今回の旅は、今なお北への玄関口としてのイメージの残る上野駅から出発。
かつて東北や上越方面への長距離列車がひっきりなしに発着していたこの駅。この銅像は、どれほどの数の旅人を見つめてきたことでしょう。
今日は僕も、そんな旅人のひとりとなります。今回僕が利用したのは、JR東日本の秋田・大館フリーきっぷ。(廃止)
駅ナカと言われる、駅構内の飲食店や物販店が充実してゆく今日この頃。上野駅も例外ではなく、様々なお店が構内に点在しています。
そんな中目を付けたのがこのお店。ワインや外国ビールの専門店で、その品揃えは駅ナカとは思えないほど。
値段もピンからキリまで幅広く、フルボトル中心のラインナップから見ると、列車へ持ち込むより、自宅や手土産用に買って帰る人が多いのかもしれません。
ちょっと前までは、キヨスクや弁当屋に売っているのはビールやワンカップ、チューハイといった、所謂おっさん臭いものしかなかったので、構内でこんなおしゃれな物が手に入るのは嬉しいもの。今夜の車窓の友はワインと決め、ミニボトルとチーズを買い込みました。
夜行列車が発着する13番線のすぐ近くに、立派なおそば屋さんが建っています。ここはおそばだけでなく、地酒やおつまみ類も結構充実しているので、中はサラリーマンで一杯。
特に地酒は東日本エリアのものを選りすぐり置いてあるので、JRのこだわりを感じてしまいました。ここまできたか、駅ナカ。思わず感心してしまいます。
あけぼの号入線までまだ2時間以上。ここで焼き味噌やわさび菜のお浸しなどをつまみに、地酒を2杯ほどちびりちびりとやりました。最後はかけで〆て、20時過ぎにお店を出ました。
ここでちょっと買いたい物があり、3階のコンコースへ行ってみると、たくさんあったはずのお店が改装のため全て閉まっていました。
必要なものだったのでこれは困った、ということで、ダメ元で駅員さんに聞いてみると、駅の外へ出て良いとのこと。本来は途中下車不可なので、駅員さんのご厚意に感謝。
駅前で無事に買い物を済ませ、再び駅へ。ひょんなことから夜の上野駅を見ることができました。こうやって見ると、かつての東京の玄関口、夜行列車のターミナルとしての威厳がより一層強まります。
お店ができ、ペンキが塗られてきれいになったとはいえ、昔からの雰囲気を色濃く残すコンコース。これからブルートレインに乗ろうとしている今、ここをこうやって歩くと、否が応にも気分が高まります。
それは旅立ちへの期待感だけでなく、若干の感傷も含んだもの。上京して来た人、帰郷する人、様々な思いを、このコンコースは受け止めてきたことでしょう。
改札には、すでにあけぼのの表示が。ほんの十数年前までは、はくつるやゆうづるといった青森行きの列車がたくさん並んでいたはず。それが今となっては、近郊の行先に混じって遠慮がちにちょこんと出ているだけ。
まだ若い(つもり?)の僕でさえこの変化に戸惑うのですから、大昔を知っている方が見ると、きっと寂しいものがあるのではないでしょうか。
あけぼの号入線まであと少し。13番線へと向かいます。あけぼの○号、となっていないのが、更に寂しさを誘います。
かつて臨時を含め、どれほどの列車が青森へ向けて出発していたことでしょう。それが今ではたったの1往復。それだけ新幹線が便利になり、夜行列車はもう時代に必要とされていない証なのでしょうか。
それでもこうやって生き残った寝台列車で旅立てる僕は幸せ者。いずれこの経験すら、できなくなる時代がくることでしょう。
数々の人生模様を受け止めてきたホーム。僕は今でも、小さい頃のニュースで見た帰省ラッシュ時のここの映像を思い出します。
新聞を敷いて宴会をしながらの順番待ち。小さい頃はじいちゃんばあちゃんも近所で田舎と呼べるようなものは無く、北海道のひいばあちゃん家まで行くにも飛行機だった僕にとっては、その光景は強烈でした。
そう言えば、母が北海道への帰省は酔っ払いが多くて怖かった、と言っていた気がします。今となっては、その面影すらありません。現在は北斗星やカシオペアが札幌へ向けて出発する場所。憂いを含まない、楽しい旅の出発点となっています。
ここで一組の御夫婦とお近付きに。どうやらフルムーンパスで色々と回っているとのこと。この日もあけぼのの時間に合わせて大阪から戻ってきたようで、羨ましい限り。
偶然にもこの御夫婦と途中まで行程が一緒なのが分かり、約半日の間、色々な場面でお話させていただきました。
コメント