錦零れる秋いわて ~いで湯ともみじに染められて 5日目 ②~

秋の夏油温泉元湯夏油紅葉に染まる夏油川沿いの女(目)の湯

特にすることもなく、ただひたすらに部屋と湯屋を行き来する穏やかな午後。真湯へと向かうと、台風の影響により閉鎖となっていた対岸の女(目)の湯が復活。細い橋を渡り、小さな湯小屋へと向かいます。

夏油川の刻んだ頑強な岩肌の袂に位置する、小さな湯船。自然湧出のぬるめのお湯が満たされ、優しく肌に吸い付くような浴感が印象的。すだれ越しにはさらさらと流れる清流の気配を感じ、両岸を彩る紅葉が透ける姿もまた美しい。

秋の夏油温泉元湯夏油暗くなり始め風情を増す温泉街
愉しい時間とは、本当にあっという間に過ぎてしまうもの。幾度も湯浴みを楽しんでいるうちに、早くも山には暮れの気配。陽射しが弱まり色を鈍らせ始めた錦の木々と、渋みを増した旅籠の風情。秋という季節が胸に来るのは、美しさの中にも若干の感傷を秘めているからに違いない。

秋の夏油温泉元湯夏油暮れ始めの夏油川を染める紅葉と大湯
山懐に抱かれた秘湯の夕暮れは、下界よりも早く訪れる。夏油川の谷底にはすでにその気配が充満し始め、渋い湯小屋に灯る電球の存在感が際立つかのよう。もう間もなく失われる色彩。この日最後の錦秋を味わうべく、ぬるめの疝気の湯で静かな湯浴みを心ゆくまで愉しみます。

秋の夏油温泉元湯夏油夕暮れの薬師館に灯る白熱灯
あぁ、いいなぁ。心の底から素直にそう思える、豊かな時間。色彩を薄めゆく紅葉を愛でつつ侘びに酔いしれ、心身の底から温まったところで部屋へと戻ります。その道中、通る道すら味になってしまうのが夏油の良さ。小さな街を思わせる独特の世界感に、白熱灯が温もりを添えるよう。

秋の夏油温泉元湯夏油2泊目夕食
翳りゆく自室で静寂を噛みしめていると、気づけばあっという間に夕食の時間に。大広間へと向かうと、今夜も美味しそうな品々が並びます。

前菜や炒め煮に使われる山うどは風味良く、鱒はふっくら焼かれ滋味深い味わい。海老とともに添えられたかぼちゃはほっくり甘く、陶板焼きのお肉はしっかりとした白身に詰まる甘味と旨味が味わえます。

夏油温泉元湯夏油夜のお供にあさ開純米大吟醸
旨い地酒片手に手作りの美味しい料理を楽しみ、〆のご飯まで平らげ大満足。パンパンになったお腹を落ち着けたところで、岩手の地酒を開けることに。

まずはお気に入りの銘柄である盛岡はあさ開の純米大吟醸。オール岩手を謳う、米、水、人全てにおいて岩手産にこだわり造られた酒。香り、甘味、味わいがしっかりあるにもかかわらず、すっきりと飲めてしまいます。

夏油温泉元湯夏油夜のお供にいわて桜顔南部杜氏純米大吟醸
2本目は、これまた盛岡の桜顔南部杜氏純米大吟醸を。フルーティーさの中に日本酒らしい美味しさを感じ、飲み飽きしない優しい印象の旨い酒。

秋の夏油温泉元湯夏油今宵最後の露天風呂へ
滞在中、幾度も通ったこの道。輝く錦秋、夕暮れの感傷。そして夜の表情もまた味わい深い。漆黒の夜闇に照らされる湯治棟の風情に心酔しつつ、今宵最後の露天風呂へと向かいます。

秋の夏油温泉元湯夏油漆黒の闇に浮かぶ疝気の湯
谷底へと下りれば、あたりを包むのは川音と冷たい夜風、そしてひたすらの闇だけ。そこにぼんやりと浮かぶ湯小屋は、いで湯と対峙するためだけに存在する特別な場所。

源泉の真上に設けられた、素朴な湯壺。ぽこん、ぽこんと時折産まれるお湯を肌へと感じる、静かな時間。この瞬間が、永遠に続いてくれたなら。でもそれが叶わないからこそ、今をしみじみ愉しみたい。

夏油川の奏でる川音と、足を撫でるいで湯の感触。この夜には自分しかいないのではないか。そう思えるほどの深い闇と穏やかさに沈み込み、静かな夜はゆっくりと更けてゆくのでした。

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