昨晩は、本を片手に日本酒をじっくり時間をかけて愉しんだため、酔いも柔らかく気持ちの良い目覚め。朝早い7時台の新幹線に乗るため、6時過ぎには起床しました。まだ目覚める前の仙台駅には、気持ちの良い朝の空気が漂っています。
仙台駅からは、このおなじみの形の新幹線に乗車し、一路北上駅を目指します。本来なら在来線で行きたかったのですが、何せ向かうは秘湯。路線バスが朝と午後の2往復だけなので、それに間に合わせるため新幹線での移動となりました。
新幹線は静かに滑り出し、田んぼの中を進みます。車窓から眺める宮城の田園は、いつもの通りの穏やかさを見せています。
ただ、この広い田んぼの更に先は、今間違いなく大変なことになっている。そして、今乗っている新幹線も、これまで体験したこと無い遅さで慎重に走る。きっと今回の旅は、この時折襲ってくる胸苦しさと最後まで付き合っていかなければならないことでしょう。
それでも、折角の旅行なのだから、はしゃがないよう自重しつつも楽しまなければもったいない。ということで朝食にお楽しみの駅弁を広げます。
今回購入したのは、塩竈藻塩弁当。塩竈はその名の通り古来より製塩が盛んだったそうで、神社に伝わる藻塩焼神事という神事に倣って作られた藻塩がメインのお弁当。
蓋を開けると目に飛び込む小袋。これがそのこだわりの藻塩。ホンダワラという海藻を通した塩竈沖の海水を煮詰めて作った塩です。
弁当箱に詰まってるのは、すべて地元宮城、三陸にこだわったものばかり。そのいくつかに藻塩を付けながら頂くという楽しいスタイルです。
まずは野菜の素揚げに藻塩を付けてパクリ。この藻塩がとてもきめ細かく柔らか。海水塩というと粗塩をイメージしますが、パウダー状の塩はさらさらと丁度の量を付けることができます。
味もとてもまろやかで、全く塩っぽさが無くなんともマイルド。ミネラル含んだ粗塩という塩らしい塩も好きですが、この藻塩は自己主張が無く、素材や料理の味を最大限に引き立ててくれる、優しい味です。うん、シンプルだけどもとても美味しい。
真ん中にドンとあるのは、鮭の酒粕漬け焼き。粕漬けはそれほど好きになれない僕ですが、これは食べてビックリ。あの嫌な酒粕臭さが全く無いのに、日本酒のいい香りはしっかりと活きています。
酒粕によって旨味が凝縮された鮭は、ほろりと崩れる丁度良い食感と塩加減。この粕漬けには、塩竈の銘酒である浦霞の醸造元の酒粕を使用しているとのこと。浦霞、大好きなお酒です。美味しいお酒を生んだ酒粕って、やはり美味しいものなのですね。
ご飯は宮城県の有名なお米、ひとめぼれを使用した2種のおにぎり。炊き込みのほうはひじきご飯になっており、香ばしいひじきとしょう油の香りがたまりません。
そしてシンプルな白いおにぎりには藻塩を付けて頂きます。美味しいお米と塩で作る塩むすび。この上なくシンプルですが、日本人にとっては一種の究極の贅沢とも言えるのではないでしょうか。期待した通り、いやそれ以上の美味しさ。
最近の駅弁のご飯は、冷めても美味しいものが本当に多くなりました。おかずだけでなくお米も楽しめる。常温で食べる駅弁において、とても大切なことです。
そのほかにも仙台名物笹かまや不思議な食感の塩竈カステラ蒲鉾、三陸産昆布の佃煮など、宮城三陸の幸がそれぞれ光っています。そして、この駅弁オリジナルの志ほが満という藻塩入りのお菓子付き。本当にご当地へのこだわりがギュッと詰まった、そんなお弁当でした。
塩釜は丁度1年前に松島から船で渡り訪れた場所。その港も津波に襲われましたが、今ではお店もどんどん再開し始めているようで、復興へと向かっているようです。そんな塩釜で作られたお塩になんだか勇気付けられると共に、1日も早い復興を祈るのでした。
仙台から1時間と少し、岩手県は北上駅に到着。これから始まる秘湯尽くしの第一歩を踏み出す玄関口です。まだ時刻は8時過ぎ。こんな朝早くに見ず知らずの街に立っていることが、なんとなく不思議に思えます。
北上駅から『岩手県交通』のバスに揺られ、山の奥を目指します。向かうは夏油温泉。憧れの秘湯です。
通常お願いすれば午後に送迎していただけるのですが、お風呂の多さを考え、1泊だけでは満喫できないだろうとこの時間のバスに乗ることを決めました。片道1080円、車内でバスカードを買えば100円ほどお得になります。
ローカルな路線バスに揺られ、どんどん山奥へ進んで行きます。次第に道は細くなり、これから訪れる焦がれ続けた秘湯への想いがどんどん膨らむのでした。
コメント