足湯や散歩でのんびり嶽温泉の雰囲気を楽しみ、チェックインの時間に。今夜の宿は、バス停の裏手、高台に建つ『小島旅館』。
立ち寄り湯として地元の方に人気らしく、たくさんの車が停まっています。これは期待できそう。きっといいお湯が待っていることでしょう。
通されたお部屋は、嶽の街を見下ろす眺めのいい明るい部屋。早速重い荷物を下ろして浴衣に着替え、温泉へと向かいます。
やはり地元の方に人気のようで、先客がいらっしゃったため、お風呂の写真は後ほどご紹介したいと思います。
こちらのお風呂は内湯のみですが、木造りの湯治場風情を感じさせる落ち着いた空間。2つの浴槽には、美しく白く濁る嶽の湯が滔々と掛け流されています。
お湯を吐き出す樋には分厚く積もった湯の花が。これこれ、やっぱり湯の花たっぷりのにごり湯はテンションが上がります。これぞ温泉!という香りもまた気分を盛り上げてくれます。
酸性硫黄泉ですが、肌にピリピリくる感覚は全く無く、とても馴染みの良い優しい浴感。非常に細かい湯の花が含まれるお湯に、体全体が包まれるかのような心地良さ。
目を瞑ってお湯の感触と硫黄の香りを味わう。この瞬間が堪らなく贅沢で、堪らなく愛おしい。五感を使って心身共に嶽の湯を味わいます。
ここのお湯は非常に温まりやすく、気をつけないと逆上せてしまいそう。湯上り後もしばらくは汗が止まらないほど。そんな火照った体に嬉しい、きりっと辛口の冷たいビール。これがあるから温泉旅は止められない。
ビール片手に窓辺に立てば、小さな嶽の温泉街越しに見える遠くの山々。ここの標高が高いので、遠くの山はこちらよりも低く見えます。
冷たいビールをグイッと飲み、胸いっぱいに空気を吸い込む。この爽やかさは、まさに高原の温泉宿ならでは。本当に気持ちの良い眺めです。
温泉に入り、本を読み、景色を眺める。そんなことを繰り返していると、待ちに待った夕食の時間に。別の部屋に通されると、数々の料理が出迎えてくれました。
わらびのお浸しは、シャキッとした歯ざわりとちょっとしたぬるつきが美味。からしが添えられていたのは初めて見ましたが、付けて食べるとこれまた初めての美味しさ。こういう食べ方もあるのですね。
鮭の切り込みと根曲がり竹はしみじみした旨さで酒が進む一品。こういうじんわりした美味しさが、のんべぇには堪らないものです。
その他にも舞茸の土瓶蒸し、サクッと揚げられた天ぷら、海老やもずく酢、南蛮漬け、帆立と赤魚のお鍋など盛りだくさん。
ひとつのお膳には載りきらず、横にお刺身が控えています。青森らしく帆立は歯ごたえを感じられる新鮮さ。平目や海老、まぐろもそれぞれ美味しく、山の宿でこんなお刺身が出てくることを期待していなかっただけに嬉しい驚き。
これだけの美味しい品々が並べば、当然進んでしまう日本酒。青森の銘酒じょっぱり片手に、のんびり料理を愉しみます。
部屋食ではありませんが、グループごとに食事会場を用意してくれるらしく、僕一人の空間で誰にも邪魔されずのんびり食事を楽しめる。こんな心配りも嬉しいところ。
あれだけの品が並んでいたので、もうお腹は一杯。ご飯はお漬物でちょっとだけでいいかな、と蓋を取ってみると、具だくさんのマタギ飯がどん!と出現。
ありゃりゃ、こりゃ大満腹確定だわ。と思いつつも一口頬張ると広がる美味しさ。舞茸のだしがしっかりとご飯に移り、味付けも丁度良い濃さ。
すでに満腹であったにもかかわらず、どんどん食べ進んでしまいます。結局全部平らげてしまいました。あぁ苦しい・・・。お腹が嬉しい悲鳴を上げています。
布団に寝転びはち切れんばかりのお腹をやっと落ち着け、再びお風呂へ。夜の浴場はより一層風情が増します。
誰もいない、自分の為だけに掛け流される温泉。浴槽へ足を入れると、積もっていた細かい湯の花がふわっと舞い上がる。その白さがあっという間に湯船全体に広がり、体を包んでくれる。
目を閉じれば、聞こえるのはお湯の流れる音だけ。思考は止まり、無の状態で味わう嶽の湯は、心の芯まで温めてくれます。
きめ細かい湯の花が舞う、極上とでも言いたくなるような嶽の湯。心ゆくまでその感触を味わい、部屋へと戻ります。
お湯と本と共に、山の温泉での夜を彩る青森の地酒。今夜のお供は、ねぷた村のお土産屋さんで仕入れた、弘前は丸竹酒造の「大輪菊盛 凧絵」。勇壮な津軽凧のラベルに負けず、辛口で力強いお酒。
きりりとしたお酒を含み、本に目を落とす。顔を上げれば勇ましい凧絵が目に入り、昼間見たねぷたや三味線の音が甦る。そしてまたひと口。
岩木山に抱かれた高原での夜。津軽の魅力に溢れた時間は、静かに、ゆっくり流れてゆくのでした。
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