冬の近畿 食い倒れ旅 ~1日目 ②~ | 旅は未知連れ酔わな酒

冬の近畿 食い倒れ旅 ~1日目 ②~

近鉄特急22000系Ace 旅グルメ

僕たちを名古屋で強制的に途中下車させるほどの旨さであるひつまぶしを堪能し、いよいよ松阪を目指します。

名古屋駅から松阪駅までのルートはJRと近鉄の2通り。ですが、やはりそこは近鉄でしょう!!数年ぶりの近鉄との再会に、もうテンションは上がりっぱなし。近鉄特急、近鉄特急、近鉄特急♪

近鉄特急22000系Ace車内

前回は、小さい頃から本で慣れ親しんだこれぞ近鉄!というスタイルのスナックカーと、僕が中学生の時に鮮烈なイメージを伴いデビューした伊勢志摩ライナーに乗車。

今回は本当ならばしまかぜに乗りたいところでしたが、どうしても曜日が合わずに諦めることに。それならばと、子供の頃からの憧れであったビスタカーに乗りたい!と考えましたが、それも時間が許さず。アーバンライナーもまた然り。

結局どの車両が来るかは分からない一般型特急の便を予約し、何が来るかと期待しながらホームへ。そこへ滑り込んできたのは、なんと初代ACE!

近鉄特急は華がある車両が多く、伝統の2階建て構造を持つビスタカーや、これまでの近鉄特急のイメージを斬新さで塗り替えたアーバンライナーや伊勢志摩ライナーなど、個性的な車両が咲き乱れる路線。

その中でこの初代ACEは、スナックカーやサニーカーを置き換えて一般型特急のサービス底上げを図るべく造られた、言わば縁の下の力持ち。古き良き近鉄特急の重厚さを残しつつ、イメージを壊すことなく平成の世に合うよう進化した車両。

僕が中学生の時に、次世代の近鉄特急のスタンダードとしてデビューしたこの車両。今回ついに乗る機会に恵まれました。インテリアは当時流行ったグレーベースの落ち着いたもの。印象としては、関東を走る小田急のEXEと同じような雰囲気で、登場年代を考えても頷けます。

やっぱり近鉄特急はいい。近鉄特急という四字熟語を連呼したくなるほどの歴史と品を感じさせる。久々の近鉄特急との再会に、心の底まで夕日に照らされるかのような熱さを感じるのでした。

松阪駅

子供の頃から私鉄特急が好きだった僕。特に小田急ロマンスカーと近鉄特急は格別の憧れを抱いていました。ロマンスカーは満足するまで乗ることができたのに対し、近鉄は近畿まで来なければ乗ることができないため、大人になるまでずっと憧れるだけの存在でした。

そんな近鉄特急に乗車し、大人気も無くウキウキして堪らない道のりを経て松阪へ到着。やっぱり鉄道はこのワクワク感がなければ。乗ることの楽しさを今一度、近鉄特急に教えてもらいました。

松阪肉元祖和田金

早速ホテルにチェックインし、興奮さめやらぬ中夕食へ。松阪と言えばやはりこれ、松阪牛を食べないわけにはいきません。

今回お邪魔したのは、すき焼きをはじめとする松阪牛料理の『松阪肉元祖 和田金』。僕は知らなかったのですが、関西出身の相方さんいわく、かなりの有名店だそう。

松阪肉元祖和田金テーブルにくべられる炭火

高級旅館のような雰囲気に早くも圧倒されつつ、お部屋へと通されます。部屋には美しい光沢を放つ塗りの座卓が置かれ、中央には炭のコンロが切られています。仲居さんにビールを頼み、炭がくべられほんのりと燃える様を眺めながら、始まりの時を待ちます。

松阪肉元祖和田金しょう油と砂糖で作るすき焼き

そしてついに松阪牛とのご対面。一切れの大きさは想像していましたが、驚くはその厚さ。自社牧場で牛を育てているため、冷凍しない生の肉を使うのでこの厚さになるのだそう。

炭の柔らかい火に掛けられた鍋は、熱せられたというよりも温められたという言葉の方がしっくりくるような肉の焼け方。厚めの肉に優しく火が通る様が手に取るように分かります。

仲居さんが焼け具合の好みを聞いてくれ、取り分けてくれます。僕はミディアムレアで。さっそくひと口噛めば、厚みから来る適度な食感と、思った以上の肉の旨味。

これまで、東京で何度か松阪牛を食べましたが、どれも霜降りを前面に押し出すかのような味わいで、純粋に美味しいと思えたことはありませんでした。が、このお肉は違う。しっかりと赤身の旨味があり、肉としてのバランスが良い。

味付けも肉の甘味と旨味を邪魔しない丁度良さ。しょう油の色からは想像できませんが、伊勢うどんもそうなので、もしかしたら伊勢のしょう油は色は濃いけれどしょっぱくないのかもしれません。

