地熱発電所からのんびり歩くこと約15分、本日のお宿『松楓荘』の入口に到着。路線バスの松楓荘前バス停は目の前にあるので、地熱発電所に立ち寄らない場合はそこで下車します。
看板の横から川へと下る未舗装の道をてくてく歩きます。途中には小さな池があり、ほとりには可憐な花を揺らす芝桜が。東北の遅い春を感じさせます。
小さい花と一面の新緑を愛でつつ歩けば、砂利道の先に小さいお宿が見えてきました。緑の谷底に佇む一軒の湯宿。そんな言い方がしっくり来るような、飾り気の無い渋い佇まいを見せる木造の宿。これこれ、こんな雰囲気の宿が好きなのです。
チェックイン開始より30分近く早く着いてしまったのですが、ありがたいことにすぐにお部屋へと案内してくれました。一人旅には丁度良い6畳の和室。味わいのある木の座卓が、山の宿の雰囲気をより一層醸し出します。
壁際にあるのは蒸気暖房。さすがは地熱発電ができるほどの土地、冬場はその蒸気を部屋に引き込み、かなり温かくなるようです。
窓から見えるは松川の流れと名物風呂へと繋がる吊り橋。若い新緑と深い緑を湛える松川の流れのコントラストが美しい、いつまで眺めても飽きること無い景色。この景色を自室の窓から独り占めできる、なんと贅沢なことでしょう。
早速浴衣に着替え、松楓荘の顔とも言えるあのお風呂へ。長い廊下を進み、まるで学校のような味を持つ、古きよき階段を下り外へと出ます。
部屋から見えるあの吊り橋をおっかなびっくり渡り対岸へ。こんなちょっとした冒険気分が、これから出会うあのお風呂への期待感を更に高めます。
ついに対面を果たした、松楓荘名物の洞窟風呂。半地下の洞窟に設えられた湯船はまるで地底湖のようであり、松川の青白く濁った湯がよりその印象を深いものとします。これこそ、写真で見て以来、僕を誘惑し続けた温泉。
逸る気持ちを抑え、静かにお湯に浸かります。見た目とは裏腹に、思ったよりもとても優しい浴感。phは5.0と酸性のようですが、酸性硫黄泉にありがちな肌を刺す感覚は全くと言って良いほどありません。
温度も適温で、ほんのり薄暗く丁度良い狭さのこの湯船に浸かれば、自ずと瞑想にふけること間違いなし。漂う硫黄の香に、身も心も松川色に染められます。
時刻はまだまだ15時台。窓枠に座り、ビール片手に秘湯の午後をのんびり過ごします。松楓荘の魅力を凝縮したかのような窓からの眺め。そんな眺めを独り占めしながら飲むキンキンに冷えたビールは、喉だけではなく心の渇きまで潤してくれます。ここへ来て良かった。極楽、ただその一言。
畳に寝転び火照った体をクールダウン。落ち着いたところで再び湯巡りへ。松楓荘には先程の洞窟風呂の他に露天と内湯が1つずつあり、それぞれ違った魅力のお風呂を楽しむことができます。
こちらは川沿いに位置する大きな混浴露天風呂。洞窟風呂よりも更に色の濃い、青白いお湯が溢れています。ただ、残念ながらこの日はかなり熱かったため、結局一度も入ることができませんでした。
でもそれもご愛嬌。源泉掛け流しは季節や天候によりその湯温も変動するので、それも含めての自然の恵みとして考えることにします。
露天風呂のすぐ向かいにある、男女別の内湯。これがまた雰囲気満点で、男女を仕切るのは巨大な岩石。それを囲むかのように木の壁が続き、程よい薄暗さも手伝いかなり落ち着ける雰囲気。
こちらも白濁したお湯が滔々と溢れ、その温度はまさに適温。静かな環境の湯屋と相まって、この上なくリラックスすることができます。
それにしても本当にここのお湯は肌への当たりが優しい。肌の強い方ではない僕でも、上がり湯をしなくても全く荒れることはありませんでした。
僕の期待に見事に叶えてくれた、松川の優しい濁り湯。これぞ東北の山の温泉!というお湯とロケーションに酔いしれ、時がたつのも忘れいつまでも湯浴みを楽しむのでした。
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るるぶ
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