紆余曲折あり、結局乗り込むことになってしまったスーパーはくと、京都行き。城崎のお宿にはお詫びの電話を入れ、車中で京都の宿を探すことにしました。
未だ納得のいかない気持ちで一杯なのですが、せっかくの旅行。JRのそれは別として、急な予定変更もチャンスと捉えて楽しむよう、腹をくくりました。
京都までは3時間ほどの道のり。混雑で座れないとまずいので、指定席を取りました。指定席車両は自由席と違い、数年前に全面リニューアルした模様。
仕切り扉は木目調や和紙の落ち着いたものに、座席は木のパネルを用いた座り心地の良いものに変更。全体的に自由席車両よりも落ち着いた空間に仕立てられています。
洗面所は着物の生地を思わせるカーテンや、趣のある陶器が使用され、こちらも和の雰囲気満載。
このスーパーはくとの車内には、鳥取の自然や観光名所、名産工芸品などのモチーフが随所に散りばめられており、かなり良い雰囲気。一発で気に入ってしまいました。
鳥取色に彩られた車内で楽しむ、最後の山陰グルメ。この旅で何度「あご」を楽しんだことでしょうか。そのあごともお別れ。ということで、僕の好きな押し寿司系弁当であるあご寿司を購入。
蓋を開ければ、見るからに美味しそうなあごの押し寿司が。しょう油をたらりと落とし、一口パクッと。〆加減が丁度良い塩梅の身からは、クセの無い旨味がじんわりと染み出てきます。押し寿司ならではの、寿司飯との一体感もバッチリ。
あまり飛魚を食べることの無かった僕は、青魚=青臭いというイメージを勝手に持っていましたが、今回の旅行で見事に覆りました。あご野焼きにしても、このあご寿司にしても、なんて臭みの無い美味しい魚なんでしょう。
そんなしみじみとした旨さの山陰グルメに合わせるのは、やっぱり山陰鳥取の地酒。山根酒造場の純米酒日置桜ワンカップを購入。お米のふくよかな旨味や甘味を感じさせ、酸味もほど良く感じる美味しいお酒。あご寿司との相性もピッタリです。
車窓はどんどんと長閑さを増し、雪深さも増してゆきます。最後まで結局上手く表現することができませんでしたが、この山陰の家並みともまもなくお別れ。
真っ青な空に映える、雪化粧の山並み。今まで訪れた所とはまた違った山容を持つ山陰の山並みとももうすぐお別れ。
列車はディーゼルの唸りを上げ、進路をどんどん山のほうへと取っていきます。さすがは陰陽連絡をスムーズにと造られた智頭急行線。振子の性能を活かし、雪原を高速でダイナミックに疾走します。
この智頭急行、日本の3セク鉄道では2番目の黒字ということで、かなりの優良児。実際このスーパーはくとにもたくさんの乗客があり、陰陽間の人の移動の多さを感じさせます。
京都までは長い道のり。まだまだ時間は掛かるので、最後の山陰地酒を。この智頭急行が始まる智頭町にある諏訪酒造の諏訪泉特別純米。クセの無い穏やかな飲み口で、バランスの良いスッと入っていくようなお酒。
山陰のお酒は最後の最後まで外れが無かった。山陰、僕の好きな酒どころがまたひとつ、増えてしまいました。
車窓に迫る山々の距離もグッと縮まり、まもなく陰陽を隔てる山へと突入。
僕にとっての初の山陰地方。正直、鳥取島根は一生のうちに行くことがあるのだろうか。そうとまで思っていました。
ところが訪れてみてびっくり。山陰独特の景色や雰囲気、美味しい海の幸に、美味しいお酒。遠いのでなかなか訪れることはできませんが、また来たい!!と本当に思わせてくれました。山陰、ありがとう。すっかり好きになりました。
トンネルで県境を越えれば、もうそこは山陽地方。川の流れる方向も反対になります。
山陽へ抜けると雪もどんどん少なくなり、陽射しも柔らかいものに変化。ほんの少し前までどっぷり山陰にいたはずなのに。そんな寂しさを感じつつ、振子の揺れに身を任せ車窓を眺めるのでした。
ついに視界から雪が消えてしまいました。替わりに暖かそうな青空が車窓を占領します。やっぱり山陽地方は温暖なのでしょうか。見た目からして東京の寒々しい冬の景色とは違います。
列車はついにローカル線を離れ、山陽本線へと突入。遠くには煌めく瀬戸内海に浮かぶ淡路島。大きな明石海峡大橋を眺め、春のあの島での思い出を浮かべるのでした。
この後列車は三宮、大阪と阪神の都市を過ぎ、まもなく京都へ。本当は泊まるはずではなかった京都での美酒美食を期待し、ディーゼルの唸りを名残惜しく愉しむのでした。
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