お肉を1枚食べ、玉ねぎや青ねぎ、しいたけなどの野菜を一通り。そしてまたお肉が焼かれて野菜へ。肉の旨味と香りを纏った野菜がまた美味しく、最後のご飯まで一気に平らげてしまいました。

今回、寿き焼の松を頼むか梅を頼むか、最後まで相方さんと悩んでいました。結局頼んだのは、敢えての梅。せっかくここまで来たのなら、やはり一番高いのを食べてみたいとも思いましたが、結果的には梅で正解だったかもしれません。

出てきたお肉は思っていた以上にボリュームがあり、野菜や〆のご飯まで食べると結構満腹。これでお肉が思いっきりの霜降りだと、きっとまた松阪牛=脂という印象になっていたかもしれません。

とにかく、産地の名店へ初めて来て、現地で松阪牛を食べた感想は、美味しいお肉であるということ。脂もいやらしさが無く、牛特有の乳臭さも無い。そして何より、これまで松阪牛では感じたことの無い肉の旨味がしっかりと感じられる。

一口に松阪牛といっても、肥育する農家や個体によって千差万別である。そんな当たり前なことを今更ながら思い知るのでした。

松阪大衆酒場福助

初めて松阪牛の美味しさを体験し、当初の予定よりも結構な満腹状態に。それでもせっかく松阪まで来たのだから、牛だけではもったいないと、雰囲気の良さそうな居酒屋さんに入ってみることに。『福助』で地酒を味わうこととします。

お酒メインで楽しみたかったため、おつまみはちょっとだけ。まずは石鯛のお刺身を注文。見るからに新鮮そうな美しい身をした石鯛は、これまで味わったことの無い歯ごたえ。こりっ、コリッと噛めば、白身のじんわりとした旨味が広がり、お酒がすぐに欲しくなります。

そこで注文したのが、早川酒造の造る早春というお酒。三重の地酒のイメージが全くないため、どんなお酒なのかとワクワクしながらひと口含むと、まさにドンピシャ、好みの味わいにびっくり。

甘味、酸味、香りのどれもがふくよかで、それでいてすっきりとした後味。これ、放っておいたら幾らでも飲んでしまいそう。美味しいお酒は、危険なのです。

ちょっとしたつまみで美味しい早春をたっぷりと愉しみ、程よく酔っぱらったところで追加注文。この時期で伊勢志摩と言えば、やはり外せないのが牡蠣ですよ、かき。メニューにあった的矢の酢がきの文字にもう我慢の限界。

運ばれてきた途端、鼻をくすぐる海の香り。それは決して生臭さいのでも、磯臭いのでもなく、まさに海の香り。小ぶりながら身の詰まったかきをひとつ頬張れば、これでもかというほど海のミネラルが溢れ出てきます。

僕は小さい頃から生がき食い。本当に好きで好きで、これまで国内産のかきをそれなりに食べてきました。そんな少ない経験ながらも、僕の食べた中ではダントツの「海」感。なんだろう、本当に海が詰まっていると表現したくなる味わい。

そのあまりの香りに、隣にいるかきのダメな相方さんがうわっ!と言うほど。しつこいようですが、決して臭い訳ではないのです。でも、きっと本当にかき好きの人でないと、この力強さは受け止められないのでは。

これまでに味わったことの無い旨さ溢れる、的矢湾のかき。三陸、広島、能登、兵庫と、かきの美味しい産地はたくさんあり、それぞれ味わいが違います。これだから日本の旅はやめられない。同じ食品でもこうも違う。いやぁ、旨い。参ったの一言。

ほろ酔いで眺める夜の松阪駅

松阪牛だけでも十分満足だったのに、更に旨い酒と旨い海の幸を味わわせてくれた松阪の街。今度は海の幸を目的に伊勢志摩に来てみたい。そう思いつつ、ほろ酔い気分で夜の松阪を歩きます。

松阪の夜のお供に義左衛門ワンカップ

三重での夜は今晩限り。明日は大阪へと向かうので、もう一杯だけ、三重の酒を楽しむこととします。

ホテルでのお供にと選んだのは、若戎酒造の純米吟醸義左衛門。このお酒も僕好み、すっきりと飲みやすく、体にじんわり馴染む味わい。三重も美味しいお酒があるんですね。最近美味しい酒どころにどんどん遭遇してしまい、呑兵衛街道まっしぐら。困りものです。

昼前に東京を発ってから半日。その間に鰻あり、牛あり、伊勢志摩の海の幸あり。こんな贅沢ってあるのでしょうか。

そう、これが今回の旅のテーマそのもの。最高の旅の出だしに、そして、これから出会うであろう美味なるものたちへの期待を胸に、幸せ気分で酒を飲むのでした。

冬の近畿 食い倒れ旅

太鼓橋から眺める夜の城崎温泉街
2014.2 愛知/三重/大阪/兵庫/京都

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●1日目(東京⇒名古屋⇒松阪)
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●2日目(松阪⇒伊勢⇒大阪)
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●3日目(大阪⇒城崎温泉)
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●4日目(城崎温泉⇒京都)
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●5日目(京都⇒東京)
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