昨晩の飲んだくれはどこへやら、晴れ渡る冬空のようなすっきりとした目覚め。2人して思ったよりも早く起きることができたので、急遽予定変更、あの場所へと行ってみることに。
もともとの予定では、近鉄の通勤電車に乗って伊勢市を目指すことになっていましたが、思いがけずにJRの気動車に乗車できることに。久々のディーゼルカーを心待ちにしていると、何とも嬉しいキハ48が登場。この系列の古い気動車、本当に大好き。
片開きのドアから中へと入ると、そこはまた国鉄時代の雰囲気を色濃く残す車内。子供の頃から「普通列車」の座席と言えばこのブルー。そして、いい意味で田舎臭さを感じさせる、白い枕カバー。
以前は東京にもJR東海の東海道線の車両が乗り入れてきました。JR東日本の車との違いはやはりこの枕カバー。同じ無骨で古い国鉄形でも、このカバーひとつで受ける印象が違ったのをついこの前のように思い出します。如何にも列車、そんな雰囲気を醸し出す重要なポイントです。
非冷房であったころを思わせるすっきりとした天井に、後付けされた冷房ユニット。そして国鉄と言えば、の扇風機。ふと窓枠へと向ければ、昔懐かしい扇風機のスイッチが。
僕の子供の頃はまだまだ扇風機全盛期時代でしたが、それでも三鷹近辺を走っている国鉄形にはこのスイッチは付いていませんでした。普段列車旅をしなかったので、初めてローカル線でこのスイッチを見た時は、嬉しくて嬉しくて押してみたものです。
列車は、松阪駅を出発し、紀勢線を経て参宮線へ。ディーゼルエンジンの心地よい唸りを体に感じ、のんびり進む冬晴れの伊勢路。車窓にはそのほのかに温かさを感じさせるような空の色が溢れています。汽車旅という言葉を体現したかのような、午前の長閑な雰囲気に包まれます。
松阪から伊勢市まで、あっという間ののんびりとした汽車旅。近鉄と同じところを結んでいるとは思えないほどののんびりとした空気感に、もうすっかりご満悦。早起きは三文の徳、です。
伊勢神宮外宮の最寄である、ここ伊勢市駅。今日はここで降りずにさらに先を目指して乗り換えます。
松阪からローカル線を乗り継ぎ、到着したのは二見浦駅。伊勢志摩といえば必ず出てくるあの景色。思いがけない予定変更でここへ来ることができ、嬉しさもひとしお。
駅前の大きな通りを渡れば、神社まで夫婦岩表参道が続いています。お菓子屋さんや薬屋さんなどの立派な建物を眺めつつ、冬の冷たい海風に吹かれながら歩きます。
この通りは昔から旅館街であったようで、古き良き木造建築が延々と続きます。現役旅館も、旧館をしっかりと残しつつ寄り添うように増築している姿に、古いものを大切にしてきた歴史を感じます。
参道を進むと、ついに潮騒を間近に感じる距離に。松の並木越しに感じる海の気配に堪えきれず、寒さも忘れて海沿いへと駆け出します。
眼前に広がる、この眺め。何と表現して良いのか判らないほどの、青のバリエーション。海と空がそれぞれグラデーションを描き、ひとつとして同じ色が無いと感じさせる、自然のままの色彩の洪水。
爽快感に包まれつつ海沿いを歩き、程なくして二見興玉神社に到着。汚れの無い冬晴れの空と海に映える、白い鳥居。その姿に自然と背筋が伸びます。
文字通り海沿いの参道を進み、本殿でお参りを。ここ二見浦は、古くから伊勢神宮へお参りする人々が禊をしたという海。これからお伊勢さんへと向かう僕たちも、冷たい冬の海風に、身も心も洗われます。
お参りをして更に先へと進むと、二見浦のシンボルとも言える夫婦岩が視界に飛び込んできます。伊勢志摩と言えば、の夫婦岩。写真や映像で幾度となく刷り込まれたこの光景ですが、僕は今回が初めて。
もっと遠くの沖合にあるのかと思いきや、手の届きそうなほど近くにあります。大小の岩が仲良く寄り添う姿は、まさに夫婦。冬の海でも、ここには温かい雰囲気が漂います。
小さい頃からイメージの世界でしかなかった夫婦岩との対面に大感激。早起きは三文の徳、なのです!来ることができて本当に良かった。そんな満足感に包まれながら、夫婦岩を後にします。
そして目の前に広がる、輝く海。穏やかな波は午前の太陽を全身で受け止め、光の帯となり砂浜にきらめきを散りばめます。
白砂青松、ここ二見浦はまさにそれ。伊勢へと来るのは今回が2回目。前回は伊勢神宮へお参りしただけなので、この地で海を見るのは初めて。
白い貝殻と砂の先にどこまでも広がる、青い海。真冬で風は冷たいというのに、温かさを感じさせる、優しい青。きっと昔の日本人は、山に、海に、自然そのものに、神々を見ていたのでしょう。
初めての伊勢の海は、心にほんのりとした温かさを与えてくれる、穏やかさと優しさをもって僕を迎えてくれました。
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