浅の海の先には、ゆっくりと回る巨大な風車。日本海と言えば鉛色のイメージが強かった僕ですが、初めてこの青さに触れた時の衝撃は忘れない。旅して自分の目で確かめてみるということの大切さを、改めて実感します。
全身に海風と夏の陽射しを吸収したところで、道の駅に設けられた展望塔へと上ることに。360°ガラス張りの室内からは、山海それぞれの美しさを一望のもとに。
僕が象潟を訪れた理由、それはこの九十九島を見てみたかったから。水田に浮かぶ小山が無数に並ぶ姿は、得も言われぬ不思議なもの。鳥海山の噴火によりできた、幾多もの小島。かつては海の中に浮いていましたが、江戸時代の大地震により隆起し陸地となったそう。
そんな大噴火を起こした鳥海山は、今日は裾野を見せるのみ。3か月前、洋上から眺めた優美な姿を昨日のことのように思い出してしまう。明日は姿を見せてくれるかな。そんな淡い期待を抱きつつ展望塔を後にします。
今夜の宿は、金浦温泉。噴火と地震という自然の偶然が造り上げた九十九島を巡りつつ、歩いて宿へと向かいます。
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