岩手公園で朝日と秋色に満たされ、再び盛岡の街をのんびりぷらぷら。それにしても今日は本当にいい天気。抜けるような秋晴れと岩手銀行赤レンガ館の色彩の対比に、見ているだけで吸い込まれそう。
通勤通学で賑わうバスセンター跡や夜の気配を残す八幡町の繁華街を抜け、盛岡八幡宮に到着。赤鳥居の間から覗く秋の気配に、去年の夏に訪れた時とはまた違った趣を味わえそう。
鳥居からまっすぐのびる参道を歩き、立派な狛犬にご挨拶を。太い四肢を持つたくましい体、それに対しクリっと大きいつぶらな瞳。パグ系の顔が多い狛犬ですが、こちらの狛犬は獅子感を強く感じます。
朝日を背負い、光り輝く立派な本殿。曲線美を描く大屋根と朱が荘厳さを漂わせるお社に、今回もこうして盛岡を訪れることのできたお礼を伝えます。
お参りを終え振り返れば、そこには魅惑の光景が。さすがは旨い酒に溢れる岩手県、こうして樽に書かれた銘柄を見るだけでもよだれが出てきてしまいそう。
本殿を後にしようと石段の上に立てば、2本の杉の巨木の間に顔を見せる岩手山。この山がきれいに見える場所を選んで、この神社が建てられたのだろうか。そう思えるほどに、しっくりとくる優美な姿。
大判焼に、スーパーボールすくい。まだ眠りについたままの屋台の傍で、彩を添える大きなもみじ。緑から茜色へ。そのグラデーションを体現する様は、色付き始めのこの時期ならではの美しさ。
立派な松に守られるようにして並ぶ、小さなお社。それぞれに十二支が祀られており、自分の干支のお社にお参りすると御利益があるのだそう。
盛岡八幡宮に別れを告げ、今まで歩いたことのない南方面へと進んでみることに。あてもなく、のんびり歩く朝の街。静かな住宅街の突き当りには、木の風合いが渋さを漂わせる火の見櫓。こんな小さな発見が、街の印象をより深くしてくれます。
火の見櫓を右に曲がれば、風情溢れる家並みが。この鉈屋町には明治に建てられた町屋が多く残されており、盛岡の古き良き生活を色濃く感じさせるよう。
人々の暮らしが薫る街並みの中、渋い佇まいの水場を発見。大慈清水というこの湧水は、今なお生活用水として地元の人々に利用されているそう。
一番上から、飲料水、米とぎ場、野菜食器洗い、洗濯すすぎと、4つの井戸が並ぶ水場。水を大切にするという古の人々の工夫が、今なお暮らしに根付いています。今回は清掃のため水が抜かれていましたが、きれいな清水で満たされる姿も見てみたいものです。
明治から残る町屋の余韻に浸りつつ歩いていると、今度は昭和モダンの建物を発見。古くから城下町として栄え、今なお県庁所在として岩手の中心であり続ける盛岡。この街には、様々な年代の味が詰まっています。
これまで知らなかった盛岡の新しい一面に触れ、より一層この街が好きになってしまう。観光地だけではない街の素顔を味わい、いつかは住んでみたいという思いは強まるばかり。
好きな街の新たな顔に触れ、心が満たされたところでお腹も満たすことに。麺の都、盛岡。来る度に何を食べようか嬉しい悩みに頭を抱えるのですが、今回は駅ビルのフェザン地下にある『小吃店』にお邪魔することに。
8年ぶり、二度目の訪問となるこのお店。この旅初のジョッキを傾けつつ待つことしばし、お待ちかねのじゃじゃ麺の出来上がり。ラー油とにんにくを好みの量加え、逸る気持ちを抑えつつよ~くよ~くかき混ぜます。
しっかりと全体に肉味噌がいきわたったところで、ずるっとひと口。あぁ、旨いよなぁ。細めのうどんはもちもち感と小麦の風味が心地よく、茹でたままのペトペト感が調味料を思い切り絡めてくれます。
肉味噌は濃すぎず薄すぎず、すっきりとしていながらコクのある味わい。全体的にはもったりとした食感の中に、いいアクセントを加えるきゅうりや長ねぎ。大盛を頼みましたが、気付けばあっという間に平らげてしまいました。
じゃじゃ麺って、本当に癖になる食べ物。初めて食べた時は印象が薄かったのですが、食べるごとにどんどんと好きになってしまう魅惑の麺。また次回までしばらくお預けかぁ。そんな余韻と満腹を抱え、西口駅前に建つマリオスへと向かいます。
こちらのビルの最上階には、無料で楽しめる展望台が。20階から俯瞰する、盛岡の街。眼下には開運橋を始め先ほどまで歩いていた場所が見て取れ、その奥には黒く横たわる北上山地。
北側へと移動すれば、雄大に裾野を広げる岩手山。先ほどまできれいに頭まで見せてくれていましたが、恥ずかしがり屋の南部片富士はすっかり顔を隠してしまいました。
そして見下ろす、盛岡駅。線路を剥がされた広い構内に、かつての賑わいを重ねてみる。
長きに渡り、東北新幹線の終着地であった盛岡駅。在来線に乗り換え北を目指す人々で、そしていくつも並んだホームに停まる列車でそれは賑やかだったことを思い出す。
僕の記憶に残る盛岡駅も、そんな賑やかなターミナルだった。東京からやまびこに揺られて3時間、そしてはつかりに乗り換え延々5時間。ようやく海を越えて北海道へと渡った思い出も、今はただただ懐かしい。
そのときは、こうしてこの街を何度も訪れるなんて、思ってもみなかった。僕にとってのかつての乗換駅は、今は大事な目的地。自分で旅先を選べることの悦び、そして好きな街に出会えることの幸せを噛みしめ、眼下に広がる盛岡をいつまでも眺めるのでした。
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